October 28, 2018

ポスト産業化4カ国における希望出生、出生意図、ジェンダー不平等

Mary C. Brinton Xiana Bueno Livia Oláh Merete Hellum. 2018. Postindustrial Fertility Ideals, Intentions, and Gender Inequality: A Comparative Qualitative Analysis. PDR

BrintonさんがNSFとライシャワー研究所のグラントをとって進めているプロジェクトの成果論文。2017年のPAJ(日本人口学会)で途中経過を報告していたのを覚えている。その時は大学院出願で色々ストレスもあり、出願先の先生にどうしても挨拶することができなかった思い出がある。

この論文は日西米瑞20-30代の高学歴のカップルを対象に、理想子ども数と出生意図の差がどのように生じるのかを検討。日本ではフルタイム就労の女性の夫は、妻の就労継続に理解があり、家事にも貢献したいと考えているが、自身は長時間労働のためそれができない。妻も夫の貢献を想定していない。

パートタイム就労の女性の場合には、夫一人の収入がメインのため子育てのコストを考えて理想と意図の間に差が生じる。日本と同じ超低出生のスペインは、将来の経済的不安のために共稼ぎが必要と認識。日本では性別分業が暗黙のうちに前提とされている。超低出生国の間でも文脈の違いが認識の違いを生む。

日本のフルタイム夫婦の場合に理想と意図の差が生じるのが、夫は妻のキャリア志向を尊重しつつも、長時間労働のために家事に貢献できないと考え、それを妻も共有していて、結果として暗黙のうちに性別分業が前提とされている、という説明は腑に落ちるところが多い。

Goldscheiderのgender revolutionの議論だと、日本の高学歴フルタイム夫婦の男性でジェンダー平等的な意識が持たれている点では、日本も革命の第2段階に来ているのかもしれないが、意識の上で夫婦が対等になりつつも、長時間労働により暗黙の性別分業が維持される限り、日本はこの理論の逸脱例だろう。あるいは、妻が働くのをサポートしたいというself-fulfillment(自己実現?)側に立ちながらも、実際には女性が男性並みに働く(ただし男性は家庭で家事負担はしない)ことで男女平等が達成されようとしているのであれば、Goldscheiderの枠組みでは、まだ日本は革命の第1段階だろう。


No comments:

Post a Comment