August 13, 2020

移動

 階層研究では親子の地位の関連を社会移動と定義して社会が開放的かを分析する。その際には絶対移動と相対移動を区別する、前者は何%の人が親よりも上昇移動したかをみるが、この方法だと移動しやすい出身の人が増減する影響を純粋なチャンスと区別できないので、オッズ比ベースの相対移動が使われる。

相対移動による分析結果によると、日本を含め多くの高所得国では、親子の地位の関連は明確なトレンドを示さず、大まかに見れば安定的。と考えると、最近の格差の固定化と言った論調は、階層論の人から見ると直感に反する(少なくとも世代間の移動に関して)。相対移動による分析結果によると、日本を含め多くの高所得国では、親子の地位の関連は明確なトレンドを示さず、大まかに見れば安定的。と考えると、最近の格差の固定化と言った論調は、階層論の人から見ると直感に反する(少なくとも世代間の移動に関して)。

移動のパターンは安定的なのに出身階層で人生が決まってしまうと考える人が増えているとすれば、それはなぜか。一つはメディアなどで格差社会論が実態と乖離して報じられている可能性。もう一つの可能性は、人々は相対移動よりも、絶対移動の方に敏感なのではないかという説。

という意味では、確かに日本では下降移動(親の地位よりも自分の職業的地位が低い)は増えている。これは主として、上昇移動をする傾向にある農業層が昔は多かったけど、近年はそうした出身の人は減ってるから。昔に比べると親よりも自分の地位が低い(と考える)人は相対的に増えているということ。

社会科学者であれば出身で人生の全てが決まるという考えには首肯しないと思うけど、世代間移動は安定的という知見から不平等が増しているという考えに反論する人はそれなりにいるはず。階層論の人が使う指標と世間の人が依拠する何かには違いがあるのかなと思う。

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