メモ:佐藤香(2004)「社会移動の歴史社会学」
戦後日本の社会移動の歴史社会学的研究。具体的にいうと、個人の収入を得る方法(仕事)を伝統セクターと近代セクターに大別し、これを日本的な文脈に落とし込んで生業(なりわい)と職業の二つが、近代化、教育拡大とどのような関係を持ちながら衰退・静聴していったかを論じている。使用するデータはSSM65年が主で、その理由としては、地域移動の変数が多くある点にある。この本では、地方から都市(東京)への移住が職業移動だったのか、学歴移動だったのかに焦点を当てている。特に、移動するかどうかに離農するかどうかをかけ合わせると、在村在農・離村在農・在村離農・離村離農の4パターンが考えられるが、これが教育の拡大とどのような関係にあったかを論じている。
佐藤の指摘で重要だと思われるのは、戦後急速に解体していった農業層を尻目に、その勢力を維持していた自営層がどうして存続し得たのかについて答えている点にあると思われる。この問題関心は、石田(2000)が指摘した論点とも関係している。簡潔に答えると、それは生業と職業の世界が前者から後者に移行するのではなく、両者に相互関係があったということになる。すなわち、いったん職業の世界に入っていても、一定の学歴をもった人にとっては東京で自営業になることが一つの地位達成の道であったのだ。
主張自体に反論することも無いのだが、この本では、都市に流出するのが農家の次三男だったという仮説を検討し、否定的に評価している。先行研究としてあげるのは主に野尻などの農村離村研究や、ドーアや安田の長男規範論争である。これに関しては、今までの研究を批判しているが,これらは農村離村の研究,すなわち流出の側面を扱っているのに対し,佐藤の議論の焦点は東京への流入の議論なので、若干議論のずれを感じる。東京への流入者の大半が農家の次三男ではなくとも,離村の大半は次三男であり,今までの研究は後者に焦点を置いていたのではないかと思うのだが,どうだろうか。
コメントには、生業から職業への移行を単に近代化や教育拡大の中に位置づけるだけではなく,家族を一つの世帯・経営体として見なして、その中で職業へ移行するしないの条件が(特に自営層の中で)異なってくるという指摘などがあった。
メモ。
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