February 16, 2014

エスニシティと(への)信頼、信頼のコーホート効果

Gesthuizen, M., T. van der Meer, and P. Scheepers. 2009. “Ethnic Diversity and Social Capital in Europe: Tests of Putnam's Thesis in European Countries.” Scandinavian Political Studies 32(2):121–42.

 この論文では、パットナムがエスニシティの多様性がソーシャルキャピタルを衰退させるとした仮説(異質性が増すと、集団内のSCは形成されても集団間のSCは形成されないという紛争理論に近い観点)をEurobarometerのデータを用いて検証している。パットナムの議論は移民が増加するという時間的な側面を省略しているため、この論文では通時的な移民の流入も仮説に加えている。この他、先行研究の知見から、経済的な不平等、社会保障、民主主義の歴史とSCの関係について仮説を立てている。分析の結果、エスニシティの指標はSCに対してネガティブな影響を持たず、その代わりに経済的な不平等と民主主義の歴史が各国のSCの違いを説明する要因と分かった。個人的には、経済的な不平等と福祉国家の指標は互いに独立ではないような気がするのだが。。。また、SCは複数の要素が別々に検討されているので、仮説の支持・棄却にいまいち納得のいかない節がある。。。

Boyas, J., and T. L. Sharpe. 2010. “Racial and Ethnic Determinants of Interracial and Ethnic Trust.” Journal of Human Behavior in the Social Environment 20(5):618–36.

 アメリカでは、人種と信頼の関係についての研究が多く行われてきたが、人種間の信頼関係については検討がされてこなかった。そこで、この論文では人種・エスニシティ間の信頼に焦点を絞った分析がされている。従属変数には、白人、アフリカ系、アジア系、そしてラテン(ヒスパニック)系の四つのエスニシティそれぞれへの信頼を尋ねた質問が合成されて用いられ、独立変数には個人の社会経済的な属性の他、調査の対象となったアフリカ系、ヒスパニック系、そして白人の三つのエスニシティがカテゴリとして採用されている。分析の結果、ラテン系が最もエスニシティへの信頼が低く、いちばん高いのは白人だった。全体サンプルにおける重回帰分析では、エスニシティと教育の効果が最も大きく、他に差別の経験、収入、居住期間が有為なものとして続いた。続いて、サンプルを三つのエスニシティに分けた分析では、ラテン系で収入が、白人で教育と差別の経験、そして居住期間が0.1%水準で有意だった。アフリカ系に関しては教育、差別の経験、居住期間が5%水準で有為なことが分かっている。このように、エスニシティ間で信頼を規定する要因が異なることが論文の知見となっている。居住期間がネガティブに働いているのは興味深いが、これは居住期間が長くなるとそれだけエスニシティ間の隔離が進む状況に巻き込まれるという解釈が提示されている。

Robinson, R. V., and E. F. Jackson. 2001. “Is Trust in Others Declining in America? an Age–Period–Cohort Analysis.” Social Science Research 30(1):117–45.

 この論文では、アメリカのGSSデータを用いて1972年から88年にかけての一般的信頼の変遷について、既存の研究を整理した上で年齢効果、時代効果、そしてコーホート効果をまとめて検討している。分析の結果、どのコーホートでも若い時の低い信頼が40代になるまでは信頼が徐々に高くなり、それ以降は持続すること、時代を経る(特に1980年代以降)につれ若年層・中年層の信頼が低下していること、1940年コーホートを境に信頼が低下することが分かった。分析の結果としては1940年以降を境とする非線形的なコーホート効果が支持されているが、80年代以降における若年層・中年層に限った時代効果も想定できるとされている。(重回帰分析の手順の意味が分からなかったので後日再読)

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