February 15, 2016

不平等の蓄積過程に関する分析枠組み(途中)

Cheng, Siwei,  2014, "A Life Course Trajectory Framework for Understanding the Intracohort Pattern of Wage Inequality" AJS.


この論文では、一つのコーホート内における賃金の不平等(wage inequality)の要因を解明するための分析枠組みの提示、数学的な定式化、そしてデータに基づく検証を行っている。

筆者によれば、階層研究にとって重要な賃金格差は二つの方向から検討されてきた。
第一が、クロスセクショナルな変化、例えば1950年と2000年の間の賃金格差を比較するもの、第二がコーホート間比較、例えば1990年時点の50年出生コーホートと60年出生コーホートを比較するものである。筆者は、こうした諸研究では、個人の賃金を1時点でしか観察しておらず、ライフコースにわたって賃金がどう変化するのかというプロセスを見落としていたという。この結果として、これまでの研究はコーホート内でどのように不平等が生成されるかという視点に基づく研究が蓄積されてこなかった。

こうした研究の欠落にもかかわらず、コーホート内の不平等を検討することには三つの意義があると筆者は指摘する。第一が社会学的な意義に関するもので、マクロな社会現象が生じさせるミクロなメカニズムの過程が、この研究によって明らかになるという。第二がライフコース研究に対するもので、コーホート内の格差研究は、個人の不平等がライフコースを通じてどのように形成されていくかという経験的知見を提供する。第三が、近年の経済的不安定性の上昇に対する社会的な関心に応えるものである。

DiPrete and Erich (2006)などのように、これまで記述的なアイデアと検証されていない仮説は提示されてきたが、コーホート内の格差を包括的に扱った研究はなかったという。その理由を分析の枠組みの欠如に求める筆者は、以下の三つの要素にコーホート内賃金格差の要因を分解して議論を進める。

第一が、ランダム変化 (Random Variability Property)である。
第二が、移動過程の異質性(Trajectory Heterogeneity Property)である。
第三が、有利さの蓄積(Cumulative Advantage Property)である。

(続く。。。)

No comments:

Post a Comment