June 18, 2020

6月17日: 人の話を聞く、人に指導する

7時過ぎに起床、自分にしてはかなり珍しい。8時からポッドキャスト の収録があったため。昨晩は12時半ごろに寝ようとしたが、多分寝たのは1時間以上後になってから、気持ち眠かったが、昨晩ほどではなく、ある程度明晰に思考できるくらいの調子だった。

今回のゲストの方は、私はフルブライトの合格者説明会でお会いしていたがそれきりだった。もう2年も前になる。その頃は素朴に夢だった大学院に留学することに胸が高鳴っていたが、実際に入ってみると、日本と同じように毎日地道に研究していくことに変わりはないことに気づく。今はそんなふうに冷めて考えてしまうが、今日のゲストの方の学部生の頃から今の研究に至る話を伺うと、自分にも間違いなく、この研究をしたいと強い意志を持った時期があったことを思い出させられた。目の前にことに忙殺されるあまり大きなビジョンを忘れてしまうことがあるが、今回のポッドキャストの収録は、いいモチベーションになった気がしている。

収録中、私は話を聞いているだけで、たまにTwitterなんかも見ちゃうわけだが、それでも1時間近くの収録を聴き続けるのは、意外と疲れる。頭の中で、この話は面白いけど全体の流れには沿わないからカットだなとか、こことことは関連があるから繋げた方が面白いなとか、そういう視聴者とも編集者ともつかない視点で聞いていると、意外と頭を使っているのかもしれない。

終了後、どっと疲れが来たのでしばらく寝て、シャワーを浴び、covidの分析を進めた。covidをめぐる社会格差のプロジェクトで採用した学部生のインターンの人は、ネイティブアメリカンに関心があるということで、彼女の関心に沿って調べてもらうことにしている。その関連で、ネイティブアメリカンの死亡に地域差があるのか、という話になり(日本の皆さんの耳には届いていないかもしれないが、例えばアリゾナやニューメキシコに居留地をもって住んでいるナバホの間では、covidの感染が広がっていることが盛んに報道されている)。UCバークリーにいる人口学の教授が書いたプレプリントのアイデアを拝借して、CDCから公開されている年齢別、カウンティ別、人種別の分布からage-place adjustedされた死亡率を間接的に求め、それを白人と比較してみた。replicationファイルが公開されていたので、それを使ってこちらで分析したところ、ネイティブアメリカンの死亡が確認されているアリゾナ、ニューメキシコ、オクラホマでは、白人と比べた時に相対死亡比(relative mortality ratio)が黒人と白人の死亡よりも明らかに大きいことわかった。計算違いじゃないのか確かめたくらい大きく、例えば、アリゾナではRMRは8近く、つまりネイティブアメリカンは8倍白人よりもcovidの死亡率が高いことがわかった(ちなみに、分母はセンサス人口なので、testingに影響されるcasesではない)。年齢分布などは統制しているので、これらの地域ではネイティブアメリカンは白人よりも明らかに死亡リスクが高い、これはなぜか、それが今後明らかにしていく問いになる。

インターンの学部生には、そのwhyに関するcandidateを上げてもらうことにしたのだが、こちらが上の分析結果を元に何をして欲しいかを(私は遅筆なので)20分くらいかけて書いたら、ものの5分で返事が返ってきて、すぐさま10個近い仮説を上げてくれた。

驚く。

プリンストンの学生で、それもインターンの選抜を経て採用した学生なので、優秀なことに違いはないのだろう、これだけ本人も情熱を持って取り組んでくれると、一応指導側にいる自分としては嬉しい限りだ。その一方で、その学生の熱意に応えられるだけのアドバイスをしないといけないとなると、気苦労も少なくない。私も時たま、アドバイザーに対して、もうそれは色々考えたアイデアを出すことがあるが、意外と返事がつれないことがある。

その度に、自分のアイデアが良くなかったのかと思うこともあったのだが、実際に提案される側になって気づくのは、その熱量に圧倒されてしばらく答えが出ないのだ。自分の情報処理のスピードが学生の話について行けていない。今日はそれを痛感した。もちろん、その学生はこの夏をcovidのインターンに使っているので、いってしまえば1日の全てをそれに費やすこともできる。5分しかかからなかった返信は、5分で思いついたわけではなく、もうすでに色々と考えていたのだろう。一方で私や、私以上に忙しいプロジェクトの教授は、別件で色々と時間を取られている。インターンの学生たちが夏を有意義に過ごせるために、相対的に時間が限られる私たちは何をできるのだろうか。そのことを考えると、しばらく途方に暮れてしまった。一つの救いは、私には最終的にオブリゲーションはなく、その点で免責があることだ。これを言ってしまえば元も子もないが、私に学生を指導する義務はない、給料は出ていない。しかし、今回教授は私が将来的にこうった学生を1体1で指導することの準備も込みで、私を誘ってくれたところもある。普段の研究では身につかない、on the jobのトレーニングを受けているのかもしれない。と考えると、指導を受けているのはその学生なのか、それとも私なのか、わからなくなってくる。

その後別のcovidの分析、きょうだい論文の改稿、夕食、ランニング、ポッドキャストの編集をして1日が終わる。明日もcovidのミーティング、午後にアドバイザーとの面談がある。

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