男はつらいよソシャネ論文(27/107)
Latkin, C. A., V. Forman, A. Knowlton, and S. Sherman. 2003. “Norms, Social Networks, and HIV-Related Risk Behaviors Among Urban Disadvantaged Drug Users.” Social Science & Medicine 56(3):465–76.
先行研究の知見から、HIV関係の行動の変化には規範normが深く関わっていることが指摘されている。本論文では、都市の薬物使用者におけるコンドーム使用と規範、及び彼らのネットワークとの関係を探っている。この論文では、先行研究から二種類の規範を紹介する。一つ目が、prescriptiveなもので、重要な他者が自らにすべきとする主観的な規範を指している。二つ目がdescriptiveなもので、重要な他者が実際にしているという実質的な規範を指している。これに加えて、筆者らはコンドームの使用がネットワークにいる人との会話に出てこない場合をcommunicationの規範として定義し、以上三つの規範(コンドームしように準拠させている)と性行動の関係について考察している。
サンプルはバルティモア市内の18歳以上の男女のうち、薬物使用者とのコンタクトがあり、AIDSのアウトリーチ教育に参加する意欲のあるものがターゲットサンプリングで選ばれている。その後に個別の面接が行われ、そこで薬物使用について尋ねられているため、実際に薬物を使用していると答えたのは全体の4割程度になっている。ネットワークについては、Barrera (1980)を参考に6つのソーシャルサポートについての質問から抽出されている。性的行動に関しては、過去90日間でメインとカジュアルなセクシュアル・パートナーと行ったvaginal, oral, analの三つのセックスにおけるコンドーム使用を聞いている(2×3で6通りの性行動のパターンが調べられた)。その他、対象者のsocio-demographicな属性についても尋ねている。
分析の結果、以下のようなことが分かった。まず、コンドームに対する規範とコンドーム使用との関係に関しては、anal sex以外の二つに関して、三つの規範全て及び年齢、ジェンダー、HIVへの陽性反応の有無、教育、薬物使用、そして、教会への参加頻度が影響していることが分かった。特に、メインのパートナーとのoralの際に規範の効果は最も大きくなっている。しかし多変量解析にかけると個人的な属性のほとんどは有意ではなくなり、規範に関しては一部支持されることとなった。ネットワークとコンドーム規範の関係に関しても、個々には有意となるが、変数を複数設定した場合には、ネットワークの中で健康問題に関するアドバイスをしてくれる人を持つことのみが全ての規範に対して有為に働く。薬物使用者に限ったネットワークと規範の関係については、教育と健康問題のサポートが全てに有意に働いたほか、ネットワークのdensityも3つのうち2つに有為に働いている。男女の比較では異なるパターンが見られた。分析結果をまとめると、規範は性行動におけるコンドーム使用に影響を及ぼし、ネットワークのうち、その規範に対して影響を与えるのは健康問題のサポートであることが分かった。
Pichler, F., and C. Wallace. 2009. “Social Capital and Social Class in Europe: the Role of Social Networks in Social Stratification.” European Sociological Review 25(3):319–32.
この論文では、Euroバロメーターのデータを使用して、ヨーロッパ各国におけるソーシャルキャピタル(SC)と階級の関係について考察している。分析に際しては、formalなSCをボランティア集団を通じた社会参加、infomalなSCを家族、友人、同僚と定義している。分析の結果、(1)専門・管理にあたる高階層の人々はformalな組織を通じたネットワークの参加頻度が多く、ネットワークを構成する人々の属性も多様である(2)労働者階級はinformalな紐帯が強いが、失業している人は子の限りではない(3)南・東ヨーロッパ及びイギリスでは社会階級とSCの関係が強く、これはジニ係数を投入することで部分的に説明されている。一方で、北欧諸国は階級とSCの関係が薄く、エスピン=アンデルセンの福祉国家レジーム論を反映している。
Granovetter M. S., 1973, The strength of weak ties, American Journal of Sociology, 78, 6: 1360-1380.
理論的な仮説の部分だけおさらい。まずグラノベッターは紐帯を強い紐帯と弱い紐帯に分ける。これは概念的な区分であって、経験的な研究のレベルでは接触頻度によって操作化される。次に、強い紐帯の持つoverlapの効果を定義する。Sという集団がA, B, C, D, E…という人々から構成されているとする。グラノベッターは仮にAとBが強い紐帯で結ばれているとしたら、Sの集団に属する個人が強い紐帯もしくは弱い紐帯で結びつく可能性が増すと考えた。さらに、彼は強い紐帯がもたらすhomophilyについても言及する。仮にA, B, Cの三者のうち、A-B, B-C間に強い紐帯があったとしよう。このとき、関係がないBとCはAと似た行動をすることを通じて紐帯を結ぶ可能性が高まる。逆に言えば、A-B, B-C間が弱い紐帯であったならば、C-Bが強い紐帯になる隔離は低くなると考えられる。
このような仮定を定義すると、以下のような禁じられた三者関係forbidden triadが想定できる。すなわち、A-B, B-C間が強い紐帯で結びついているにもかかわらず、C-B間に何も紐帯がないような三者関係である。C-B間には少なくとも、弱い紐帯が存在するはずだとグラノベッターは考えた。
このforbidden triadを応用すると、ネットワークにおいて重要な役割を果たす紐帯は必ず弱い紐帯であると言える。仕事を得る時のような情報が流れるネットワークを考えるとき、ある集団間を橋渡しするブリッジと呼ばれる人々及びその紐帯の役割は大きい。このブリッジは弱い紐帯でなくてはならない、なぜなら、強い紐帯であった時には先のforbidden triadのように、B-C間がブリッジだとしても、A-B, B-C間で紐帯ができる可能性が高く、その結果B-C間は唯一のブリッジではなくなってしまうからだ。
こうした仮定をおいた上で、グラノベッターは実際の経験的なデータを参照して、このような弱い紐帯が仕事を得る際に重要になることを論じる。
Campbell, K. E., P. V. Marsden, and J. S. Hurlbert. 1986. “Social Resources and Socioeconomic Status.” Social networks 8(1):97–117.
この論文では、「資源としてのネットワーク」にとって重要な二つの問題を議論している。ネットワークが資源として機能するための条件とは何だろうか。まず、グラノベッターの弱い紐帯のように、異なる集団間をつなげるようなレンジの広さが考えられる。次に、個人がどこに位置しているかによってネットワークから得られる利益も異なってくる。この論文では以上のように考え、レンジをどのように測るか及びそれらが有利な社会経済的な属性SESという配置(composition)と関連するかについて検討している。資源としてのネットワークは、実際に資源として用いられたネットワークを対象にした分析がなされてきたが、この論文では、比較可能性と仮説検証のしやすさから一般的な社会調査によって抽出されたネットワークから両者の問題を検討するとしている。レンジの計測においては、考えられるレンジ15種類(3種類のsize, 6種類のdensity, 人種や性別など4種類のproportion、及び地理的距離と年齢の多様性)を因子分析にかけて6つの因子を抽出している。次に、これらのレンジが実際に有利な配置と関係にあるかを調べるために社会経済的地位(教育と家庭収入)との相関が求められ、仮説と一致した見解が得られた。
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