December 21, 2020

今年の論文10選

日本に帰国するとしょうもない深夜番組を見ることが一つの楽しみなのですが、関ジャムというジャニーズが司会をしている音楽?番組で毎年音楽プロデューサーや作詞家が今年注目の曲ベスト10みたいなのを紹介してて、例えばそれを見てzutomayo(ずっと真夜中でいいのに)の存在を知ったりして役に立った記憶があります。

私の選評が役に立つとは思いませんが、少なくとも自分が当時何を考えてたのかの振り返りにはなると思い、今年も簡単に今年初めて読んで面白かった論文をジャンル別に合計10本、紹介しています。

教育

Bol, Thijs, and Herman G. van de Werfhorst. 2013. “Educational Systems and the Trade-Off between Labor Market Allocation and Equality of Educational Opportunity.” Comparative Education Review 57(2):285–308. doi: 10.1086/669122.

今年は教育のトラッキングの文献もいくつか読んでいました。アメリカの文献を読むと、多くの研究がアメリカの中等教育が格差の維持拡大に寄与しているという主張をしています。確かに、アメリカの公立学校は住んでる地域の所得水準によって予算が決まるところがあり、学校の質と居住地域があからさまに関連しているので人種や所得による居住の分離が問題になっているくらいなので、そういった主張になるのもうなづけます。

しかし、比較教育の視点で見ると、アメリカはいわゆるcomprehensive型、つまり早期に選抜をせずに遅くまで一般教育をする制度になっています。これに対して、早期に専門を決めるタイプの制度はドイツ語圏で典型的に見られるもので、こうした早期選抜の方が親の影響が強く出るため結果的に教育制度が世代間の格差の連鎖に与える影響が強くなります。一方で、こうした早期の選抜によるメリットもあり、具体的には労働市場に特定のスキルを持った人材供給をしやすくなる点が挙げられます。

したがって、早期選抜の教育システムの方が、学校から労働市場への移行がスムーズになり、若年失業率なども小さくなると考えられます。この論文では国レベルの分析で上記のトレードオフを実証しているという意味では非常にシンプルですが、単一事例だと見逃されがちな教育制度に違いの重要性を綺麗に示している点が印象的で、国際比較研究に限らず、重要な文献だと思います。

Park, Hyunjoon, Jere R. Behrman, and Jaesung Choi. 2013. “Causal Effects of Single-Sex Schools on College Entrance Exams and College Attendance: Random Assignment in Seoul High Schools.” Demography 50(2):447–69. doi: 10.1007/s13524-012-0157-1.

高校別東大への入学者数のランキングを見ると、軒並み有名中高一貫私立の男子校が占め、中学受験時には同じ偏差値だった女子校からの入学者がそこまで多くない話の延長で、男女の共学、別学はどういうインパクトがあるのか気になっていたら、この論文を見つけました。研究では、ソウルの高校で起こった高校の生徒をランダムに別学か共学かに割り当てた自然実験を利用し、共学/別学が教育アウトカムに与える影響を分析しています。

結果は、男女とも別学の方が大学進学率にはポジティブな効果を持つことがわかりました。ただし、著者らの別の論文では、同様のデータを用いてSTEM科目への関心を検討したところ、男子校の場合には共学に比べて男子がSTEMにより興味を持つ一方で、そうした効果は女子校ではみられなかった。専攻の選択まで踏まえると、男女別学が教育的なアウトカムでみてベターなのかは議論がある気がします。リサーチデザインとしても秀逸で、かつアクチュアルな問題に対しても示唆があるので好きな論文です。

Ryan, R. M., A. Kalil, K. M. Ziol-Guest, and C. Padilla. 2016. “Socioeconomic Gaps in Parents Discipline Strategies From 1988 to 2011.” Pediatrics 138(6):e20160720–e20160720. doi: 10.1542/peds.2016-0720.

アメリカではdiverging destiniesの議論に代表されるように、親学歴でみたachievement gapが拡大しているという話が非常にホットです(もっとも、格差の拡大はアメリカに限ったことではなく世界的に見られるトレンドではあります、Chmielewski 2019)。その一つのメカニズムとして親の学歴による育児時間の格差が拡大している点が指摘されています(Kalil and Ryan 2020)。ロジックとしては、学歴によるリターンの差が拡大すると、中産階級の親たちは子どもへの投資へのインセンティブが強まる、という説明が経済学者から提起されています(Doepke and Zilibotti 2019)。

育児時間の格差は拡大していますが、子どもに対する親の関与は量(時間)だけではなく質(育児スタイル)も異なり、それが格差の維持、拡大に寄与しているという点は重要です。アネット・ラローの階級間で異なるparenting styleの研究を嚆矢として、多くの研究が育児スタイルとその後の認知的アウトカム、教育達成への影響を検討しています(e.g. Chan and Koo 2011)。

これまでの先行研究では、この育児の質的側面と親階層の関連も、時代とともに変化しているのかが明らかではありませんでした。この論文では、子どもが誤った行動をしたときに叩くといったしつけをするのか、それともなぜそれが誤っているのかを説明するのか、育児方針の階層差およびアメリカにおけるトレンドを検討しています。

前者は典型的にはauthoritarianという身体的なしつけを伴う古いタイプの育児ですが、後者は子どもの自律的な思考を養わせるauthoritativeな育児とされます(毎回この用語が超ややこしい)。分析の結果、前者のような身体的なしつけは減少しているが、所得階層による差は維持されたままということで、育児時間とは異なる結果になっているようです。

育児時間に比べると、質的な育児の側面は時間的・空間的に比較が難しいのがネックですが、親が子育てにどのように関与し、それが格差の維持、拡大につながっているかを検討する際には見逃せない点でもあり、引き続き注目していきたいと思います。

Fishman, Samuel H. forthcoming. “Educational Mobility among the Children of Asian American Immigrants.” American Journal of Sociology 58.

アジア系アメリカ人、特に1.5から2世の教育達成は非常に高く、親階層の影響を受けない点がこれまで一つのパラドックスとして知られてきました。近年のアジア系移民の親子を対象にした質的研究から、親の出身国における文化的な要因(東アジア系の子どもに顕著な高学歴志向、および親のプレッシャー)の存在が指摘されてきました。この文化要因については分析がまだ十分ではなく、この研究では人種・エスニシティごとに親階層の効果がどれくらい異なるのか、およびその関連(のなさ)は文化的要因によってどれくらい説明されるのかを検討しています。

分析の結果、白人2.5世代に比べ、アジア系1.5-2世は親階層の影響をほとんど受けないことがわかりました。つまり、親の学歴が高くても低くても、その子どもは同じような教育達成をする傾向にあります。このメカニズムとして論文では、親からのプレッシャーおよび本人の教育期待の効果を検証しており、アジア系は出身階層に限らず両者が高く、これが他の人種・エスニシティとの差を一部説明するとしています。

この知見は、アジア系アメリカ人研究としてももちろん重要ですが、アメリカにいる1.5世のアジア系という非常に限られた集団ではありながらも、親階層がほとんど全く子どもの教育達成に影響しないという現象は、地位達成理論ではなかなか説明できません。教育期待などの社会心理学的な要因の重要性を指摘したSewellらの研究も、そうした期待が親学歴によって異なると考えるため、親階層に関わらずに期待が高いアジア系の存在は、理論的にも非常に重要だと思います。


ゲノム

Rimfeld, Kaili, Eva Krapohl, Maciej Trzaskowski, Jonathan R. I. Coleman, Saskia Selzam, Philip S. Dale, Tonu Esko, Andres Metspalu, and Robert Plomin. 2018. “Genetic Influence on Social Outcomes during and after the Soviet Era in Estonia.” Nature Human Behaviour 2(4):269–75. doi: 10.1038/s41562-018-0332-5.

論争は尽きないところはありますが、差し当たり集団間の遺伝子の分散から教育年数を予測して求めるPGSは、教育年数を予測する遺伝的要因(それが知能なのかIQなのかはたまた遺伝に見えて遺伝ではない要因なのか)を部分的に含んでいるという主張はそこまで過激ではないと思います。この論文ではエストニアの事例を持ち出し、共産主義レジーム前後で教育年数を予測する遺伝要因の予測力が上昇したことを明らかにしています。解釈としては、共産主義下では縁故による雇用などが盛んで、学歴の相対的重要性が低かった一方で、共産主義が崩壊すると労働市場における学歴の重要性が増したから、という説明になります。この研究は遺伝要因が教育達成に与える影響を検証するために、共産主義体制の崩壊を外生的なイベントに持ってきている点が非常にクールだと思いました。

ちなみに、最近出た研究では国ごとのeducation PGSでみた親子のheritabilityとeducation mobilityの相関を検討しており、その結果は正、つまり社会移動のチャンスに開かれている開放的な社会ほど教育年数を予測する遺伝的特徴の親子の相関は高くなります。観察される学歴で見た移動が大きくなると、非遺伝要因であるsocial inheritanceが少なくなるため、社会が近代化すると遺伝子の相関が高くなるという解釈のようです。エストニアの事例と似た結論だと思います。

Silventoinen, Karri, Aline Jelenkovic, Reijo Sund, Antti Latvala, Chika Honda, Fujio Inui, Rie Tomizawa, Mikio Watanabe, Norio Sakai, Esther Rebato, Andreas Busjahn, Jessica Tyler, John L. Hopper, Juan R. Ordoñana, Juan F. Sánchez-Romera, Lucia Colodro-Conde, Lucas Calais-Ferreira, Vinicius C. Oliveira, Paulo H. Ferreira, Emanuela Medda, Lorenza Nisticò, Virgilia Toccaceli, Catherine A. Derom, Robert F. Vlietinck, Ruth J. F. Loos, Sisira H. Siribaddana, Matthew Hotopf, Athula Sumathipala, Fruhling Rijsdijk, Glen E. Duncan, Dedra Buchwald, Per Tynelius, Finn Rasmussen, Qihua Tan, Dongfeng Zhang, Zengchang Pang, Patrik K. E. Magnusson, Nancy L. Pedersen, Anna K. Dahl Aslan, Amie E. Hwang, Thomas M. Mack, Robert F. Krueger, Matt McGue, Shandell Pahlen, Ingunn Brandt, Thomas S. Nilsen, Jennifer R. Harris, Nicholas G. Martin, Sarah E. Medland, Grant W. Montgomery, Gonneke Willemsen, Meike Bartels, Catharina E. M. van Beijsterveldt, Carol E. Franz, William S. Kremen, Michael J. Lyons, Judy L. Silberg, Hermine H. Maes, Christian Kandler, Tracy L. Nelson, Keith E. Whitfield, Robin P. Corley, Brooke M. Huibregtse, Margaret Gatz, David A. Butler, Adam D. Tarnoki, David L. Tarnoki, Hang A. Park, Jooyeon Lee, Soo Ji Lee, Joohon Sung, Yoshie Yokoyama, Thorkild I. A. Sørensen, Dorret I. Boomsma, and Jaakko Kaprio. 2020. “Genetic and Environmental Variation in Educational Attainment: An Individual-Based Analysis of 28 Twin Cohorts.” Scientific Reports 10(1). doi: 10.1038/s41598-020-69526-6.

世界各国の双子データを用いて教育達成の遺伝率(heritability)を求めた研究。どの国もおよそ0.3から0.4の関連があることがわかりましたが、二つのコーホートで比べると減少傾向にある、つまり遺伝的には親子の教育の世代間連鎖は弱まっているようです。education PGSを知能などのプロキシとして見做せば、近代化論に従うと近年のコーホートほどheirtabilityが増し、同類婚も増えると予想するはずですが(マイケル・ヤングが描いたディストピアであり、ベルカーブ論争の主張)、実際にはそんなことはなく、教育の遺伝率は減少し、遺伝子レベルの同類婚は一定か、やや減少傾向です。

この研究は著者の数からもわかるように非常に大規模な双子の国際比較研究ですが、比較の部分で面白かったのは、有意ではないものの遺伝率は北米、ヨーロッパ(0.4)よりも東アジア(0.3)の方が低く、この結果自体はやや直感に反する気がしました。というのも、著者達も述べるように、メリトクラティックな社会ほど教育の遺伝率は高くなると予想され、東アジアの方が試験による選抜を考えるとメリトクラティックな社会だと思われるからです。学歴選抜のintensityが強い東アジア社会の方が社会階層によらず多くの子どもが学校で勉強する機会に恵まれているのかもしれませんが、本文では特になぜの説明はありません。

Harden, K. Paige, Benjamin W. Domingue, Daniel W. Belsky, Jason D. Boardman, Robert Crosnoe, Margherita Malanchini, Michel Nivard, Elliot M. Tucker-Drob, and Kathleen Mullan Harris. 2020. “Genetic Associations with Mathematics Tracking and Persistence in Secondary School.” Npj Science of Learning 5(1). doi: 10.1038/s41539-020-0060-2.

これまでのeducation PGSを用いた研究の関心は教育年数、専門的にいうとverticalな側面だけだったのですが、この研究ではアメリカのAdd Healthデータを使って中等教育段階の数学科目の選択に対するeducation PGSの効果を検討しています。さもありなんという話ではありますが、education PGSが高い子どもほどアドバンスドな数学科目を取る傾向にあり、逆に低い子どもはドロップアウトしやすいことがわかりました。アメリカの中等教育では、基本的にいつでもどのコースもとって良いのですが、難しいコース(大学入学程度、AP)をとったり、4 point scaleではなく5 point scaleのhonorsのコースを履修することでGPAが上がり、大学進学に有利に働くとされているため、中等教育段階においてもトラッキングを通じて遺伝的要因が教育達成に影響していることが示唆されます。ただし、学校に通う子どもの母親の教育年数で学校の質を指標化すると、母親の平均教育年数が高い学校に通う子どもほど、低いPGSによるドロップアウトのリスクが減ることがわかりました。一種のgene environment interactionの話です。

教育社会学では、verticalな教育年数に対比して同じ教育段階の質的な違い(専攻や学校の選抜度)はhorizontal stratificationと呼ばれるのですが、先述の通り後者に注目したゲノム関連の研究はまだまだ少ない印象です。自分もこの話で二本論文を書いていますが、来年中には掲載したいなと思っています。これに限らず、最近の研究ではeducation PGSと親の育児も関連するという知見もあり(Wertz et al. 2019)、徐々にどのようなメカニズムで遺伝要因が世代間の地位の連鎖に影響するのか、研究が進んでいます。まだ分野として成熟しきってないので、ややインディーズ感のある論文ですが今後ホットになると思います。


ジェンダー

Hook, Jennifer L., and Eunjeong Paek. 2020. “A Stalled Revolution? Change in Women’s Labor Force Participation during Child‐Rearing Years, Europe and the United States 1996–2016.” Population and Development Review. doi: 10.1111/padr.12364.

この論文では、欧米18カ国の過去20年の女性の就業参加の増加要因をKitagata-Blinder-Oaxaca分解を用いて検討しています。分析の結果、女性の就業率の上昇は、もともと就業参加しやすい高学歴女性が増加したという分布の変化によっておおよそ説明できることがまず分かりました。とだけいうと何がすごいのってなるかもしれませんが、データセットを作るまでに相当苦労するタイプの研究でしょう。

次に、学歴や結婚している人の分布の変化以外の部分、この論文では行動要因とされる部分、については、パートナー/子どもがいることによって就労しなくなる効果が減少していることがわかります。加えて、この傾向は学歴・国によって異なる点が強調されます。まず、学歴別に就業率の変化をみると、特にパートナーのいる非大卒層の母親の就業率が増加傾向であるとされ、今までの研究で見逃されてきた非大卒層女性の重要性(missing middle)を指摘しています。その一方で、このmissing middle層の就業参加率の変化は、国ごとによっても違いが特に大きいようで、例えばアメリカでは非大卒層の就労は逆に減少傾向で、これがアメリカにおける就業率上昇の停滞傾向を説明することが示唆されています。

人口学的な手法を用いた国際比較によって各国の女性就業率のトレンドを要因文化した点がユニークな点ですが、アメリカにおける非大卒層の就業が伸びていないという話は、国レベルのワークライフバランス政策がなく、そうした政策の恩恵を受けられるのは高学歴のミドルクラス層が主という点を考えると、なんとなくわかる気がします。


COVID-19

Dowd, Jennifer Beam, Liliana Andriano, David M. Brazel, Valentina Rotondi, Per Block, Xuejie Ding, Yan Liu, and Melinda C. Mills. 2020. “Demographic Science Aids in Understanding the Spread and Fatality Rates of COVID-19.” Proceedings of the National Academy of Sciences 117(18):9696–98. doi: 10.1073/pnas.2004911117.

今年は新型コロナウイルスの拡大で世界が思わぬ方向に左右された一年でしたが、研究者たちも自分たちの分野の強みを活かしたオリジナルな研究を出していきました。その中で私が専門にする人口学アプローチをうまく適用したのがDowdらの論文です。この論文が出版される前に、徐々にコロナウイルスによる死亡は年齢との相関が非常に強いことがわかり始めていたのですが、この研究ではその点に注目して、各国の死亡者数は年齢分布の違いによって容易に変わりうる点を人口学的な手法を用いて明らかにしています。政策的なインプリケーションとしては、年齢構造が高齢層にシフトしている国ではより強硬な手段を取るべきだという主張になるわけですが、コロナウイルスに関する研究に対して人口学がコミットする方向性を決定づけた論文の一つかと思います。


同類婚

Miller, Rhiannon N. 2020. “Educational Assortative Mating and Time Use in the Home.” Social Science Research 90:102440. doi: 10.1016/j.ssresearch.2020.102440.

自分のいちばんの専門である同類婚の研究については、今年はあまり「新しい」と思えるものがなかった印象です。その中でも、これはと思う論文を一つあげると、SSRに掲載された、この同類婚と家事分業の論文なるかなと思います。

ジェンダー研究では女性の所得が高くなると男性の家事時間が増えたり、逆に高くなりすぎるとそこで失ったジェンダー規範を埋めわせるために女性は家事をしがちというdoing genderの話がよく知られていますが、この手の論文は夫婦の相対所得の話をしており、地位の組み合わせの帰結を問う同類婚の研究と相性は悪くありませんでした。この論文では、アメリカのtime use surveyを使って、夫婦の学歴組み合わせによって夫婦の家事育児時間は変わるのかを検討しています。

下降婚の夫婦同類婚の夫に比べると1日10分程度育児時間が多い、という結論自体に別にそこまで驚きはなかったのですが、この論文では学歴組み合わせの反実仮想の話をメソッドのところでしていて、そこが個人的には一つ貴重なtake awayでした。

例えば最近の研究では下降婚のカップルの男性/女性が他の組み合わせのカップルよりも男女平等的だったり、離婚しやすかったり、そういったアウトカムを見ているのですが、この論文では女性視点で見ると最も学歴が低いグループは下降婚が理論上できないので、下降婚の効果を求める際には分析から除くべきと主張しています。逆に男性視点だと、一番高い学歴のグループは下降婚ができないことになります。

確かに言われてみると、個人にとって何が反実仮想のトリートメントになりうるのか、という話は、因果への関心も薄かった同類婚の分析ではほとんど検討されてこなかったと思います。もちろん、学歴における同類婚の反実仮想を考える際に、結婚時点の相手学歴との組み合わせのみを考えるので十分なのか、という論点はあるでしょう。つまり、この想定では本人の学歴が達成される過程については不問に付されていますが、個人がどのような教育達成をするかも反実仮想として考えられるからです。このように考えていると、同類婚のトリートメントは複数のconditionからなるもので、一体何がありうる選択肢なのか、わからなくなってきます。

No comments:

Post a Comment