Mare, R. D. (2015). Measuring Networks beyond the Origin Family. The ANNALS of the American Academy of Political and Social Science, 657(1), 97-107.
この論文で、Mareは社会移動の研究対象を、従来の同居する親子という二世代から、子どもから見た時の祖父母のような複数の家族性印との関連から移動のパターンを見ることの必要性を説いている。
彼の定義を借りれば、社会移動研究の主要な目的は、世代内・世代間にわたって見られる個人と他の社会的な構成体の社会経済的地位とその位置づけの連続性、非連続性について検討を加える事にある。しかしながら、ほとんどすべての社会移動研究はこれまでtwo generation perspectiveという視点、つまり親と子どもの間の連関を問うていた。_Mareによれば、この視点に基づく研究は以下の様な想定を共有していたという。第一に、個人と核家族メンバーの連関にくらべて、その個人と他の家族員との関係は弱い。第二に、社会移動にとって関係のあるような家族ネットワークは事前にわかっており、時代と場所を問わず安定的に推移している。第三に、社会経済的地位の影響は個人と家族メンバーとの間の同居を必要条件としている。第四に、親の社会経済的地位の影響は、親子間の連関から十分に測定できる。
このように既存の議論を整理した上で、Mareはある条件下では、親以外の家族メンバーも移動に影響を与えると主張する。これに関して、彼は以下の二つの先行する研究潮流を紹介する。まず、家族の不安定性が増す現代においては、必ずしも親子間の紐帯が安定的に持続するとは考えにくいという立場からの研究である。例えば、従来の研究では懐古的な質問を取る場合に父親が不在の家は分析から除外されていた。次に、世代間移動に関する母親の影響力を強調する議論を紹介する。このように、必ずしも世代間移動を父親と子供のに世代に限定する理由はないとする。
その上で、Mareは自身の研究を持ち出し、こうした世代間移動の研究を拡張する流れに、複数世代を加える視点を位置づけようとする。ただし、彼自身が強調するように、祖父母の影響力は時代と場所によって異なる可能性に留意し無くてはならない。さらに、Mareは従来の研究では、定位家族、生殖家族の双方を対象とした世代間移動に関して、親子が一緒に居住しているという点を前提にしていたと考えている(その直後で、MareはDemography of social mobilityについて説明しているが、この点はよく分からない)。
以下に引用するようにMareは社会移動のメカニズムを明らかにすることよりも、家族メンバーについての豊富なデータを得る必要性を問うている(これらは対立しないが、Mareの力点はそちらにあるということだろう)。
The study of detailed mechanisms through which socioeconomic inequality in one generation are transmitted to the next generation remains an essential area of research. Given the broad goals of a new mobility study, however, I believe that the detailed study of mechanisms should be subordinate to obtaining the best possible data on continuities and discontinuities in the socioeconomic statuses and positions of families. Other types of networks and the identities and characteristics of influencers have been successfully explored using detailed longitudinal data on a more limited set of cohorts than is likely to be covered in a new national mobility study.
最後に、Mareはどのようなデータを使用できるのかについて述べる(省略)。
Hout, M. (2015). A summary of what we know about social mobility. The ANNALS of the American Academy of Political and Social Science, 657(1), 27-36.
Mareと並ぶ西海岸の大御所による社会移動研究の現在地の確認。
彼は始めに、「誰が上昇移動をしているのか」(moving upという会話調でもいいような言葉なので、上昇移動の四文字で表すにはちょっと仰々しいが、成り上がりとも違うので、うまく訳せない)を問うことは、魅力的なものだがあらぬ方向へと注目を向けてしまう誤ったものであるとする。なぜなら、社会移動の条件の一つに機会の平等がどれだけ分配されているかという点を求めたとしても、上昇移動はこれよりも経済成長に依存しているからだ。そのため、この問いは「どの程度、若年期の条件や環境(Social Origin)が大人になってからの成功を制約するのか?」というものに変更されるべきであるとする。彼によれば、Social Originに着目することで、以下の三つの点から私たちは機会と平等という問いを理解することができるという。まず、この考えを受入れることによって、父親や母親それ自体に関心を持たずに、その子どもの成功に対する影響という観点に集中できる。言っていることがよく分からないかも知れないが、噛み砕いて言うと、親に注目してしまうと、しばしば無駄に彼らが学位を取ったり、収入を得た期間に目がいってしまうということである。第二に、Social Originという概念を使用することで、親子間で連関するような変数という視点を超えて、出身背景が機会と平等に影響を及ぼす若年期の環境に与える影響に焦点を当てられるからである。これも当たり前なのではないかという気がするが、残念ながらまだ一つある。第三に、社会移動が上昇移動を通じて進歩をもたらすといった混乱を避けることができる。
その次にHoutは、社会移動を分析する際に、単に収入や職業カテゴリの親子間の連鎖ばかりを計算しているだけでは無意味だと言う。なぜなら、いったいどの環境要因が成功を妨げているのかを明らかにしなくてはいけないからだ。このように主張した上で、彼は何が重要な要素かを述べている。これは当たり前なものばかりだが、経済的資源、雇用環境、遺伝、過程の文化的背景、家族構造(これに関しては、複雑な影響プロセスについて言及している)、非居住の親戚の存在、居住地域、人種や国籍、そして生年(どの年に生まれたのか)、以上のすべてが影響する。そして、これらの影響は時代を通じて一定ではなく、変化を伴っている。
次のプロセスは、データ収集に関わる。以上から最低限必要なのは、親の収入や職業、そして学歴となるが、収入は他の二つに比べて、回答の信頼性が低いことが指摘されている。信頼性という観点では、tax recordsのような政府系のデータの方が信頼できるという。これに加えて、調査では家族構造について尋ねることが寛容である。モデリングと推定に関するところは省略。全体的に、割と当たり前のことで情報共有に等しい。
Tach, L. (2015). Social Mobility in an Era of Family Instability and Complexity.The ANNALS of the American Academy of Political and Social Science, 657(1), 83-96.
Houtが延べ、Mareが強調したように、家族構造や社会移動にとって非常に重要な意味を持つ。しかし同時に、アメリカ、及び多くの先進諸国における家族は、この数十年の中で大きな変化の渦の中に巻き込まれている。筆者はアメリカを事例としながら、変化として離婚、子どもを持たない家庭、そして同棲の増加をあげており、特に離婚と同棲の増加は家族の不安定性(Familuy Instability)を助長しているとする。これは、家族の形態が多様化すること及び、子どもの社会かのプロセスが複雑になることを示している。このような事態に直面した階層研究者にとって必要なことは、いかにして、複雑化・不安定化する家族構造をどのようにして出身階級と到達階級を測定するかという問題、及びどのようにして非伝統的なタイプの家族が階級と関連するような性質を次世代に移転しているかを考慮する必要があるとする。自分からすると、割と当たり前なことをいっているだけだが、家族の多様化よりは複雑化の方が客観的な表現で好ましいと思った。アメリカにおける離婚と親との非同居、離別後の家族形成(serial pertnering)、multiple-pertner fertirity(女性が異なる二人以上のパートナーとの間に生まれた子どもを持つこと)が階層形成に与える影響についてのレビューはフォローしてなかったのでとても参考になる。
Potârcă, G., & Mills, M. (2015). Racial Preferences in Online Dating across European Countries. European Sociological Review, jcu093.
eDarlingというヨーロッパを中心に展開しているオンラインデーティングサイト のデータを使用して、欧州9カ国(ドイツ、スイス、オーストリア、スウェーデン、オランダ、フランス、スペイン、イタリア、ポーランド)を対象に、オンラインデーティングにおける人種選好についてのマルチレベル分析を行った論文。特に仮説めいたものはなく、どちらかというと、これまで先行研究の多くはアメリカの事例や、ヨーロッパの各国に基づいており、研究の意義をヨーロッパ内の多国間比較に置いている。例えば、移民の増加というヨーロッパ的課題はどの国にも少なからず言えるが、9カ国を用いる積極的な意義としては、言及されていないが恐らく比較を行う最後の理由としてあげられている、国ごとの統合政策の際などに注目しているのだろう。サンプリング方法は87万超のユーザーから、分析に使用する項目を全て答えている5.8万のサンプルの中から、ヨーロッパ系はランダムで、非ヨーロッパ系(アフリカ系、アジア系、アラブ系、インド系、ヒスパニック系)はその少なさからすべてを用いて分析をしている。従属変数は、パートナーとして選好する人種で、分析では、インド系とアジア系は広義のアジア系として統合されている(まあ東アジアの人がインド系と同じraceにされるのにはちょっとなあという感じもしなくもないですが)、またその他は除外され、計5カテゴリで多項ロジットを回している。探索的な分析から分かるのは、以下のようなことがらである。まず、従来の研究が指摘するように、人々は同じ人種の人を好む、人種間でハイラーキーがあることが分かった。各国の際も見られ、例えばもっとも人種的に多様なスイスでは、異人種選好が最も多く、人種的に均質なポーランド、イタリア、スペインでは逆の結果が見られている。また、非アラブ系のマイノリティは全体の人口に占めるその人種の割合が大きい社会の場合、強いヨーロッパ系への選好を持っていることが驚きとして指摘されている。
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