January 5, 2019

正月病:理想的な論文執筆環境を考える

人は年の初めに新しいことを始めたがり、だいたい3日も続くかどうかのところで辞めてしまう。私もその例に漏れず、年始にいろんなことを始めたがるのだが、2019年は、ここ数年の課題だった「理想的な論文執筆環境は何か」を考えてみた。

まず、理想的な執筆環境というのは、論文の生産性や効率性で測れるものではない。そもそも、論文の生産性という言葉に対して自分はかなり懐疑的で、生産性の尺度が何なのか、全くわからない。文字数?であればひたすら意味をなさない文字を書き連ねればよいことになる。もし論文を完成させるということであれば、原稿を書いてしまえばよいが、実際には論文を書いた後も人からコメントをもらって修正して、投稿後も査読の修正が待っている。生産性と言っても論文の場合は世に出るまで、自分でコントロールできるものばかりで構成されているわけではない。そういうモノに対して、生産性という言葉を持ってくる意味がわからない。効率性についても同様で、時間あたりのアウトプットで効率を定義したとして、効率の良い論文だけを書きたければ書けばよいが、時間をかけないで書き上げた論文の質は言わずもがなである。

私が「理想的」な論文執筆環境と考える時に第一に重視するのは質を伴うかわからない効率性でも、定義が不明な生産性でもなく、どれだけストレスを溜めずに計画的に論文をかけるかにある。論文執筆にはストレスが伴う。複数の論文を持っているときはそのストレスは何倍にもなる。いつ書き上がるかもわからない原稿を複数持っていると、どれから手をつけていいかわからなくなることも多い。昔は、1日に論文1本書く作業を数ヶ月続けていたが、最近は複数の論文を1日でこなすことも多くなってきた。また、共著論文をfirst authorとして書く頻度も増えると、相手の予定も考えた上で、締め切り日までに論文を仕上げなくてはいけない。論文執筆は個人プレーからチームプレーの産物になっている。昔は一人のプレイヤーとして論文を執筆することを考えてきたが、今後は論文を書きながらも、それを自分でmanageすることが重要になってくるような気がしている。いうなればスポーツのプレイングマネージャー(選手兼監督)の役割を担うことになる。こう言った場合、どれだけ計画的に、一つの論文に対して不必要なストレスをかけないかが重要になってくると考えている。

また、今回考えたのはデバイス的なもので改善できるストレスではなく、執筆を手伝ってくれるソフトウェアに焦点を当てている。例えば、負荷をかけずに快適にタイピングできるキーボードや、複数のディプレイを用意することも重要だが、今回は論文を執筆する際にどういったアプリケーションを使用すると、ストレスなく、計画的に論文を書けるかを考えた。

最初に、理想的な執筆環境というものをイメージにしてみた。プロジェクトを複数持っている場合、できれば作業の進み具合を比較できるようにしたい。To do listとリンクさせれば、to doを終わらせるごとに達成度を示せるようなツールが欲しい。聞くところによると、Trelloというサービスがこういったニーズに応えてくれるようだが、私は一つのアプリケーションの中で論文も執筆したかった。単にワードをひらけばいいのだが、あまりウィンドウを増やしたくないし、ワードに対して付されたコメントに返答するのも含めてto doに自動で反映されれば最高だった。ちなみに、ここ最近は専らワードで論文を書いている。修論はlatexで書いて、論文はscrivenerにしてた時期もあったが、結局、同僚やファカルティの先生からコメントをもらうときは、wordのコメント機能が便利かつ、みんなが使っているため、docxを読み込んで更新内容をdocxに反映できる進捗管理ツールが欲しいという結論になった。


執筆画面では、to do listをサイドバーに出して必要な作業を書きながらでも確認したい。また、アウトラインもサイドバーに示せれば最高である。この辺りはscrivenerでもできるかもしれないが、scrivenerの問題は相手からコメントをもらうことはできないという点である。ワードにはzoretoのプラグインもついているので、さしあたりワードを軸に論文を書きたい。


上にあげた点をできる限り満たしているようなアプリケーションを探したところ、先にあげたTrelloやthings3があることを知ったが、執筆環境という面で見ると理想には遠かった。結局、office 365のサービスでplannerというものを見つけ、これを使うことにした。Trelloに対抗してできたサービスみたいだが、onedriveに保存したファイルをプロジェクトごとに管理できる。docxを使用しているので、オフラインで作業すればzoteroのプラグインも可能であり、同期もできる。また、office 365にはonenoteというアプリケーションがあり、これでmindmapに似たツールが利用できる。mindmapよりも、先行研究の整理にKJ法を使用するのに、このアプリは良いのではないかとみた。しばらく、onenote でアイデアを出し、plannerでプロジェクトを管理し、wordで論文を書くという作業を試みたい。続かないと思いますけどね。

***追記***
office 365の別のサービスであるone noteは1日の進捗をメモとして残すのに有用な気がします。office 365ではプロジェクトごとにグループを作ることができるので、進行中のプロジェクトを論文単位にして作り、共著の人をグループに招待します。そうすると、グループのメンバー内でプロジェクトごとのplannerやone noteを共有できます。one noteはもともと教育用に配布され、インストラクターが学生の作業記録をチェックしてコメントできるように設計されているようですが、上手く使えば論文の進捗管理に使える気がします。以下に示したスクリーンショットのように、onenoteなら記録を階層ごとに管理して、視覚的にもみやすいので、1日単位の記録をノートとして保存しておくと、この日に何をしたのかがわかりやすいのかなと思います。多分、似たようなことはgithubとかでもできるんでしょうけど、利点はplannerでスケジュールを管理して、to do listにonenoteのリンクを貼ることで、日程管理と作業の確認がスムーズにできる点かなと思います。

OneNoteのインターフェース


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