August 12, 2012

ジェンダーとペアレントクラシー(中西祐子)


中西祐子, 2012, 「教育におけるジェンダーとペアレントクラシー」, 宮島・杉原・本田編『公正な社会とは』, 人文書院, 100-117

1. ペアレントクラシーの時代の到来
教育達成と家庭環境の問題への注目
ペアレントクラシー(Brown, 1990) 子供の教育達成には本人の努力よりも親の知識や教育に対する熱心さの方が重要,「親の判断」如何により「子どもの進路が決まる」
学歴獲得競争への「参加自由化」
義務教育にまで見られる学校選択制「選択の多様化」

「こうした『自由』で『多様』な社会を子ども一人の力で乗り切ることは果たして可能なのだろうかというと、答えは『否』だろう。こうした時代の中で子どもの人生に対する親の一定以上の関心と知識の有無というものが子ども自身の未来に少なからぬ影響を持ち始めているのである」(101)

but, 四年制大学進学率→男性/女性 56.4/45.2 (2010)

「しかし、同じ親に育てられたからと言って,子どもたちが親から受ける教育期待や働きかけは必ずしも同一ではない。(中略)ペアレントクラシー論もこの意味において、従来の多くの階層と教育研究と同様に、同一世帯内において行われる子どもへの働きかけは同一であるという前提に立って議論が組み立てられてきたといえるのである。」(102)

2. 親からの期待の男女差
子どものジェンダー差により学歴達成期待が異なる

3. 家庭の階層によって男女の子どもの教育に対する期待の違いはどのように生じるのか
低収入世帯層→教育投資を限定的に投下する必要,娘に対する低い大学進学期待(経済合理的理由)

4. 男女の子どもに対する学歴期待の違いはどこから生じるか
学歴期待の違いの背景(理由)
娘の大学進学を真っ向から否定した親はいないが,息子と娘双方を持つ親の場合,無意識に両者に異なる期待を抱いている.

インタビュー調査の結果
・経済合理性による選択(女性の大卒資格による見返りは少ないと考える親)
・本人の望む選択という正当化(息子→家庭の稼ぎ手として大卒資格を期待,娘→「好きなことをすればよい」)
「娘たちが『本人の望む選択』を推奨される背景には彼女たちが決して一家の稼ぎ手としては期待されないことが大前提としてある」(111)
・自宅を離れるというハードル(娘を下宿させてまで進学させることへの躊躇←身体の管理,経済的コスト,ケア役割の期待)
・娘への相対的無関心

5. ジェンダーとペアレントクラシー
意図的に子どもたちのジェンダー差により異なる処遇を与えようとしている訳ではない
but, 追求していくと,娘と息子に異なるレベルの期待をかけている.
→家庭内部における隠れたメカニズムの解明が求められる.

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