January 30, 2014

それでも私は諦めないソシャネ論文(23/107)


Bernard, H. R. et al. 1990. “Comparing Four Different Methods for Measuring Personal Social Networks.” Social networks 12(3):179–215.

 この論文では、ego networkを抽出する四つのname generatorの方法を2つの集落で比較検討している。第一の方法はemotional support groupと呼ばれるもので、「大切なことを話す人」「寂しさを感じた時に話す人」など、情緒的なサポートを提供してくれるintimateを抽出する際に用いられる。二つ目の方法はsocial support groupと呼ばれるもので、お金を借りたり、看病をしてくれたり、そうした具体的なサポートを提供してくれる人を抽出する際に用いられる。今回の調査では11個の質問が用意されている。第三の方法はthe reverse small world technique (RSW) と呼ばれるもので、やや複雑な手法をとっている(詳細はKillworth et al. 1984にあるらしい)。まず、世界中に散らばる500人の架空の人間の名前のリストを作成する。400人はRSWの実験をする時に毎回用いられる標準として、100人が各調査ごとに追加される新しい名前として設定される。各人にはどこに住んでいるかとどのような職業に就いているのかという情報が付されており、実験の対象者はsmall world techniqueについて説明を受けたあと、この計500人それぞれにたどり着くために最も適切な最初の人物を自分のネットワークから選んでもらう。最後に、the global networkと呼ばれる手法がある。まず、対象者の住む地域の電話帳から305人がランダムにリストアップされる。対象者はこのリストの中で自分が知っている人の名前を挙げてもらう。先行研究から、この方法では挙げられる知人の名前はごく限られていることが分かっている。

 対象となった地域はフロリダにあるJacksonVilleという集落(Jと略記)、もう一つがメキシコシティにある一集落(MCと略記)。この論文では、以上の四つの方法で挙げられる名前を二都市間でその平均や分布を比較した後、男女別、各質問別ごとの違いを検討している。(ちなみに回答時間は4時間から12時間だそうだ。。。)また、RSWに関しては、先行研究との比較も行われている。分析自体は非常にテクニカルなものなので、大まかな要旨を述べることはできないが、(1)どの質問においてもMCの対象者が挙げた人数はJより少なかった。(2)Jの分析結果は全国(アメリカ全土)のサンプルの結果と似ているものだった。(3)対象者ごとの回答分布の違いを説明する要因は見つけられなかった(だが、旅行者は大規模なネットワークを持っていることが多いこと、年齢は非線形的な効果があることは分かった。)(4)女性の方が男性よりも多くの名前を挙げることが分かった、などが挙げられている。これ以外にもRSWに関しては、職業的地位が上昇すると、知人を選んだ理由として職業を答える割合が上昇することやターゲットの居住地(架空のターゲットは北アメリカや西ヨーロッパなど世界10地域と対象者の地元に均等に配分されている)ごとに、知人を選んだ理由として居住地を回答する割合に一貫した傾向が見られることなどが分かった。例えば、アフリカのターゲットは知人を選んだ理由としてlocationと答える割合が低いが、日本や中国の東アジアのターゲットはその割合が高い(つまり、知人がこれらの国に滞在した経験がある、などが理由に挙がりやすい)。最後に各方法によって重複が生まれているかどうかに関しては、やはりemotionalのsocialとの重複率は9割近いものだった(emotionalの方が母数が小さいため、socialからみると重複率は3割だが、これはemotional intimateの重要性を物語っている)。socialのRSWとの重複率は3分の2程度と欠落が目立っているが、逆から見るとRSWの2割程度はsocial supportの質問と名前が被っている。

Mok, D., and B. Wellman. 2007. “Did Distance Matter Before the Internet?.” Social networks 29(3):430–61.

 この論文では、Wellmanらが主導して行った1978年のイースト・ヨーク調査を利用して、(掘り出すに近いが)1970年代において、距離distanceがface to faceの面会と電話の交流頻度、そしてソーシャルサポートにどのような影響を及ぼすかをマルチレベル分析で明らかにしている。独立変数には相手との親密性と相手がどのkinshipに該当するかも設けられている。その結果、face to faceの交流は5 mileを境に大きく減少すること、その後も距離が離れるごとに交流頻度を減らすが、再び50 mileと100 mileの間で大きな断絶があること、電話の交流頻度は100 mileを境に大きく減少すること(ただし、トロント市内の通話は無料であるのに対して、市外へかける際には料金がかかることには注意しなくてはならない)。ソーシャルサポートに関しては、食べ物や調理器具を貸すことや少額のお金を貸すこと、そして大きな感情的サポートの提供には距離の影響が有意に見られた。最初の二つは物理的な距離に起因するが、感情的なサポートに関しては、日々接する可能性が高いことが重要であることを示唆している。筆者らは、この分析が1970年代のものであることから、インターネットや携帯電話が発達した現代との比較研究が待たれるとしている。

Wellman, B. et al. 2003. “The Social Affordances of the Internet for Networked Individualism.” Journal of Computer‐Mediated Communication 8(3).

 この論文では、インターネットがコミュニティにおける人間関係と組織への参加に与える影響をcivic involvementの観点から考察している。元来、コミュニティとは互いを知っている集団に属する人々による社会的な相互作用から構成され、それは地理的条件によって制約されると考えられてきた。様々な社会変動(産業化や情報化)は既存のコミュニティに大きな影響を及ぼすようになると、上記の伝統的な見方に対して、社会変動とコミュニティの関係を問うCommunity Questionが掲げられるようになる。こうした研究は、コミュニティはもはや地理的条件によって定義されるものではなく、個人の利益に従ってつくられるものになってきているという主張をした。これは、既存のコミュニティが崩壊しているのではなく、そのプロセスが変わっているというロジックをとる。共通の利益を基盤にしたコミュニティが現代的なものとすれば、インターネットの発達はより地理的条件を無効にし、個人主義的なコミュニティの形成を助けるはずだという旨の主張を、筆者らは北アメリカの調査とカタルーニャ、及び日本の調査との比較から導きだしている。ひいては、こうした利益ごとに結成された集団が地理的制約を超えた運動を可能にし、それが既存の政府や民主主義の構造を変化させる可能性を指摘している。

 コメントとしては、論文ではネットワークを頻繁に利用している人ほど、近隣住民との社交も多くなるという結果を発見しているが(そして、これが既存のコミュニティとインターネットの融合例として紹介される)、それはインターネットが使われてなかった時代の紐帯が移行したことを意味するのであって、もともとインターネットを使用するデジタル・ネイティブの様な世代が友人の家を今までのように訪問したりするかは疑問が残る。

McPherson, M., L. Smith-Lovin, and M. E. Brashears. 2006. “Social Isolation in America: Changes in Core Discussion Networks Over Two Decades.” American sociological review 71(3):353–75.

 この論文では、1985年と2004年のGeneral Social Survey を使用して、アメリカ社会における親密な友人(confidant)の減少について議論している。


 まず、先行研究の検討から、いわゆるdiscussion network(who are the people with whom you discussed matters Important to you?)によって抽出された人々が日々頻繁に会う重要な他者であることが確認される。比較の結果、ネットワークサイズの減少(平均で2.94→2.08、特にno confidantの増加が10%から24.6%と顕著)、配偶者以外の回答割合が減少、densityは変化がないものの、confidantsとの接触頻度や交流期間は増加しており、より親密性が増しているという解釈が可能になっている。年齢、教育、人種、性別ごとのheterogenityを検討すると、変化がないことが観察されるが、人口変動を重み付けとして加えると、年齢と教育はより均質的に、人種はより異なる人種をconfidantsとして答える傾向になっている。またネットワークサイズと内訳におけるkinshipとnon-kinshipの割合に対する個人的属性の影響も検討している。主立ったものとしては、教育程度が高ければ高いほどconfidantは増加し、この影響力は二時点間で増加している。相変わらず女性の方が多くのkinshipを答える傾向にあるが、1985年時点では男性よりも少なかったnon-kinの人数は2005年では変わらないものになっている。最後に、こうした変化がvalidityを持つものかについて、調査設計や質問の順番をもとに検討している(テクニカルな部分なので省略、後半部分については再読)。

No comments:

Post a Comment