December 21, 2019

東大内における性別分離のトレンド

先日NYTの記事で東大の学部の女性比率が2割というニュースがありましたが(At Japan’s Most Elite University, Just 1 in 5 Students Is a Woman)、在学生の中で男女の分離はどれくらい変わっているのか、いないのか、気になったので調べてみました。
先日出版した論文で使ったDuncan indexと呼ばれる指標を使って、東大の12の学部における男女の分布をもとに分離のトレンドを作ってみました。

この指標は、学部jごとの女性内割合(Fj/F)と男性内割合(Mj/M)の差の絶対値をとり、これを他の学部の値と合計したものです。具体的には「男女間で学部の分布を等しくするためには何%の女性(男性)が他の学部に移らなくてはいけないか」を示していて、完全に分離(例:男性全員が経済学部にいて、女性全員が法学部にいるような世界)しているとこの尺度は100になり、完全に一致していると(例:男性も女性も各々2割ずつ異なる5つの学部に在籍する)0になります。

ホームページから2009年から2019年までのデータが取れたので「後期課程」かつ「その年度に進学した人」に限定して分離指標を作りました。その結果が以下の図です。これによると、2009年時点では学部間でみた男女の分離は約29ポイントで、およそ3割の男性(女性)が移ることで分布が等しくなることを示しています。それ以降、2017年まで分離は減少傾向にあったのですが、2018年から上がり始め、2019年には過去10年で2番目に分離が大きくなっています。


この指標の性格上、全体に占める男女の比率もトレンドに影響するのですが、東大の場合女性割合は安定的に2割なので、実際には学部内における男女の分布がより分離的になっていることが示唆されます。学部はたった12個しかないので、それぞれの寄与分を直接みた結果、近年分離の増加に寄与しているのは以下の4つの学部でした。


日本語だと、左から教養学部、工学部、法学部、そして理学部です。2018年から2019年に関しては教養学部と工学部の寄与分が大きいです。

工学部は2013年に分離の値が最も小さくなっていますが、この時、男性内割合は34.3%、女性内割合は18.4%でした。しかし、2019年になると工学部に進学する男性の割合は35.5%に増える一方、工学部に進学する女性の割合は14%に減少しています。男性がより進学するようになって、女性が進学しなくなったので、分離が近年上昇傾向になります。教養学部は逆のストーリーで、2018年時点では女性のうち8%が進学していましたが、2019年ではこの割合は11.8%に上昇しました。これに対して、男性のうち教養学部に進学する人は5.3%から4.5%に減少した結果、分離が強まっています。

学部内の女性比率はほぼ横ばいですが、その中で男女がどのような学部に進学しているかは安定的ではないことがわかりました。工学部に進学する女性が減ったこと、および教養学部に進学する女性が増えた背景は何なのか、気になります。

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