通常、私たちはある経験的な研究を通じて、変数間の関係を検証する。例えば、変数Aが変数Bに及ぼす影響を、様々な手法(調査、実験、シミュレーションetc)によって検討する。
こうした経験的な研究が蓄積すると、ある一定の知見が形成されてくる。仮説検証型の問いを立てる時に、これまでの先行研究にしたがって、A→Bを想定し、この因果関係を検証した場合、その研究は追試を行ったことになる。
AとBの関係を扱う先行研究が蓄積してくると同時に、食い違いも生じてくる。A→Bという因果関係は成り立たないという成果もあれば、AがBに与える効果量が研究によってまちまちにもなってくる。
このような食い違いも含めて、先行研究をまとめる作業を一般にレビューと呼ぶ。多くの研究は、これまでの先行研究を引用しながら、その研究を行う意義を明確にし、問いを設定する。先行研究の検討がない論文はほとんど存在しないだろう。
しかし、レビューにも問題点がいくつか考えられる。まず、AとBの関係を扱う先行研究を全て引用することは紙幅的に難しい(そもそも、何がA-Bを扱う研究科を定義することも容易ではない)。従って、どの文献を参照して、どれを引用しないのかが、本人の主観によってしまう。次に、AとBの関係を扱う先行研究は、サンプルも違えば、変数の設定の仕方も異なる。概念的にAとBという同じものを扱っているだけで、その操作的な定義は異なることは少なくない。要するに、先行研究間の知見をフォーマルに比較することは難しい。
メタ分析という手法は、こうした先行研究のレビューの主観性や比較困難性を克服できるものとして考えられており、その名前の由来は経験的研究の単位がA-Bのような変数である一方で、メタ分析の単位は「研究」であるからだ。つまり、「分析の分析」を行っている。メタ分析では、厳密な形で、概念の設定や先行研究の選択、効果量の比較を行い、先行研究における知見の一般化を目指す。
メタ分析は、概念から操作的な定義に距離が生じやすい心理学の分野で発展してきた。この分野でとられている検証の方法は実験である。実験の強みは介入群と対照群を比較することで厳密な因果関係を特定することが可能である点にある一方、限られたサンプルから知見を一般化することが難しい点が弱みであると考えられる。メタ分析は、心理学の特徴を反映しながら方法を発展させてきたため、必ずしも社会学的な関心に応用できるかというと難しい。ひとまず入門書を読む限り、メタ分析はA→Bの二者関係の因果効果に焦点を絞った研究を主に対照としており、社会学がよくやるような多変量解析に適う方法はそこまで発展していないように見られる。
という感想を山田・井上さんのメタ分析入門を読んで抱いたのだが、そこで上がっていた、メタ分析の基本文献の一部を備忘録としてメモしておく。社会学研究室にも何冊かおいて欲しい。
Borenstein, M., Hedges, L. V., Higgins, J. P., & Rothstein, H. R. (2011). Introduction to meta-analysis. John Wiley & Sons.
Cooper, H. (2009). Research synthesis and meta-analysis: A step-by-step approach (4th ed). Sage Publications.
Cooper, H., Hedges, L. V., & Valentine, J. C. (Eds.). (2009). The handbook of research synthesis and meta-analysis. Russell Sage Foundation.
Hedges, L. V., & Olkin, I. (1985). Statistical methods for meta-analysis. Academic press.
Schmidt, F. L., Hunter, J. E., & Field, A. P. (2014). Methods of meta-analysis: correcting error and bias in research findings. Thousand Oaks, California: SAGE.
Little, J. H., Corcoran, J., & Pillai, V. (2009). Systematic reviews and meta analysis, Oxford University Press.
Robert Rosenthal. (1991). Meta-analytic procedures for social research (Vol. 6). Sage.
Rothstein, H. R., Sutton, A. J., & Borenstein, M. (Eds.). (2006). Publication bias in meta-analysis: Prevention, assessment and adjustments. John Wiley & Sons.
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