June 29, 2020

過剰死亡の年齢・国際比較からみるCOVID-19死亡への示唆

みなさんNYTやFTの過剰死亡のグラフはみられていると思いますが、先日Human Mortality Databaseが年齢/性別のデータベースを作りました。最近それを使って高齢者の死亡の国際比較のプロジェクトを進めているのですが、今回は高齢者のweek specific mortality rateを15-64歳人口のそれで割った「過剰死亡の過剰死亡」(M85+/M15-64)を示しています、ややこしくてすみません。解釈としては、例えば50という値は、その週における高齢者の死亡率は非高齢者の50倍、ということになります



解釈に入る前に、なぜ年齢別にしてrelative mortalityを出しているかというと、全体で見てしまうと国ごとに異なる年齢分布やベースラインのhealth conditionがマスクされてしまうからです。

15-64歳って広くない?って思われた方、超正しいです。ですが、これが提供されているデータで一番細かい非高齢者グループです。

国によって年齢分布異なるんだからもっと細かい年齢グループをレファレンスにすべきでは?超正しいです。確かにアメリカはヨーロッパよりも若年人口が多いので、それが相対死亡に影響しているのかもしれません。ですが、アメリカの相対死亡を見てみると若年者が多いにもかかわらず、他のヨーロッパ諸国と同じかそれより低いです。若年者における死亡は極めて少ないこと+アメリカに関してはOECD諸国に比べてもmid life mortalityが高いことが知られているので、この相対死亡の低さは理解できます。具体的にいうと、アメリカの相対死亡が低いのは、中年者のmortality rateが高く、分母が大きくなっているからだと言えます。

それらをひとまず考慮できているとして、私が面白いなと思ったのは以下の点です。スペイン(ESP)やイタリア(ITA)、あるいはベルギーやオランダといった国では非高齢者と比べた時の高齢者(ここでは85歳以上)の相対死亡が、感染のピークだった3-4月で際立って高いことです。これに対してアメリカやドイツでは相対死亡は過去5年と大きく変わりません。

なぜでしょう?思いつきと言われても仕方ない仮説ですが、スペインやイタリアの方がピーク時により高齢者が感染し、死亡したのに対し、アメリカやドイツでは高齢者も非高齢者も同じような確率で感染したので、全人口で見れば過剰死亡が見られるが相対死亡自体は他の年と変わらない。もちろんそもそも誰も感染しなかったという説もありますが、過去数年と比べたときに過剰死亡自体は多かれ少なかれ起こっていることなので、感染者の年齢分布が国ごとに異なるのではないかと考えられます。

含意:常々コロナによる死亡者は検査に依存するので氷山の一角と言われ、検査レジームが国ごとに異なることもあり、過剰死亡がよく用いられているわけですが、例えばスペインの3/4月の(検査した人に占める)感染者の年齢分布は明らかに高齢者に偏っています。相対的な過剰死亡からある国の高齢者の死亡が他の国よりも明らかに多いことがわかると、検査を条件づけないと見られない感染者のデータも、それなりに意味はあるのかもしれない、ということが示唆されます。つまり、過剰死亡と検査した感染者の死亡は、年齢ごとに結果を分けてみることによってリンクするのではないかということです。

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