Sassler, S., & Lichter, D. T. (2020). Cohabitation and Marriage: Complexity and Diversity in Union‐Formation Patterns Journal of Marriage and Family, 82(1), 35-61.
来週の家族人口学セミナーの予習でJMF decade reviewをまた読み始めたところ、この論文が現在の関心を一番包括的にまとめてる気がしました。私の関心は家族人口学全般ですが、やはりメインはユニオン形成ですね。20年後にこういうレビューを書くのが目標です。
このレビューは(アメリカらしく)経済格差の拡大とユニオン形成の関係を強く押してるのですが、大恐慌の部分は色々な研究を生むことになったと、やや曖昧に書いています。アメリカに絞ってもう少し家族を広く捉えたもう一つのdecade reviewでは、大恐慌と結婚率の減少には関連がないと強く主張してて、溝を感じます。
Smock, P. J., & Schwartz, C. R. (2020). The demography of families: A review of patterns and change. Journal of Marriage and Family, 82(1), 9-34.
今回のコロナの件で、ますますマクロで見た労働市場の変化が家族形成に与える影響については研究が進む気がしますが、これはマクロ経済学者が絶対にゴリゴリ研究してると思うので、どれだけ手を出すかは迷うところがあります。
1本目の論文は国際比較にも言及してるのが有り難く、ヨーロッパに比べアメリカの方がユニオン形成とSESの関連がはっきりしていると言ってくれてるのは良かったです。恐らく、これは福祉が市場ベースなのが関係していると思います。同じロジックで、日本も(特に男性において)SESとユニオンの関連が強いでしょう。
アメリカの社会学者は基本アメリカを前提に議論するわけですが、アメリカもやはり非常に特異な社会なので(日本も同じくらい特異ですが)、大きな問い、フレームワークはアメリカの先行研究から持ってきても、コンパラティブな視点で(実際に比較するかは別として)研究を進めたいと改めて感じました。
そういう意味で私も広義の(ポリサイ的な意味での)比較社会学をやってるのかもしれないですが、社会学の比較は実際に比較しないといけないため、やや入りづらいところがあります。一応マインドはcomparative family demography / social stratificationを自称したいところですが。
1本目の論文は比較の視点で書いてくれているのはありがたいのですが、全て比較しているわけではなく、それはアメリカでしかまだ研究が積み重なっていない分野もレビューしているからだと思います。恐らくこの10年で蓄積されるのでしょうが、経済格差との関連でいえば、例えば大恐慌の影響が他の国でもなかったのか、あるいは福祉制度との関連でアメリカは(これは私の推測ですが)富や貯蓄、保険といった指標も家族形成と関連しているのですが、同様のことが他の市場ベースの福祉制度を持っている社会に適用されるのか、気になるところです。
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