Peterson, R. (1990) Why 1955? Explaining the Advent of Rock Music, Popular Music 9(1), 97-116.
この論文では、1955年にロック音楽が誕生した背景について制度的な文脈からアプロートしている。筆者は法制度、技術、産業構造、組織構造、職業のキャリア、そして市場の6つの側面から検討を試みている。産業構造では、ラジオとレコード産業の変化が1948年と1958年を対比する形で述べられている。ラジオは48年時には大規模なラジオネットークを持つ四社とその他の独立系ラジオ局によって構成されており、そこでの音楽番組はライブ演奏が中心だった。58年になるとローカル局が増加した一方で、彼らはライブ演奏が可能なスタジオを持つだけの広告費を得ていなかったため、蓄音機による音楽を流すようになったという。レコードの人気が高まるにつれてレコード産業も4社による独占状態が解体していった。組織構造に関してはテレビの登場でラジオ局の技術者がテレビ局に移籍していく中で、ラジオ局ではDJが中心となって番組作りが行われるようになった。職業構造では、craftsman, showmen, entrepreneur, bureaucrat の四つの理念的なキャリアパターンが紹介され、その変遷がロックの誕生に与えた影響が述べられている(例えば、ラジオ局ではニュースを読み上げるアナウンサーから自ら主体的に音楽の流行に関わるdjへの移行が50年代に進んだことなど)。(市場の多様性の変化についてはPetersonの別の論文で述べられているので省略する)
Geels, F. (2007) Analysing the Breakthrough of Rock ‘N’ Roll (1930-1970), Technological Forecasting and Social Change 74, 1411-31.
この論文では、ロック音楽の発達を説明するために、マルチレベルでの分析の有効性を説いている。筆者はまず、レジームという枠組みを紹介する。これは社会的に共有されたルールを指し、生産と消費(ここではレコード会社とラジオ局)の二つを構造的に位置づけされるものとされている。この考えのもとでは、イノベーションのような変化が起きる時はレジームが変わる時であるとされる。次に筆者はイノベーションを起こす源泉としてのニッチを定義する。最後に、上記二つの直接的な影響を受けないマクロな環境要因としてランドスケープを定義する。ランドスケープはレジームの変化に制約を与えるものとして考えられる。こうして複数のレベルを採用した分析枠組みを設定した上で、筆者は異なるレベルの相互作用によってイノベーションが起こることを明らかにする。1930年代は大恐慌とレコーディング技術の変化により音楽業界の寡占化が進行し、少数の独占企業がラジオ局をも支配する状況が続いた。1940年代はレコード業界の寡占化は続いたものの、ラジオ局に関してはライセンス発行の緩和と大規模な全国規模の広告の減少とスポット形式のローカル広告の増加に伴って、次々に設立されたローカルラジオ局では生ライブ演奏からレコードの放送へ、DJの登場、多様な音楽の紹介という変化が起こった。ニッチ市場は独立系のレコード会社が成長してきたブラックミュージックやジャズなどを支援することで発展していった。これは磁気テープとエレキギターの登場によっても支えられたという。1950年代になると、テレビの登場によってラジオの役割が情報入手の中心的手段から個人の趣味へと変わった。全国規模のメディアネットワークがテレビの登場によりラジオに対して商業的な利益を見込まなくなったために独立系ラジオ局のシェアが増加し、個性的なDJのプロデュースによって、各々の壁が取り除かれつつあったジャンルが多くの人の支持を集めるようになり、ロック音楽の登場を支えたことが指摘される。体系的な分析となっており再び読みたい。good paper!
Molgat, M., and M. Vezina. 2008. “Transitionless Biographies?: Youth and Representations of Solo Living.” Young 16(4):349–71.
この論文では、カナダ・モントリオールの若者を対象にした調査から、青年期におけるsolo living研究の視座を提供する。これまでの若者研究では、ライフコース理論に基づいた以降研究がメインだった。そこには、若者はパートナーとの結婚によって自立することで親との生活から自立するという暗黙の前提があったという。しかし、近年、多くの若者がこの前提にはなかった一人暮らしを始めている。これは単なる成年期への移行の延長として解釈されがちになるが、筆者らは一人暮らしが若者にとってどのような意味を持つかを探求している。インタビュー調査の結果から、若者は一人暮らしに三つの意味を見出していることが分かった。一つ目がライフスタイル、二つ目が結婚までの移行期間、三つ目が長期的な生き方である。ライフスタイルとは、一人暮らしが自分の意志で好きな生活を営むことができるという点に価値がおかれていることを指している。移行期間と解釈する見方については、20代の対象者が肯定的に、30代以降の対象者が否定的に捉えていることが分かった(双方ともネットワークが小規模らしい)。最後に長期的な生き方として一人暮らしを考えている人は、多くが家庭を持たない分、周りとの社交ができることを肯定的に捉えている。しかし、中高年の対象者にとってはこうした生き方は孤独感を呼ぶものと解釈されている。以上より、筆者らは移行するという前提を相対化する必要を説く。
Holmes, M. 2006. “Love Lives at a Distance: Distance Relationships Over the Lifecourse.” Sociological Research Online 11(3).
この論文では、アカデミアでの職を持つカップルを対象に、遠距離で暮らすことに対する 質問しに回答した対象者は24カップル47人だが、インタビューの分析部分は筆者を含む(!)5人への聞き取りからなっている。47人のサンプルの調査からは、多くが30代以降のカップルで、50-60代も見られたこと、特に高齢のカップルからは遠距離の関係が何年にも渡って続いており、短期的なものとは考えにくいことが指摘されている。遠距離カップルが持つ悩みとしては、子どもなどケアが必要な人がカップルの他にいた場合に、現在の生活スタイルを合理化できないという点が指摘されている。高齢のカップルでは自身の健康に問題が生じたときにこの点が考慮されている。それに加えて、感情的なサポート(悩みを聞いたりすることなど)が遠距離の場合にはできないことが不満としてあげられている。筆者は、これは同棲している場合にこうしたサポートが当然のものとして期待されていることを裏付けるとしている。
Duncan, S., and M. Phillips. 2010. “People Who Live Apart Together (LATs)–How Different Are They?.” The Sociological Review 58(1):112–34.
LAT(Living Apart Together)の増加に対する解釈としては、これを新たな家族の形だと見なす考えと、あくまでライフコース上の一つのステージに過ぎないという見方の二つが対立していた。そこで、この論文ではBritish social attitudes surveyを利用してこの論老に経験的な知見を提供する。分析では若者を中心とした恋人関係の延長としてのdating LATと同居しない理由として「はやすぎる」「準備ができていない」と回答した前者より安定的なカップルをpartner LATと定義している。分析の結果、LATのカップルは多様な背景を持っており、この生活スタイルを選択した同期も多様であることが分かった。彼らはシングルや同棲カップルよりも、関係は互いが独立した時により強固なものになると考える傾向にあり、この点で家庭に対しては比較的リベラルな考えを持つ。しかし、その一方で、彼らはパートナーよりも親戚関係の方を信頼する、及びカップル間より親と子の関係の方が強いと言った質問に賛成する割合が高い傾向にあり、伝統的な価値観などに関しても他の形態の生活スタイルの人とそこまで変わらないスコアを示しており、個人化社会における新しい価値観を持ったパイオニア的な評価をするのは危険だとしている。
Wejnert, B. 2002. “INTEGRATING MODELS OF DIFFUSION OF INNOVATIONS: a Conceptual Framework.” Annual Review of Sociology 28(1):297–326.
この論文では、イノベーションの拡散に関する複数のモデルについて網羅的な検討を試みている。このモデルについてはこれまで4000本以上の論文が出ている一方で、それらの分析は他の要因を考慮しないものだったという。そこで筆者はこの論文の中でこれまでのアプローチを体系的にまとめている。
大きくイノベーションの特徴、イノベーターの特徴、環境要因の三つに分けられて検討がされている。まずイノベーションの特徴では、その結果がイノベーター以外の人にもインパクトがあるパブリックな場合とそれ自身にのみ利益がある個人的な場合があり、それぞれによって影響を与える要因が異なることが紹介される。また、どれだけの直接/間接のコストがかかるのかという点でも先行研究が積み重ねられている。
次に、イノベーターの特徴としては、entity(個人か組織かといった点か)、イノベーションの新規性(これはイノベーションの特徴ではないか)、イノベーターの地位、社会経済的な特徴、ネットワーク上の位置、そして個人的属性(どれも互いに関係しあうもので区別が難しい)が紹介される。これらの特徴に注目することで、イノベーションの波及効果などを考察できるという。
最後に環境要因として地理的位置、社会的文化、政治的条件、グローバルな統一性が紹介される。様々な変数を考慮したモデルが紹介され興味深いが、特にRQがない(ので眠くなる)。イノベーションに興味のある人はぜひ。でも、diffusionは大事な減少だと思うのでもう一度読んだ方がいいと思った。
Bellotti, E. 2012. “Getting Funded. Multi-Level Network of Physicists in Italy.” Social networks 34(2):215–29.
この論文では、イギリスの物理学者のネットワークが彼らのファンディングにどのような影響をもたらすのかを考察している。筆者は、先行研究の整理のもとに、引用ネットワークではなく、ファンディングの対象となるプロジェクトへのメンバーとしての加入を変数として採用し、これを10年間に渡って分析している。また、個人レベルに加えて、研究者が所属する機関(イタリアは一度大学・研究機関に所属すると基本的に異動しないらしい)のレベルを設けたマルチレベル分析を試みている。多くの研究者と共同のプロジェクトを持つかどうかに加えて、大規模な研究機関に所属しているかどうかで研究者を4通りに分けた分析の結果、BFBP(Big fish in a big pond 大規模大学で働くノード数の大きい研究者)であるよりも、様々な研究グループとのつながりを持つブローカー的な役割を持つ人の方が、資金獲得には有利に働くことが分かった。
Hummon, N. P., and P. Dereian. 1989. “Connectivity in a Citation Network: the Development of DNA Theory.” Social networks 11(1):39–63.
この論文では、DNA理論の発展に寄与した40本の論文の引用データを用いて、引用する/しないという関係をdirectedなネットワークと捉えて、これらの論文の中で主要な流れにおかれるものはどれかについての分析を試みている。これまでの引用ネットワークの研究ではどの手法もノードのクラスター分析をしていたが、今回の分析ではネットワークにおけるリンクに焦点を当てた分析をしている。まず、connectivityを見つける作業では、(weak/strongの)サブグラフの発見とノード間のパスの距離が求められる。この分析の結果からはノード3から始まるmain streamのパスが見つかったが、これは他の手法でも再検討されている。ここでは、Garfieldらによって作成された、つながりのタイプに基づいて算出されたノードへの重み付けの方法とQ analysisという分析方法を組み合わせた方法からもこのメインのパスの発見が支持されている。これに加えてregular equivalenceの分析からも同様の結論が導かれているとする。再読の必要。
Carolan, B. V. 2008. “The Structure of Educational Research: the Role of Multivocality in Promoting Cohesion in an Article Interlock Network.” Social networks 30(1):69–82.
この論文では、Teachers College Recordという教育額の雑誌のオンラインデータベースを用いて、学術的な知識がどのようなネットワークの構造を持っているのかを検討している。このような学術的知識については、従来はco-citationや共著ネットワークで測られてきたが、この論文では、こうした著者レベルでのつながりがなくとも、読者の重なりがあるとすれば、それもinterlock networkであると考えることができるとする。筆者は、先行研究をもとにこの分野(教育研究)におけるネットワークの三つのモデルを紹介している。Plural worldsモデルはネットワークを分断しており相互に関係を持たないクラスターから成り立つと考える。Structurally cohesiveモデルでは逆に複数の専門的な分野も移転可能なものとしてクラスターが緊密に結びついていると考える。最後にSmall worldモデルは複数のクラスターがある程度の距離を持って結びついているという上記二つの折衷的な立場である。読者(この場合はアクセス元)の重なりから求めたネットワークの分析の結果、Structurally cohesiveとSmall worldモデルが支持され、Plural worldsモデルは棄却された。さらに、こうしたつながりは複数の分野を横断する論文の存在によって成立しており、筆者はこうしたmultivolityの論文の存在意義を強調する。このフィールドの理論的な蓄積については知らないところが多いからか、筆者が丁寧に議論している部分の価値が分からなかったので再読。
Noma, E. 1982. “Untangling Citation Networks.” Information Processing & Management 18(2):43–53.
この論文では、引用ネットワークのパターンを可視化する技術を紹介している。この論文によれば、まず、ある論文を他のつながっている(複数の)論文のcentroid(重心?)に置くというシンプルなルールを繰り返す。つながりを引用する/されるの二パターンで行うことで、2 次元のプロットが生成される。これは論文に対するco-citation matrixの因子分析の結果と似ているが、この方法は引用/被引用双方をプロットによって確認できるという利点を持つ。
Smart, C. 2008. “‘Can I Be Bridesmaid?’ Combining the Personal and Political in Same-Sex Weddings.” Sexualities 11(6):761–76.
この論文では、civil partnership導入によって同性愛者の結婚が認められるようになったイギリスにおいて、privateな場でもあると同時に、友人や親族に自分たちの結婚を示すpoliticalな場でもある結婚式についての意思決定を分析することで、privateとpoliticalという対立的な領域についてカップルがどのような交渉をするかを明らかにしようとする。この論文では、特に結婚式の形式に注目している。インタビュー調査の結果、結婚式の種類は通常のもの、最小限のもの、宗教的なもの、そしてdemonstrativeなものの三つの結婚式の形に分かれる。通常の形式を選ぶものは周りからの承認に重きを置いており、異性愛者と同じ形式をとることに反対しないが、誓いの言葉をvowからpromiseに変えるなど自分たちが重きを置く価値を具体化させることもする。小規模な形式を選択するカップルは長年連れ添った場合が多く、法的な承認のみを求める傾向にある。彼らにとっては個人的な領域を政治化させることは避けられる。宗教的な形式を選択するカップルは結婚を神の前で行うことに価値を置く。イギリス国教会は同性愛に対して反対の立場を取っているが彼らはリスクを冒してきてくれる聖職者に立ち会いを依頼する。ただし、彼らはconventionalな形式に従うことに対して素直に受入れている訳ではない。最後にdemonstrativeなものでは、結婚式を多くの人を呼ぶことで、同性愛カップルの結婚に対する理解を持ってもらいたいという(政治的な)意図を持っている。
Mason, J. 2008. “Tangible Affinities and the Real Life Fascination of Kinship.” Sociology 42(1):29–45.
この論文では、kinshipにおけるaffinity (愛情)の複数の次元について議論している。筆者は人類学におけるrelatednessの研究を引用しながら、その功績に生物学的な事実によるつながりをkinshipから切り離す試みを行ったことを挙げている。これはすなわち、私たちがなぜkinshipに対して愛情を持つのかという問いを掲げた時に、生物学的なつながりがあるという主張を相対化することになる。この点で、筆者は人類学の知見を評価しつつも、彼らがnature/culture の対立軸を最小する限り見えない部分が出てくると主張する。筆者は、私たちがkinshipに魅了されることを社会学的に考えた結果、愛情の複数性を指摘する。
一つ目がfixed affinitiesであり、これはkinshipをもとから与えられたものとしてみなすことで生まれる考えである。これに対して、二つ目はnegotiated affinities である。これは、affinitiesを家族との交渉の過程で見出す考えに対応する。三つ目がethereal affinities である。これは、合理的に説明することのできないものとして説明されており、Howellによるノルウェーのadoptionにおけるkinningの過程など、affinitiesを運命的なものとして解釈すると紹介されている。最後が身体的な類似など、感覚的に認識できるものをもってaffinitiesを主張するsensory affinitiesである。
Mason, J., and K. Davies. 2009. “Coming to Our Senses? a Critical Approach to Sensory Methodology.” Qualitative Research 9(5):587–603.
この論文では、近年のsensoryな調査、とりわけ写真を用いた家族の類似(family resemblance)の研究の隆盛を受け、これに対して批判的な検討を加えている。筆者によれば、dreative interviewとvisual methodsを用いた調査から、インタビュー対象者がいかに有形・無形(tangeble intangeble)な類似を組み合わせているかが明らかになる。例えば、ある対象者は写真からだけでは自分と写真の中の人が似ているとは言えないと考える。その代わりに、実際会ってみたら似ていると思う、などということで写真が表現できない部分を補おうとする。筆者はこれをsensory associationと呼んでいる。これは写真が洗わせないことに対する記述であるが、その一方で、親戚の写真をたくさん並べることで、real lifeでは見ることのできないような特徴に気づくことも報告されている。筆者は日常ではこうした特徴に気づかないことをベンヤミンの言葉を引用してoptical unconciousnessと呼ぶ。
その一方では、対象者は写真を用いずとも感覚的な類似点について詳細に語ることができており、写真に手段を限定することの危険性も指摘されている。その意味で、家族と似ている部分を感覚的に理解する行為は日常生活のレベルでも十分にされており、調査はこれを質問と切り離してはならないことが指摘されている。
Hummon, N. P., and K. Carley. 1993. “Social Networks as Normal Science∗.” Social networks 15(1):71–106.
この論文では、Social Networkの12のvolumeに掲載された論文のcitationをネットワークのデータを分析することで、SNAの分野でもCraceが主張したようなinvisible college(共有されたパラダイムとその分野をリードする雑誌の存在)の成立によってクーンが主張したような通常科学としての科学的発展が見られたという歴史的な証拠を提出している。main path analysisの結果、6つのmain pathが見つかり、最も重要と思われるpathはrole analysisに関する論文で、12のvolume全てでその論文が確認されていた。特にこのpathにおけるWhite and Reiz 1983からEverett and Borgatti 1990までの10の論文はそれ以後のRole Analysisの研究に関して一貫してイノベーションに寄与したことが確認されている。最後に、これらの論文は全てモデルをたてて計量的な分析をしており、理論的な論文や質的な論文は見られない。筆者によれば、これらのpathのパターンはクーンが主張した通常科学と同じような発展として考えられるという。
Michaelson, A. G. 1993. “The Development of a Scientific Specialty as Diffusion Through Social Relations: the Case of Role Analysis.” Social networks 15(3):217–36.
この論文は、社会関係を通じた学術的な知識のdiffusionの過程に関する研究だが、既存の調査と異なり、先行研究を無批判に承認するのではなく、批判的に修正を試みた論文に焦点を当てている。データとなるのはposition structure とrelation structureという概念を始めて定式化したLorrain and Whiteの論文が出版された1971年から88年までに上記二つのrole analysisに関して修正的な提案をした論文及びその著者たちである。インタビュー調査によって、先行研究の知見を導入する以前にその研究者と関係を持っていたかが検討される。
論文が出版された1971年時は、その内容があまりにも抽象的でなじみのないものだったために、この論文が他の研究者によって知られるためには、先行する友人関係が重要だったと述べられている。次に、position structure とrelation structureのうち、前者に比べて後者は抽象的な概念だったために、最終的に導入者の数にも違いが生まれていることが指摘される。次に、先行する導入者とほとんどの後続の研究者が事前に関係を持っていたため、筆者はこうしたインタラクションがイノベーションを認知させるために重要だったと結論づける。具体的には、研究者たちは学会で執筆者と交流することを通じて論文の意義に気づくという。筆者はこれ以外にも、ジャーナルで知ったことを通じて論文を引用するようになった導入者の存在を指摘している。最後に、マスメディアやジャーナルが論文の導入に対して影響力を持つようになってからは、友人関係の影響力は弱まったとし、これは既存の情報の流れの二段階の仮説とは対立することが示唆される。ここでは、科学的知識はある程度研究者によって信頼を得てからジャーナルによって拡散されるという解説がされており、この点でジャーナルの役割はinvisible collegeのような縄張りを示すものではなく、あたらしい情報の発信源ともなると述べている。
Lievrouw, L. A., E. M. Rogers, C. U. Lowe, and E. Nadel. 1987. “Triangulation as a Research Strategy for Identifying Invisible Colleges Among Biomedical Scientists.” Social networks 9(3):217–48.
この論文では、National Institutes of Healthのグラントに採用された研究者のco-word invisible collegeの存在についての検討がネットワーク分析でされている。分析を3つの段階に分けるトライアンギュレーションを採用している。対象となったのは1983年に採用された5千ものグラントである。分析の第一フェーズではNIHのデータベース上にあるグラントのキーワードが分析されており、これにより12のクラスターが把握できた。その中の一つをパイロットとして選択し、この分野の研究者の一部に確認をとったところ、ほぼ全ての代表的な研究を表していることが確かめられた。次に、第二段階としてこの分野に関するレビューとco-citation analysisとの比較がされるが、後者はまだ進行中とのことである。(この箇所の存在意義がよく分からない)。最後に第三段階として、このクラスターの研究者に対する質問し及びインタビュー調査が行われ、研究者の多くが年一回のペースで(カンファレンスが多い)交流を持っていること、ネットワーク分析の結果このクラスターが6つのサブグループに分かれ、最終的に2つのグループに大別できること、さらにその結果から因子分析がなされ大別されたグループとの比較がされている。
Weeks, J. 2008. “Regulation, Resistance, Recognition.” Sexualities 11(6):787–92.
イギリスのCP法は同性愛者たちに驚きを持って迎えられた。筆者は、CP法を政府による規制(regularities)なのか承認(recognition)なのかをこの論文で問うている。筆者が行った調査からはゲイ・レズビアンたちはCP法に対して異性愛者と同じ
法的権利を得られることをポジティブに捉える見方もあるが、その一方でなぜ彼らと同じ真似をしなくてはならないのだという反発も見られるという。
筆者はまず、この権利を認める一連の流れにおけるagencyについて考える。アメリカはもとより、こうした運動は白人を中心とした中産階級によって担われてきたというelite liberationの主張、及びそれまでの過程において権利を与えられなかったものたちが草の根の運動をしていったことを重視する視点が紹介される。次に筆者は、フランス、イギリス、そしてアメリカの同性愛者への権利擁護の流れの多様性が指摘される。最後に、各国それぞれの文脈はありながらも、同性愛者たちが既存の伝統的な価値観に吸収されるのではないかという危機感があることが指摘され、筆者はこれに対して(そうした流れを同化政策ととらえず)承認に対する要求をしていく必要を訴える。(政治的。)
No comments:
Post a Comment