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August 24, 2012

内藤準,2011,自由の規定要因とジェンダー不平等,武川正吾・白波瀬佐和子編『格差社会の福祉と意識』,143-168


内藤準,2011,自由の規定要因とジェンダー不平等,武川正吾・白波瀬佐和子編『格差社会の福祉と意識』,143-168

1.はじめに
自由:人生の豊かさの条件
   望ましい社会の条件
    -ある種の財として
    -責任と結びつく概念
本稿の議論の背景:階層を「世帯」で測るか「個人」で測るか
         生活満足度や階層帰属意識とジェンダーの関係

2.背景と問題
世帯の代表者の職業で社会階層を測る/ライフチャンスの包括的な指標として
but, このような代表者の職業としての「世帯」単位への批判(Acker, 1973)
世帯を単位→男女は同じ社会階層に 世帯を個人→共有されるライフチャンスを見逃す.

白波瀬(2005)や橋本(1998)らによる単位の議論
→問題領域によって分けるのが妥当

世帯内の個人ではなく,社会の中の個人という文脈で個人単位の資源配分について考える意味とは?

もう一つの問題:ジェンダーと生活満足度,階層帰属意識
収入や学歴が高い程、生活に満足し,階層を高いと感じる
but, 男性が女性よりも満足度が高い訳でもない.
→これらは世帯年収や配偶者の学歴に規定されている.
→これらは世帯単位で決まる「暮らし向き」と考えられる.
But, この暮らし向きに注目するばかりでは,男女間の不平等な資源の分配に目を背けることになる.

男女の非対称性の代表例=選択の困難としての「家庭と仕事の両立」(江原,1985
「性別や家族や職業を巡る社会規範が絡み合うなかで,たとえ強制される訳ではなくとも選択の自由が実質的な意味を持つとは言えないような状況が男女間に不平等に分配されているという可能性」(149)が考えられる.


3.主観的自由の指標と関連する先行研究
「生き方の選択の自由」=「主観的自由」
質問事項:「自分の生き方や暮らしは,おもに自分の考えで決めることができますか?」に自分の生活はどれだけ当てはまっているか.

先行研究の紹介:省略

主観的自由の定義:状況に関する人々自身の報告(心理学的な性質から逃れる

4.分析 省略

5.結論—まとめと考察—
主観的自由:世帯年収ではなく「本人年収」に規定される.
世帯単位の暮らし向き以外にも,社会の中で生き方を選ぶ個人の自由も現代社会の重要な価値
→このような社会的資源がジェンダー間で不平等に分配されている.
 結婚や出産により再就職となり,本人年収が低くなりやすい社会構造や社会規範は女性にとって生き方の自由を困難にする.

今考えていること.


 卒論を書くにあたっていくつかのクライテリアがある.
 ・社会学理論ではなく,仮説提示型の実証研究
 ・社会の公共性に関係するもの,具体的には社会的資源の不平等分配の問題とか
 ・単なる政策科学に終わらない研究,自分なりの社会学っぽい色を出したい.
 ・20年後に読んでもそれなりに面白いテーマ,要は近視眼的じゃないもの.

 最後の基準に関して少し説明を加えると,現状分析→仮説提示→結論,政策提言という一連の論文を書いても,結語で書いたことが20年後に読んだとき,古くささしか感じないようなものは書きたくないということ.時代に拘束されるのは承知だが,誰がいつ読んでも面白いものを書きたい.

 色々考えて,テーマを男女間の社会的資源の不平等問題,としている.

 1986年の男女雇用機会均等法以来,日本も男女共同参画社会の名の下,男女の法的社会的な平等が担保されてきている.
 もちろん,男女間の不均衡・不平等はまだ至る所に見られる,男性の大学進学率は未だに女性のそれより高いし,数は少なくなってきてはいるが,女性は短大という往々に女性らしさを強調された学歴トラックを歩みがちだ.これは,不均衡であって不平等ではないと思う.考え方にもよるが,進路は男女が自発的に選んでいると仮定すれば,底には不平等は生じない.望まない区別を不平等と考えている.

 次は男女賃金の格差.これは不平等.男性の賃金を100とすると女性の賃金は70くらい.入社一年目から賃金格差があるところも少なくない.男女同一労働同一賃金の必要はいわずもがなだけど,賃金格差から何か書こうとも思えない.また,男性=総合職,女性=一般職の労働自体に違いがあるケースもあり,これはちと複雑.

 次は家庭内における男女の格差.いっこうに増えない夫の家事労働時間は,主に男性の長時間労働が原因じゃないかと言われてきた.私もそう思う.そうであるが故に,労働市場の問題と結びつくが,これに関しては性別役割分業観の影響も少なくないと思う.

 企業福利も減り,男性に安定的な雇用が提供されなくなった現在,女性が専業主婦として家で家事をしているのは,世帯としてみたときに大きなリスク要因になっているのは言うまでもない.同時に,企業の側も女性の消費意欲を喚起する,また純粋労働力として女性の就業を必要としている.以上から,女性の就業が勧められるのは時代の必然とも言える.それ自体に,私は特にどうも思わない.もちろん,男女が互いに対等な地位に立った上で労働市場にたてることが前提となっている.(本当に平等というのは不可能だろうけど)

 こうして考えていくと,現在でも男女の目に見える不平等は至る所にあるんだろうなと感じる.ただ,観察可能な不平等に注目するのもいいけど,個人的には当の男性と女性がこうした現状をどう捉えているかの方に関心がある.

 話をひっくり返すようだが,女性たちが現状に不満を持っていなければ,それはそれで一つの秩序として成り立っているんだからいいんじゃないかと思ったりする.フェミニストは,そうした規範,例えば専業主婦願望とか,それらは家父長制による男性支配の結果だとか一喝するんだろうが,少し反省的に考えると,女性の全員が全員そうした意見に感化されるのは考えにくい.専業主婦が夢の時代に生きてた人にとっちゃ,それが封建的な「家」から抜け出して愛する夫との情緒的な関係のもとに築かれた象徴だからだ.それは「家」からの自由である限り,本人にとって望ましいものだろうから,何も言えないと思う.

 ただ,ことはそう簡単には運ばない,男性の家事育児不参加を不満に思う女性は多い,男性の長時間労働に関係の停滞を感じる女性は多い.あくまで,全体としてみたときに一定数いるという話なので,すぐこうすべきとは言えないのだが,言いたいことは現秩序の中に安住する人も入れば,不満を持つ人もいるということ,それは階層によっても,教育年数によっても異なるだろう.

 つまり,人々の価値規範なんてものは非常に流動的で,時代時代で変わっていくものだろう.つい三十年前まで一億総中流なんてまことしやかな言説が社会的事実として流布したかと思えば,今はやれ格差社会だやれ貧困だと,時代がすっかり変わってしまった.人々の意識なんてものは,社会構造にも規定されるが,それ自体ふわふわ動いていくものくらいに考えた方がいいのだろうと思う.

 人々が,自由を感じているか,公平感を感じているか,それは結構大事なことなんだろうと思う.財政が逼迫する中でばらまきの社会保障政策なんて不可能になった時代,ゼロサムゲームと似ている構図の中で,私たちは限りある社会的な資源を分け合っていかなくてはならない.要は再分配だが,結果として不満を持つ人がいるだろう.(生活保護バッシングを見ていると強く感じる)

 資源が限られている以上,分け方が大切になってくる.どう分けたらちょうどいいかの一つの目安として,人々が不平不満を持たない均衡点を探すことは必要になってくると思う.

 一応,その延長として,ジェンダーと結びつける感じで,先のテーマを選ぶことになった.男女の公平感は何によって規定されているか,それを若年層,結婚適齢期の層,子どもを育て終わった層にそれぞれ聞いたりアンケートとったりして,性別と年代によって,何が公平感を規定するか,一応その方向で行こうと思っている.







岩間暁子「女性の就業行動と家族のゆくえ」レジュメ


岩間暁子,2008,女性の就業行動と家族のゆくえ,東京大学出版会

レジュメ

序章 「標準家族」の揺らぎ
「標準家族」夫婦と子ども二人から構成され,男性が稼得役割,女性がケア役割を担う性別役割分業の家族.
「標準家族」のリスク化:男性一般に雇用が提供されない,企業福利[1]の減少
少子高齢化による労働力不足,企業→女性による消費が促進される必要
男女雇用機会均等法(1986):女性の就業意欲向上の契機
このような社会経済的変化の中での家族の変容を捉えるには「どのような女性が働いているのか,そして,女性が就業することによって家族の姿はどのように変化するのかを検討する必要がある.」(3)
注目点① 社会階層:夫の雇用や収入に影響を受けて女性の家計補助は影響される,及び格差社会の中で中間層が解体していく,また女性自体の階層分化を捉えるため.
注目点② ジェンダー:日本社会では家族と労働市場におけるジェンダー構造は互いに関係しあって成立しているため(大沢,20022007).

分析テーマ
(1)女性の就業の規定要因(家族と社会階層)
(2)女性の就業と家事分担の関係
(3)女性の就業と夫婦の意思決定パターンの関係
(4)女性の就業と夫婦の出生意欲の関係

  階層研究と女性
女性の就業率増加→個人主義アプローチ登場but家庭内のケア役割を考慮せず
助成のおかれている構造的文脈を考慮しつつ,就業と家庭生活の相互連関性を検討する新しいタイプの階層研究が登場(Blosfeld and Drobnic, eds, 2001; Crompton, 2006))
  家族社会学と女性
家族と社会構造を結びつける研究は少ない
戦前の「家」制度との比較から近代家族を民主主義的で望ましいとする風潮
but, 近代家族批判の登場(牟田,1998など)
社会階層が家族に与える影響に関する研究や仮説に基づいて計量分析を行うといった「仮説検証」型の研究は少ない
→本書の位置づけ:階層研究と家族社会学の架橋を目指す計量社会学的研究.

第一章 階層構造の変化と家族
戦後の持続的な経済成長→男性に安定的な雇用が提供され,「標準家族」に沿った社会保障が成立→社会階層の平等化
but, 1970-男性の安定的な雇用の困難 1960-フェミニズム登場,女性の高等教育進出→女性の就業率上昇
家族社会学:このような状況で変化する家族内部の親密性にのみ注目
SSM調査の歴史(省略)富永(1979)や直井優(1990)等に詳しい.

その後,階層研究における女性,及び家族研究における女性の先行研究が,欧米,日本とレビューされている.





[1] 橘木,2005,企業福利の撤退