November 14, 2019

11月14日

忙しい。今日の移民研究所のトークは私が個人的に尊敬している研究者の人の報告だった。素晴らしい内容の報告だったが、一点だけ気になるところがあった。移民がアメリカ社会にもたらす帰結について議論するとき、移民がアメリカの経済に「貢献」しているというロジックで移民を肯定的に捉えようとすると、それは「貢献していない」移民は排斥しても良いという主張を認めることにもなりかねない。その点に関して、やや議論になったのでメモ。

ゲノムについて、メンターの先生と話して学んだ(2日前だが)。同類婚などによってMendelian randomizationは起こってない説が有力らしい。そうなるとstrict exogeneityが満たされないので因果推論には使えないことになる。形質によるが、PGSの予測力が低いとweak instumentになるのも懸念になる。教育年数のPGSの予測力は2018年時点だと11-13%(European ancestry に対して)なので、まずまずだと思う。

注目する変数が社会な限りゲノムも社会だなと思うのは、例えばPGSの予測力は対象とする人口の生まれた年代により異なり、古いコーホートほど予測力は低い。昔のコーホートほど遺伝的には高い教育年数を獲得すると予測されたのに実際には獲得しなかった(できなかった)人がいるから(具体的には女性)。本来はここに人種的マイノリティも加わるはずだが、現在のゲノムの分析は白人に絞って分析がされているので、これは今後の課題。ただ、PGSはピュアに遺伝的なものを拾ってきているかというとそうではなく、環境要因も拾ってきているので、解釈には注意が必要。

長くなるので理由は書かないけど、私は博士課程の入試でGREを削除するのには賛成(プリンストンやブラウンの一部のプログラムで実施予定)。入学後のパフォーマンスを予測しない云々以外の正当な理由がある。ただ、ホリスティックに評価したい場合は情報があるに越したことはないので、残すのも一理。

パフォーマンスを予測しない云々に対して選択バイアスで片付けることは容易だが、そのロジックはGREがパフォーマンスを予測することを含意しない。もう一つは、GREで高得点を取れるような人の階層的背景はどういうものかという問題。もちろん、それは推薦状云々についても言える。




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