August 24, 2012

今考えていること.


 卒論を書くにあたっていくつかのクライテリアがある.
 ・社会学理論ではなく,仮説提示型の実証研究
 ・社会の公共性に関係するもの,具体的には社会的資源の不平等分配の問題とか
 ・単なる政策科学に終わらない研究,自分なりの社会学っぽい色を出したい.
 ・20年後に読んでもそれなりに面白いテーマ,要は近視眼的じゃないもの.

 最後の基準に関して少し説明を加えると,現状分析→仮説提示→結論,政策提言という一連の論文を書いても,結語で書いたことが20年後に読んだとき,古くささしか感じないようなものは書きたくないということ.時代に拘束されるのは承知だが,誰がいつ読んでも面白いものを書きたい.

 色々考えて,テーマを男女間の社会的資源の不平等問題,としている.

 1986年の男女雇用機会均等法以来,日本も男女共同参画社会の名の下,男女の法的社会的な平等が担保されてきている.
 もちろん,男女間の不均衡・不平等はまだ至る所に見られる,男性の大学進学率は未だに女性のそれより高いし,数は少なくなってきてはいるが,女性は短大という往々に女性らしさを強調された学歴トラックを歩みがちだ.これは,不均衡であって不平等ではないと思う.考え方にもよるが,進路は男女が自発的に選んでいると仮定すれば,底には不平等は生じない.望まない区別を不平等と考えている.

 次は男女賃金の格差.これは不平等.男性の賃金を100とすると女性の賃金は70くらい.入社一年目から賃金格差があるところも少なくない.男女同一労働同一賃金の必要はいわずもがなだけど,賃金格差から何か書こうとも思えない.また,男性=総合職,女性=一般職の労働自体に違いがあるケースもあり,これはちと複雑.

 次は家庭内における男女の格差.いっこうに増えない夫の家事労働時間は,主に男性の長時間労働が原因じゃないかと言われてきた.私もそう思う.そうであるが故に,労働市場の問題と結びつくが,これに関しては性別役割分業観の影響も少なくないと思う.

 企業福利も減り,男性に安定的な雇用が提供されなくなった現在,女性が専業主婦として家で家事をしているのは,世帯としてみたときに大きなリスク要因になっているのは言うまでもない.同時に,企業の側も女性の消費意欲を喚起する,また純粋労働力として女性の就業を必要としている.以上から,女性の就業が勧められるのは時代の必然とも言える.それ自体に,私は特にどうも思わない.もちろん,男女が互いに対等な地位に立った上で労働市場にたてることが前提となっている.(本当に平等というのは不可能だろうけど)

 こうして考えていくと,現在でも男女の目に見える不平等は至る所にあるんだろうなと感じる.ただ,観察可能な不平等に注目するのもいいけど,個人的には当の男性と女性がこうした現状をどう捉えているかの方に関心がある.

 話をひっくり返すようだが,女性たちが現状に不満を持っていなければ,それはそれで一つの秩序として成り立っているんだからいいんじゃないかと思ったりする.フェミニストは,そうした規範,例えば専業主婦願望とか,それらは家父長制による男性支配の結果だとか一喝するんだろうが,少し反省的に考えると,女性の全員が全員そうした意見に感化されるのは考えにくい.専業主婦が夢の時代に生きてた人にとっちゃ,それが封建的な「家」から抜け出して愛する夫との情緒的な関係のもとに築かれた象徴だからだ.それは「家」からの自由である限り,本人にとって望ましいものだろうから,何も言えないと思う.

 ただ,ことはそう簡単には運ばない,男性の家事育児不参加を不満に思う女性は多い,男性の長時間労働に関係の停滞を感じる女性は多い.あくまで,全体としてみたときに一定数いるという話なので,すぐこうすべきとは言えないのだが,言いたいことは現秩序の中に安住する人も入れば,不満を持つ人もいるということ,それは階層によっても,教育年数によっても異なるだろう.

 つまり,人々の価値規範なんてものは非常に流動的で,時代時代で変わっていくものだろう.つい三十年前まで一億総中流なんてまことしやかな言説が社会的事実として流布したかと思えば,今はやれ格差社会だやれ貧困だと,時代がすっかり変わってしまった.人々の意識なんてものは,社会構造にも規定されるが,それ自体ふわふわ動いていくものくらいに考えた方がいいのだろうと思う.

 人々が,自由を感じているか,公平感を感じているか,それは結構大事なことなんだろうと思う.財政が逼迫する中でばらまきの社会保障政策なんて不可能になった時代,ゼロサムゲームと似ている構図の中で,私たちは限りある社会的な資源を分け合っていかなくてはならない.要は再分配だが,結果として不満を持つ人がいるだろう.(生活保護バッシングを見ていると強く感じる)

 資源が限られている以上,分け方が大切になってくる.どう分けたらちょうどいいかの一つの目安として,人々が不平不満を持たない均衡点を探すことは必要になってくると思う.

 一応,その延長として,ジェンダーと結びつける感じで,先のテーマを選ぶことになった.男女の公平感は何によって規定されているか,それを若年層,結婚適齢期の層,子どもを育て終わった層にそれぞれ聞いたりアンケートとったりして,性別と年代によって,何が公平感を規定するか,一応その方向で行こうと思っている.







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