February 14, 2014

パーソナルライフの社会学(単身女性、レズビアンカップルのドナー選択、シビルパートナーシップ)

Shipman, B., and C. Smart. 2007. “'It“S Made a Huge Difference”: Recognition, Rights and the Personal Significance of Civil Partnership.” Sociological Research Online 12(1).

 この論文では、イギリスにおける同性愛カップルに法的な地位を与えたCivil Partnership (CP)の意味とその重要性を政策面から考察した後、CP導入以前に法的には何も効果のない自治体レベルでの承認を経た同性愛カップルに対して、そうしたセレモニーを受けた理由を尋ねている。

 CPの導入過程に関しては、EUレベルでの人権政策が与えた影響が指摘されている。CPは従来の結婚制度に対して何も変更を加えずに、同性愛カップルに法的な地位を与えるものとして機能しているが、CPにも家族が国家の基本制度として「安定」することが目的にあることが明記されている。この二本立て的な結果を招いた要因としては、結婚制度に価値を置く宗教団体による干渉など複数の主張を持つロビイング団体の存在が指摘されている。インタビュー調査から、CPやそれ以前の制度による承認を経る理由として、法的な地位の承認に価値を置いたり責任を明確にするといったもののほか、公的な議論に表れない承認が培った愛を示す、家族から承認してもらうきっかけを得る、公的な声明による地位を得るなどの理由が見られた。

Macvarish, J. 2006. “What Is‘ the Problem’of Singleness?.” Sociological Research Online 11(3).

 この論文では、イギリスにおける単身女性の増加を受けて進められてきた今までの研究が、結婚や長期的なパートナーシップの価値の前で単身女性が周辺化されたり、彼女たちのアイデンティティの反道徳性を見る社会的構築やスティグマを破ることにあったとを指摘する。しかし、近年になって議論の前提にあった伝統的な家族像が崩れつつあり、単身女性のライフスタイルを肯定的に見なす見方も出てきた。こうした文脈を踏まえて、この論文では単身女性への社会学的な理解の再考を促している。インタビュー調査では、単身でいることで責任から自由になれるという利点と子どもを持たず単身でいること自体の苦しみの矛盾は容易に解決できないものであり、既存の「自分自身を愛する」といったセラピーのレトリックが批判されている。また、彼女たちは自身に付される「結婚できない女性」というスティグマを感じている一方で、そうした意味を持つ蔑称的なspinsterという言葉で形容されるのを拒否している。既存の研究では、単身女性たちがこうしたスティグマを内面化していた(女性らしくないという意味で)ことが報告されているが、今回の調査では単身女性たちはそのような認識を拒否しており、女性らしさを認めている。しかし、この女性らしさはsingle girlというように大人以前という意味が込められており、彼女たちは親に自分たちが大人であることを認めてもらうことに難しさを感じていることが報告されている。これは既存の単身ー家族というフレームから子どもー大人(未熟ー成熟)という認識への変化の必要性を示唆している。

Nordqvist, P. 2010. “Out of Sight, Out of Mind: Family Resemblances in Lesbian Donor Conception.” Sociology 44(6):1128–44.


 この論文ではレズビアンのカップルが男性ドナーの精子を利用して子どもを設ける際にどのような実践を行っているかを検討している。従来の研究では、カップルは妊娠する女性とパートナー、そしてドナー自身の身体的な特徴を比べて、なるべく自分たちの子どもでもおかしくないように目の色や肌の色が似ているドナーを選ぶことが指摘されていた。今回の論文で対象になったカップルも全体的に同様の傾向が見られた。生物学的な特徴の類似を家族の指標としている点で、レズビアンのカップルたちは既存の伝統的な家族(生物学的なつながりを前提とした家族)の規範を利用して関係の構築をはかっている。これ以外に、似ている特徴を持つドナーとのマッチングの過程はカップルにとってどのような意味を持っているのだろうか。マッチングの過程で精子を提供するドナーは子どもとの生物学的つながりから、子どもと似ていることが彼が家族の一部を構成する可能性をもたらす。これはカップルにとっては特に妊娠した女性やパートナーと子どもが似ていない場合に脅威だとされている。反対に、周りの人々に勘ぐられない程度の違いであれば、ドナーはカップルの視界から消え、忘れ去られることを指摘している。マッチングの際の身体的特徴はドナーを子どもと関係する人物と見なすか、それとも関係ない人として排除するかというプロセスも含んでいるのだ。

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