September 23, 2019

コロキウム

今日の社会学部のコロキウムは、コロンビア大学のKhanさん(ウィスコンシンマディソン出身)がきてくれた。トークは彼がコロンビア大学と提携しているsexual assaultに関するプロジェクトで、すごく興味深かった。

本は来年に出るみたいだが、日本でも性的同意に関する活動を知人がしていたのを思い出した。ここまで包括的な調査はなかなか珍しいと思うので、日本の人も読むとフィードバックが多いと思う。

Sexual Citizens: A Landmark Study of Sex, Power, and Assault on Campus

このプロジェクトでは、コロンビア大学(および併設されているバーナードカレッジ)の学部生を対象にサンプリング調査を行い、ダイアリー方式で日々の生活時間と並びに性的行動についても情報を集めている。これと並行して、複数の調査者による参与観察と学生へのインタビューを行っている。

このプロジェクトでは、sexual assaultを合意のない性行為、ならびに性行為の試み、および身体的接触と定義している。先行研究ではsexual assaultの頻度などはわかっていたが、今回は一つの大学を対象にした調査ということで、よりそうしたsexual assaultが生じるコンテクストにも注目していた。例えば、sexual assaultが頻繁に生じる場所として寮やフラタニティ・ソロリティの施設があり、sexual assaultは見ず知らずの人よりもそうした場所で接触する友人・知人との間で生じやすいことが指摘されていた。あるいは、「どのように」sexual assaultを経験したかという質問については、身体的に拘束された形よりも、自分の意思を行使できない状況下で合意を伴わない性行為を経験する人が男女とも多かった。この自分の意思を行使できない状況下というのは、具体的にはアルコールやドラッグを摂取している状況で性行為が生じたことを示唆しているわけだが、例えばアルコール摂取には明確に人種差があり(白人・ヒスパニックの方が黒人・アジア系よりも飲酒傾向にある)、そのため前者のグループの方がsexual assaultを経験しやすいことになる。

また、重要な指摘として大学内で生じる初めてのsexual assaultの多くは、1年目の6ー10周目に生じていることがわかった。これは、学期が始まって落ち着いた頃、くらいの時期で、この結果は入学した段階からどのような状況でsexual assaultが生じやすいのかに関する教育が必要であることを示唆している。

質的インタビューからは、どのようにしてsexual assaultが生じたかに関する詳細な過程が明らかにされる。多くのケースで(特に女性で)「ノーと言えなかった」というロジックが言及されており、Khanさんはこうした性教育においてsexual assaultに対してノーと言えるためのエンパワメントが必要と指摘する。

sexual assaultは女性の方が経験する傾向にあるが、男性もケースは少ないながらも経験することが多い。しかも、男性が経験するsexual assaultは我々の予想とは異なり、6割が女性によるもの(残りの3割は男性、特にゲイの男性による行為)だったという。その一方で、女性が経験するsexual assaultの加害者の9割はヘテロ男性である。この分析の結果からわかるのは、一口にsexual assaultといっても、個人が経験するものは多様であり、既存研究はこの多様性をまぜこぜにして単純な政策提言をしてきたという点である。分析結果をもとに、Khanさんは、今後はこうしたsexual assaultの異質性に配慮した上で、早期からsexual assaultに合わないための教育を大学が率先して行う必要性を説いていた。

それと、(おそらく同僚のDiPreteらの研究を念頭に)男女の高等教育進学の逆転現象がカレッジライフにも大きなインパクトを持つことを指摘していて、そういう視点もあるのかと勉強になった。

夜は東アジア学部がやっている日本語ディナーに参加してきた。学部生で、才能豊かな人を見ると心躍る年齢になってしまった。

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