まだプリンストンに引っ越して2ヶ月という事実に驚く。とっている授業は少ないが、セミナーを通じてcutting edgeな研究に目にする日々を繰り替えすのは非常に濃密で、実際にはもっと長い時間を過ごしていた気がする。旅行に出る前はこうした情報を消化できていないことに不安を抱いていたが、旅行中にプリンストンの話をすると、意外とスラスラ何を最近見たのかについて言えるようになっていたので、それなりに自分の頭の中に回収できているのかもしれない。
今回の旅行で、この2ヶ月で自分が経験したこと、考えたことを言語化する機会に恵まれた。久しぶりに人と会うと最近どう?と聞かれるわけだが、プリンストンはどう?と何度も聞かれる中で、自分でも繰り返しまず先に思いつくことがあり、印章に強く残っているのだろう。ランダムになるが、3ヶ月目に入るにいたり、備忘録を兼ねて書いておく。主としてマディソンとの比較になる。
- 知的ストレス
以前のブログでも書いていたが、日々新しい研究を目にすることは知的刺激に満ちているのだが、贅沢な悩みになるが、それらを吸収しきれていないことはストレスに感じる。これに加えて、work cultureが個人主義的なきらいがあることも、旅行中の自分は周りの友人に指摘していた。プリンストンはやはりその道のビックネームが多いので、そもそもプリンストンにいなかったり、オフィスにいてもドアを開けたりしない傾向にある。マディソンでは、特に人口学研究所の先生は、オフィスにいるときは必ずドアを開けていて、ちょっとした挨拶はしやすかった。プリンストンは、マディソンに比べるとコーホートのサイズも小さいので院生の自治会の活動も少なく、特に学年をまたいだネットワークを構築することが難しい。上級生になりコースワークを終えると、そもそもプリンストンではなく近郊の大都市に住む人がいることも、ネットワークを作ることの難しさにつながっている。こうした事情で、私はプリンストンが財政的な資源には富む一方で、社会的な資源派もっと充実できるのではないかと思っていたのだが、コーネルで博士をとりマディソンでポスドクをしているコーネルの人に言わせると、マディソンのオープンで共助なカルチャーの方が珍しいらしい。サイズの問題はどうしようもないので、こればかりは社会学部以外のネットワークを作る機会と考えることにしている。
- 街
やや愚痴っぽくなってしまったが、これはむしろ昔の環境の方が良すぎただけなのかもしれない。その一方で、街は過ごしやすい。来た当初はホームレスが一人もいないような環境の異質さに戸惑ってしまったのだが、最近は慣れてしまった。マディソンの時は2週間に1回くらいなっていたアラートも全くならず、唯一先日あったのは竜巻注意報だった。下手すると東京よりも治安がいいくらい、大学周辺は異様な環境なのだが、街の圧倒的な静けさとサイズ感は好きになっている。プロビデンスはキャンパスのサイズはプリンストンよりも小さい印象だったが、ダウンタウンがあり、より街と大学の距離が近い印象を持った。また、ブラウンの方が建物を古く維持することに価値を置いている気がして、社会学部も人口学部も古い建物を借りてきてできていた。好みは分かれるかもしれないが、建物の綺麗さで言えばプリンストンの方が私は好き。ハーバードは建物一つ一つはプリンストンに似ているのだが、ボストンという大都市の中にあって建物同士が拡散している印象を持ち、あまりintegrateされたキャンパスではない気がした。結局、自分が住んでいるところを高く評価してしまうのかもしれないが、プリンストンの方が住む分には過ごしやすい。マディソンも別の意味で同じくらい住みやすい(キャンパスと中心部が適度な距離感にある、建物自体は古すぎず、新しすぎず、いい意味で庶民的)。ただ、マディソンは冬の圧倒的な寒さはどうしようもできず、もう一つは大都市までの距離が遠いのはデメリットかもしれない。プリンストンはNYまで1時間半なので、これは圧倒的な強みである。
- リソース
プリンストンが持つリソースは圧倒的である。読めない論文はないし(あるのかもしれないが、書誌情報がわかりさえすれば、サービスをやりくりして今まで読めなかった論文はない)、この小さな街に、大学があるからという理由でアメリカ、世界中から一流の研究者が集まり、日々研究の議論をしている。これ以上の環境を望むのは難しい気がしていて、できるだけ大学院の期間を長くしたいと考えているくらいだ。
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