月曜から金曜までUCバークリーの人口学研究所が主催する形式人口学ワークショップに参加してきた。このご時世なのでもちろんzoomなのだが、そのおかげで例年よりも倍近い参加者を招くことができたようで、アメリカだけではなく、ヨーロッパ、ラテンアメリカからも多くの参加があった。
例年テーマがあるようで、今年はCovid-19の影響を研究する際に、形式人口的な視点がどのように役立つかという関心から、ワークショップが構成されていた。応用するトピックは絞っているが、結局のところオーガナイザーとしては形式人口学の他分野における有用性を訴えるというのが目論みなのだろう。
前半は割とヘビーな形式人口学の数理的な話とその応用、後半は研究者を招いたリサーチトークになった。人口学的な研究における形式人口学の役割について、節々で感じたのは、モデルの重要性である。
データが全て揃っていれば、仮定を置く必要はないが、例えば人種別の死亡率がない場合、ある死亡スケジュールに従うと仮定するであったり、あるいはコロナによって年齢別の死亡率はproportionalに増加するという仮定だったり、そういった仮定に基づいたモデルを作ることで、一つには明晰性が担保され、もう一つにはデータの欠測をモデルで補える。社会科学のデータは不完全であることが多いので、その分モデルに基づいた検証が必要なのかもしれない。
別のところで、ある研究者(Rob Mare)は常にwhat is your underlying model?と聞くことがあったという。この発言をやや大袈裟に解釈すると、社会学者はどういったモデルを念頭に分析しているのか、不明瞭になりがちなことへの批判にも読める。同じ人口学でも、社会人口学、家族人口学と呼ばれる分野は社会学のように「とりあえず何が起こっているのかみてみよう」スタンスの研究が多いので(それはそれで大切なことだと思っているが)、まさに私のような研究者にとって、形式人口学の教えは良い戒めになっているのかもしれない。
もちろん、モデルベーストで考えようというのは形式人口学に限ったことではなく、数量的なデータを用いる研究全般に言える点だとは思うが、人口学的な研究の中でも、形式人口学がこの点についてもっとも意識的なのだろう。
参加者とはブレークアウトルームで少人数のグループを作り、そこで多少自己紹介はできたのだが、やはりzoomだと初めての人と打ち解けるのは結構難しい。はやくin personのミーティングが戻ってきてほしいと改めて思った。
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