March 2, 2015

[メモ] The Power of the Past by Jessi Streib

先月出版されたばかりのJessi Streibという、これも昨年ミシガンでPh.Dをとられたばかりの人の著書"The Power of the Past"が届いていたので読んでみた。

副題にUnderstanding Cross-Class Marriageとあるように、この本のテーマは「階級を越えた結婚」。手法はインタビュー調査を用いている。

配偶者選択というと、演繹的なアプローチでは、経済学的な市場モデルを用いたマッチング理論、これの派生形としてエージェント・ベーストモデルを用いたシミュレーションが分析社会学でも提示されている。一方で、データを用いる経験的なアプローチは、基本的に社会調査データの二次分析に基づいて結婚のパターンやトレンドについて分析している。正直なところ、ある社会的属性に基づいて結婚のパターンを分類した上で、質的な調査をする研究というのはかなり数が少ない。

また、少々意外かも知れないが、階級を基準にして結婚を考える研究も最近は少ない。近年のトレンドは学歴の同類婚であり、次にintermarriageの研究として、人種や宗教などが検討されている。同じ社会経済的に重要な指標としては同じだが、この本は学歴ではなく階級に着目しているし、同類婚ではなくintermarriageに着目している。

本書の問題意識は、以下の結婚と階級にまつわる二つの研究潮流に対する批判から出発しているように見受けられる。

まず、配偶者の選択と出身階級の関係は―特に現在の階級が同じであれば―独立であると想定する潮流があるという。これは、出身階級ではなく、当事者の選好やネットワークに規定されて、配偶者選択が行われると考える立場である(選好に関してさらに細分化すると、これは収入や学歴を選好すると考える戦略的アプローチと、同じ価値観を持っているから結婚するという文化的なアプローチの二つがある)。

その一方で、結婚において出身階級とそこから派生する文化的な嗜好が異なる階級の間の差異を強調するという潮流がある。

要するに、従来の研究では、結婚における出身階級の影響はないものと考えられてきたか、常に強い(が故にcross-class marriageは起こりにくい)と考える二つの立場があったと筆者は整理する。その上で、この研究は、あえてcross-class marriageに着目することで、出身階級は消えることのない痕跡(an indelible imprint)として残りながらも、それによって配偶者同士は常に分断しあうのではなく、互いに交渉しながら生活を共にしていることを明らかにする。

加えて、本研究では、文化的な差異を強調するtasteが階級に由来する決定的な差異として夫婦の間に生じるものという主張には慎重な姿勢をとる。この本の主張は、何を消費するか(what to consume)のtasteよりも、どのように時間やお金を使うか(how to spend time and money)のsensibilitiesの方こそ、夫婦間の違いを際立たせるというものだ。具体的には、子どもの教育方針や、貯蓄の使い道、家事労働の配分の仕方などのhowの部分に、出身階級の影響が強く見られるというのだ。

本研究では、cross-class marriageのカップルに見られる以上のような特徴を明らかにするために、質的調査のサンプリングをかなり禁欲的なものにしている。対象となったのは、親の出身階級が異なるcross-class marriageと階級が同じshared-class marriageのカップルである。両者は、出身階級という点で異なるが、対象者全てに関して、以下のような特徴が共通なものになるようにサンプルが選択されている。カップルは全て大卒で、白人で、ヘテロセクシュアルである。ただし、信仰している宗教や現職などはカップル間で異なる。現代のアメリカで人種を考慮に入れない研究というのも珍しい気がするが、本書では階級に焦点を当てた分析をするために、あえて白人大卒カップルという制限を加えているということだろう。

今日は、この本の参考文献に上がっている論文を検索して、落とせるものは全て落としたのが一日のメインの仕事だった。

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