Lewis, K., J. Kaufman, M. Gonzalez, A. Wimmer, and N. Christakis. 2008. “Tastes, Ties, and Time: a New Social Network Dataset Using Facebook.com.” Social networks 30(4):330–42.
この論文では、ハーバード大学の許可を得て、寮に住む学生のFBデータを取得し、友人関係と文化志向の関係について考察している。友人の定義はFB上で友達になっているほか、同じ写真に乗っている、同じハウスに住んでいるという基準が採用された。その他、エスニシティ(特定方法がFB上で加入しているエスニック団体なので懐疑的になる)、親の年収(住所のジップコード、それがない場合は高校のジップコードを調べ、その地区の平均的な収入をセンサスから調べるという手法を採用している)、出身地域を調べている。ネットワークの尺度はサイズの他、密度と中心性、betweeness,そしてheterogenetyが調べられた。これを見ると、白人をレファレンスにした時、黒人の場合にFBの友人数が増える傾向にある、女性やアジア系だとdensityが経る傾向にあることが分かる。heterogenetyは白人に比べほぼ全てのエスニシティでプラスの効果が見られることが分かる。次に、友人と共通の趣味を持つこととネットワーク、及び個人的な属性の関係が調べられる。文化についてはジャンルではなく具体的な作品名や作者がデータとして残っている。そのため、筆者らは趣味を持つサンプル内であり得る全てのペアの文化志向を照らし合わせ、その一致度を測り尺度とした。その結果、他の変数を統制しても友人関係を持っていれば共通の趣味を持ちやすいことが分かった。さらに、ドームメイトであることは友人関係を統制した場合に趣味の共有にマイナスに働くことが分かり、距離がかならずしも趣味の共有に有効に働かないことが示唆される。
Bergesen, A. 1984. “The Semantic Equation: a Theory of the Social Origins of Art Styles.” Sociological theory 187–221.
この論文では、社会言語学社バーンスタインのrestricted codeとelaborated codeの区別を用いて、これを芸術作品への理科に応用している。前者は規範を共有した人のみに伝わる言葉で、一部の人にしか分からない文脈化されたものである。語彙は少なく、用法も限定されている。対して後者は語彙に溢れ、用法も豊富にある、規範を共有していなくても理解できる言葉である。バーンスタインは労働者階級は前者の言葉をつかい、中産階級は後者の言葉を使い、階級の再生産を説く鍵と考えたが、筆者はバーンスタインとはことなり、言葉の用法と階級を結びつける必要はないとする。なぜならば、言葉の用法においてより根本なのは、文脈化された言葉を用いることができる集団が形成されていることであり、仮にこのような集団が形成できなくなれば、労働者階級も非文脈的な言葉を使用すると考えられるからである。
このように、筆者は言葉の移行可能性を想定する。そして、この区分を芸術作品に応用する。筆者によれば、抽象的な現代絵画は、解釈するための語彙(この場合は絵の内容)に乏しく、理解を手助けするような絵画の技法も少ない。この意味で、抽象絵画を語る時はrestricted codeにならざるを得ないという。反対に、実証的な絵画は特に規範がなくとも語れるほどには語彙があるため、elaborated codeに分類される。筆者は、絵画に本質があるとは考えず、あくまで我々がそれを解釈する際に用いる語彙と技法的な側面(シンタックス)の二つを絵画側の要素とする。これは、筆者が主張するThe Semantic Equationの片側になる。筆者は、絵画を理解可能にするためには、絵画の側の語彙と解釈フレームに加えて、Equationのもう片側を構成する解釈側の理論的な補足情報が必要になるという。そして、抽象絵画が写実的な絵画になる過程を具体例を持って紹介する。
Crossley, N. 2009. “The Man Whose Web Expanded: Network Dynamics in Manchester's Post/Punk Music Scene 1976–1980.” Poetics 37(1):24–49.
この論文では、マンチェスターにおけるパンク音楽ムーブメントの発生を、彼なりの枠組み(relational sociology)で検討している。音楽は一つのシーンであり、それは集合的な行動であるとする筆者は、この集合性を説明するものとしてネットワーク分析の重要性を説く。一つの音楽がシーンとなるためには、その音楽に対して関心を持つ多くの人(critical mass)が不可欠だ。音楽をつくるのは一人ではできない、自分の考えに共感する仲間が必要だ。そして、そうしたメンバーを捜すには、つながりがないといけない。筆者はcritical massだけでは不十分だと言う。critical networkが必要なのだ。そして、つながり自身は人々に資源resourceをもたらす。さらに、そうしたネットワークにはconventionがあり、それが人々の行為を規範づけている。筆者は、ネットワーク、資源、そしてコンヴェンションの三つの社会構造とし、これが人々のインタラクションと呼応しながら音楽シーンを現象させていくと考える。
筆者はネットワークが変化し、パンクが誕生した過程において重要な要素を挙げる。まずfoci、この場合は多数のアーティストがあうことを可能にした音楽イベントないしその会場の存在がある。次に、mediated fociでは面と向かったインタラクションではなく、レコードショップに広告を置くなどを通じてネットワークが形成されたことが述べられる。また、二人がつながったことで、彼らがブリッジとなり、他人同士がつながる弱い紐帯も観察された。また、既存のネットワークを通じてバンドの評判が拡散していったこともネットワークが形成される重要な要素だったという。最後に、評判を通じて有名になったものがターゲットにされてネットワークのハブになることも述べられている。これらの要素を通じてネットワークは掲載されていったが、筆者は最後に階級ではなく、パンクの場合にはジェンダーとエスニシティがネットワークの選別の理由になったことが述べられる。
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