August 31, 2018

8月31日

午前9時半からアドバイザーの先生とミーティング。彼は現在学部長(chair)をしているので、午前中はchairのオフィスに、午後は自分のオフィスに戻っているが、連日多くのミーティングをこなしている印象で、時間を取ってもらうのはありがたい。1時間と短かったが、彼との共同研究3つと、現在考えている助成への推薦状サインをもらえたのでだいぶ生産的だった。10時半からSSCCのオリエンテーション参加し、そのあと郵便を作って外に出る。ついでにinternational fairが開かれていたのでタダ飯を食い、郵便を出す。

来週から授業が始まるのでスケジュールを確認していたら、いくつか文献を書い忘れていたことに気づき、注文。こちらの方でも意外と出費はある感じ。そのあと、採択された論文の修正をした。

オリエンテーション、研究、論文採択

〜オリエンテーション〜

今週から大学はwelcome weekに入っています。月曜日は学部の、火曜日はTAの、水曜日は大学全体の留学生と大学院生向けのオリエンテーションがありました。木曜日になって、ようやくこうした行事から解放されます。

学部、正確には社会学PhDプログラムのオリエンテーションには、学部長(chair)の先生(=私のアドバイザー)、大学院ディレクター(director of graduate studies, DGS)、および学部や関連施設のスタッフの方から話がありました。DGSは大学院プログラムの管理をするポストで、director of undergraduate studiesと合わせて、日本の学部には見られない役職かもしれません。DGSの先生はPhD1年目の学生が必ずとるプロセミナーの講師でもあります。

翌日のTAオリエンテーションは、今年TAになる予定のない学生でも、PhD1年目の人は参加必須でした。この日もGDSの先生が参加し、加えて副学部長(associate chair)の先生とTA経験が豊富な先輩たちも参加して、TAになる際に気を付けた方が良いことや自身の経験をシェアしてくれました。

これらのオリエンテーションで印象的だったのは、非教員スタッフの役割の大きさです。まず、オリエンテーションはGraduate Advisorのスタッフが全てオーガナイズしています。さらに、TAオリエンテーションの際に学部生が授業に連続して参加してこなかった場合に、TAはどのような対応をするべきかという場面で、Underaduate Advisorのスタッフが自身の考えを伝えてくれました。これ以外にも、UW-Madisonで院生をしていた経歴を持つスタッフが、自身の経験を踏まえ、こういう場合にはこうした方がいいと思うと、積極的に発言する場面が目立ちました。

日本だと、教員ではない事務系スタッフは、どちらかというと教員の仕事の補佐をしている秘書的な役割が強く、もちろん担当している仕事はあるのですが、仕事に対する裁量権はそこまで大きくないように思えます。しかし、少なくともうちの学部では、事務スタッフも専門的なスキルがある人とみなされている傾向が強いように見受けられました。教員たちも、スタッフたちの経験を真剣に聞いていて、お互いが相手の地位を尊重し合っていると感じることができました。

私の所属するPhDプログラムでは毎年15〜25人程度の学生が入学し、社会学部が本所属の教員の数は30人程度、兼任の教員も合わせれば50人程度おり、アメリカの社会学の中でも非常にサイズの大きな組織です。したがって、スタッフの数も充実しており、そのこともあるのでしょうか、教員は教育・研究および一部の管理職、それ以外は事務スタッフが担当し、事務スタッフの仕事もいくつかに分割されているという分業システムが確立しているように感じました。

〜研究〜

そうこうしているうちに来週から授業が始まるため、初回授業のリーディングにも手をつけつつ、アドバイザーの先生との共同研究も進めているのですが、やはり上記の行事からすぐに気持ちを切り替えるのが難しいところもあり、研究に集中できているかと言われると、難しい面もあります。

それでも、ようやく今週になって恐らく博士課程の間ずっと所属することになる人口学センターのメンバーになって待望の個人用デスクをもらえたこともあり、少しずつ研究の方にも注力し始めています。さし当りの締め切りは9月中旬のアメリカ人口学会のアブスト提出なので、それまで頑張りたいと思います。

〜論文採択〜

水曜日の朝に、予定より1時間ほど早く目が覚めてしまって、時間を確認したついでにメールの更新をしたところ、Demographic Researchから論文の採択通知が来ていて、一瞬、夢か現実かの区別がつきませんでした。よく読んでみると、congratulationsとあるので、恐らく悪いメールではないだろうと思い、またしばらく寝てしまったのですが、しばらくして急に実感が湧いてきました。

正確にはconditional acceptで、査読者からの修正要求に応えた上で正式に採択となるのですが、実質的には採択となります。比較的自信のあるテーマで、チャレンジの意味を込めてDRに投稿したのですが、まさか採択されるとは思っていませんでした。DRはドイツのマックスプランク人口学研究所が発行しているジャーナルで、他のジャーナルと異なりフリーアクセスなのが特徴です。IFは1.2程度とそこまで高いわけではないのですが、フリーアクセスということもあり多くの人に読んでもらえること、ヨーロッパでは若手の登竜門的な位置づけらしいこと、トップジャーナルに論文を載せるシニアの研究者も論文を頻繁に掲載していることを踏まえ、共著者と相談してトライしてみました。

1回目の査読でR&Rにはなったものの、査読者からのコメントには結構きついものもあり、限られた時間の中できるかぎり対応しましたが、正直なところ、ちょっと難しいかなと思っていました。日頃からperfectionistをdisっているのですが、今回は自分が完璧主義者になってしまったきらいもあり、再投稿した修正原稿にも納得がいっていませんでした。査読の過程で色々とアドバイスをくれた共著者がいなければ、提出を断念していたか、投げやりなリプライになっていたと思います。改めて、感謝するばかりです。

日本で約3年間大学院にいたとはいえ、アメリカPhD1年目が始まる前に英語論文を第一著者として査読雑誌に通すことができたのは、さしあたりよいスタートなのかなと思います。DRはトップジャーナルではありませんが、査読で落ちるという話は頻繁に聞き、PhDの後半になって出せればいいくらいの位置づけだと思うので、そのハードルをクリアできたのは自信になりました(とはいえ、特に査読のプロセスで共著者の助けがなければ採択は難しかったとは思います)。現在の目標は、在学中にトップジャーナルへの掲載(は無理でも採択)までは持っていければというところです。笑われるかもしれませんが、目標は高く設定したいと思っています。

大学院オリエンテーション後に学生たちでテラスで1杯



August 27, 2018

8月26日(日)

ルームメイトが来てから3日目、徐々に生活感が出て来ました。こちらにきてから、2回目の日曜。前回は友人の引っ越しの手伝いで汗だくになりましたが、今日もマディソンは暑く、自転車で走ったら結構な量の汗をかきました。

今日はマディソンにあるエアビーが閉まるのでセールをするというポストを見つけたので、日本人の同期の友人と行ってみたのですが、20分待ってもセールらしきものは開かれず、しびれを切らして大学に戻ってしまいました。待っている間、ネコと遊べたのでいいのですが。

友人と中華スーパーで買い物をし、オフィスでちょっと作業。日曜は誰もいないんですが、今日は同じコーホートの人も一人来ていました。彼と話すと、すでにシカゴのマスターをとっているので、統計の授業はwaiveするとのこと。UW-Madisonにも必修科目はいくつかありますが、今学期に新入生が取らなくてはいけないのはプロセミナーだけなので、もしかするとセミナー以外で顔をあわせることがない人もいるのかもしれません。学生が多いので自由度が高く、柔軟な履修ができるのは魅力ですが、コーホートの連帯感?みたいなのは生まれにくいのかもしれないなと思いました。

5時過ぎにオフィスを出て、メモリアル・ユニオンでコーヒーを飲みながら作業。ちょっと小腹が空くと集中できないのですが、家に帰るまでではないなという時には、近くにコンビニもないので、思い切ってレストランやカフェがあるユニオンまで来てしまいます。その足で帰宅。日没後に帰宅した時にちょっと怖い感じがしたので(犯罪とかではなく、自転車で走ると車と並走する瞬間が少し怖い)、日没前には帰るようにしています。そのあとはだらだらツイッターしたり、ネットフリックスでドラマ見たり、プレリムのことが気になったので少し調べたりと、作業は残っていますが、さしあたり休日なので気を緩めています。

August 25, 2018

UW-Madisonの組織図

私もまだよくわかっていないところがあるので、今後更新するかもしれませんが、自分が身を置くことになる研究環境について、自身の整理の意味も込めてまとめておきます。

例として、私が今学期まで所属していた東京大学では、以下のような組織が私の研究の日々において関わってきました。
(1)社会学研究室
(2)人文社会系研究科
(3)IHS 東京大学 多文化共生・統合人間学プログラム
(4)日本学術振興会
(5)社会学院生自治会
(6)社会科学研究所
(7)国立社会保障・人口問題研究所

(1)は私の所属先で、具体的には大学院博士後期課程の学生として、研究室に所属していました。(2)は社会学研究室が所属している大学院で、例えば財務関係の書類や学籍などは研究科に届けます。(3)と(4)はアメリカ的に言えば私がfundをいただいていたところで、リーディングの方は副専攻という形で所属しながら、奨励金をいただきました。博士後期課程2年次からは学術振興会特別研究員に採用いただきまして、奨励金と研究費をいただきました。
(5)は若干インフォーマルな組織ですが、社会学研究室の院生が研究する院生室の実質的な管理や、研究室の教員との年次交渉にあたる組織です。年に一回総会がある以外、目立った活動をしているわけではありませんが、時々教員に申し立てをしたい時には、自治会を通す方がスムーズな場合がありました。(6)については、制度的には関連がないのですが、以前はアルバイト、最近だと研究会などを通じて研究所の方にはお世話になっています。2018年からは学振の規定が変わったこともあり、(7)の研究所で働くことができました。私の関心は家族や人口にあるので、短いながら在籍できたことは非常に勉強になったと思っています。

書き始めた時は、東大の組織は少なくて、UW-Madisonの組織が多いことを述べようかと思ったのですが、東大も思いの外多かったですね。まあ、(7)は完全に学外の組織です。

UW-Madisonでは以下の組織があげられます。
(1)Department of Sociology
(2)Center of Demography and Ecology (CDE)
(3)Center for Demography of Health and Aging (CDHA)
(4)College of Letters and Science
(5)Social Science Research Service
(6)Teaching Assistants' Association (TAA)

(1)が東大における社会学研究室に該当します。もちろん、教員や学生の規模は違います。(2)-(3)は人口学を専攻する場合に所属することになる研究所で、東大には該当するものがありません。(4)はいわゆる「研究科」にあたる部分ですが、東大にいた時よりは陰が薄いというか、一度も書類を提出することもなく、まだオフィスがどこにあるのかもわかりません。おそらく、東大にいた時に出していたような書類は学部に出せば良いのだろうと思います。(5)は(4)に所属する学部の研究者・院生向けのソフトウェアや統計手法のアプデートを担っている組織です。また、RAなどの配分も行なっているようで、私もhourly assistantの予算はここから出ています。(6)は学生組織となり、日本では自治会に当たりますが、こっちの自治会は本気で給料やbenefitに関して雇用者側と交渉する模様です。日本でファンディング先だった(3)や(4)がないのは、私が日本の財団から支援いただいているのと、あとは学部で基本的にはファンドを処理できていることが背景にあるでしょう。アメリカ国籍の学生であれば、学振的な性格を持つNSFにアプライすることもあるようです。

渡米後の10日間

8月15日より渡米し、ウィスコンシン州マディソンに滞在しています。
9月から授業が始まりまして、それから約5年間、UW-Madisonの社会学部博士課程に在籍し、所定の単位を収め、試験をパスして、博士論文を書くことになります。

マディソンに着くまでも、ついてからも小さなハプニング続きで、ようやく生活を始められたというのが正直なところです。思い当たるものをあげると -

・LA-シカゴ行きの飛行機が遅れ、シカゴからマディソンに出る飛行機に乗り遅れた(人生初)。
・仕方がないので空港泊(人生初)。オヘア空港には第2ターミナルのエアカナダのエリアに就寝スペースがあるようなのですが、私がついた時には第2ターミナルへの移動通路はしまっていたので、椅子の上に寝たり、少し寝ておきたらあたりを徘徊していました。意外と空港泊する人はいるのですが、とは言え多くの人は寝ています。3時ごろまではかなり静かだったのですが、4時くらいになると朝の飛行機に乗る人が来るので、一気にラウンジが活気付くのが印象的でした。マックとスタバ、それとダンキンドーナツは24時間開いているところもあり、空港泊民には有り難がれるでしょう。
・翌朝の飛行機でマディソンの空港まで着くが、預入荷物の一つがシカゴに放置されていた(人生初)(なんで!)。仕方がないので、荷物の一つを失ったまま新居へ。ちなみに荷物は当日のうちに届けられた。
・ジップロックコンテナにポップコーン入れて加熱したら容器が溶けた(人生初)。ジップロックは耐熱仕様になっていない(100度以上で溶ける、油分が多いと沸点が低くなるので低い温度でも溶ける)ので注意。
・アメリカの携帯電話番号がないとインターネットの回線を引けないので、到着後数日はインターネットなしの生活。
・学部のpayroll/benefit(給与・保険係)の事務の人と、大学院の研究支援施設の財務担当の人のfirst nameが同じで、途中まで同じ人だと勘違いしていた。二人の言っていることが時に食い違うことがあったので、結構混乱した。
・アマゾンの遅延がよりによってフライパンに発生し、5日間程度料理ができない。途中からケトルでスープもどきのものは作ることができた。
・友人の住む大学寮まで行き、引っ越し作業を手伝うはずが、当日マラソン大会が開かれていてバスの通路が閉鎖・迂回していた。そもそも、休日にバスが1時間に1本しか走っていないので、気づいた時にはさらに遅れ、結局3時間遅れで友人宅に着く始末。
・指導教員がマディソンに初めての規模というくらいの洪水に遭遇する。自宅は湖、及びダムの近くで被害が甚大だった模様。今もダムから水が放流されていて、道が一部封鎖されている。

ハプニングではありませんが、新居には水と電気、ガスは通っていたものの、肝心の家具や調理器具が一切なかったので、生活が一通り整うまで、1週間程度を要した気がします。今後は、今回の経験を生かして、スムーズな引っ越しを心がけたいです。

もちろん、嬉しいハプニングもありました。craigslistで食器のセールがあったのでオファーしてみたら、家から数件先のご近所さんで、しかもお父さんが日本で働いていた経験を持っている方で、食器だけでなくシェードランプや布団まで、色々もらってしまいました。大学から一番近い中華スーパーにも和食を作るための調味料が結構あったので、今のところご飯には困っていません。懸念だった授業料も、アメックスのカードで一括払いができました。もちろん、出費がかさんでいて、クレジットも上限に近づきつつあるので、色々とやりくりしないといけません。

ひとまず、現地に着いてからの10日間の一部始終でした。ドタバタしていますが、周りの動機やスタッフ、先生方は皆優しく、銀行や大学の事務の人も留学生に慣れているのか非常に温かく接してくれます。自分が一番研究したいと思っていた環境にようやく来れたので、この貴重な機会を十分に楽しみ、学びたいと思います。



August 3, 2018

社会学部の中で人口学を専攻する

引越しを済ませ、実家に戻ってきている。渡米を控え、現在は秋学期に履修する授業を考えているところ。以下の6科目を履修することになると思うが、平日に休養日が欲しいので、少し減らすかもしれない。

1. Stats 361 Statistics for Sociologists II
必修の一つ。火曜と木曜にlectureがあり、月曜日にTA session。

2. Soc 971 Seminar in Population & Society I
CDE affiliatesの学生は必修のセミナー。人口学に関するトピックベースの授業。春学期にはIIがある。

3. Soc 674 Demography Techniques I 
人口学方法論の基礎。同様にCDEの必修。

4. Soc 995 Demography Training Seminar
CDEの学生が「各学期」(これがPhDコースのうちずっとなのか、任意の1年間なのかは不明)履修するprofessional development 色の強いセミナー。キャリアに関する話のほか、統計手法の紹介もあれば、PAA前になると発表の練習があったりと、実践的な内容。恐らく、通算で2学期間履修すればよい。

5. Soc 997 Demography Research Seminar
同様にCDEの学生が履修するセミナー。こちらはDemSemと呼ばれ、ウィスクや学外の研究者を招いて研究発表をしてもらう場を兼ねている。UW-Madison Sociologyといえばコレ、という印象が強く、個人的には一番楽しみ。DemSemは学生だけではなく教員も参加する(というか、学部のセミナーに便宜的に単位をつけているという側面が強い)。

6. Soc 700 Introductory Proseminar for Graduate Students
唯一、新入生が秋学期に履修することを定められている授業。

1~3は3単位、4~6は1単位で、合計12単位になる。

私は社会学部と提携している人口学・生態学研究所(CDE)のメンバーになる予定で、CDEのメンバーになるとPAAでの発表に対して旅費が出たり、色々とメリットがある。その代わりに、Degree requirementsとして多くの人口学関連の授業を履修することが求められる。

といっても、学位にSociology and Demographyとつくわけでもなく、恐らくCDE affiliatesになってもプレリムに人口学を選択しないという道もあるだろう。ただ、計量的なアプローチで、階層、家族、教育、移動、健康、ジェンダー、エスニシティなどを研究しようと考えている人は、大方CDEのメンバーになる印象。

ところで、ウィスクの先輩から必修の社会学理論の授業はリーディングが多いので1年目は避けるとよいという旨の助言をもらった。仮に助言に従うと、1年間は社会学らしき授業を履修しないことになる。

これはこれで、アメリカらしくてよいなと思う。言いかえれば、この状況は社会学部の中に人口学専攻があるようなもので、画一的ではない、多様な履修形態を選べるという点はアメリカの(一部の)社会学部が持つ強みだろう。人口学を専攻する道は、CDEを通じてかなり制度化されているが、UW-Madisonはなんといってもマンモス学部なので、最初の一年で履修しなくてはいけないのが実質的にはプロセミナーしかなく、他の授業はいつとってもよい(小規模学部は人数の関係で1年目に履修しなくてはいけない授業がしっかりと決まっている模様)。必修はあっても、それは修士号か博士号を取るまでに修めていればよく、やろうと思えば必修の社会学理論以外に社会学らしき授業をほとんど受けないまま、社会学の博士号をとることができてしまう。

ただし、プレリムは2科目受けることが求められているので、PhDを取るまでには人口学に加えて、何かしらの科目を選択してパスするだけの知識を身につけなくてはいけない。私は社会階層論を取ろうと思うが、根底では社会階層と人口学的な視点は重なっているところも多いので、結局のところ「社会学部の中で人口学を勉強している」という感覚は卒業まで拭えないかもしれない。