ソシャネ論文(10/107)
Burt, R. S. 1984. “Network Items and the General Social Survey.” Social networks 6(4):293–33
この論文で、BurtはGSS調査にName Generatorの質問を追加するに際してどのような問いが可能になるのか、また各質問をどのように設定するべきかという議論をしている。調査設計に近い論文。
1章の序論の後、2章 Questions of general concernでは、GSSに用いられた質問の性格が詳細に紹介された後、先行する研究の紹介、そして既存のGSS調査における社会関係を問う質問と比較した時のname generatorの強みが紹介される。最後に、どのようなリサーチクエスチョンが考えられるかが議論されており、人間同士の関係が彼らの持つ属性によってどれくらい分断しているのか、統合しているのかというネットワークに関心をおいた問いや、既存のGSS調査で聞かれた問いを従属変数とした時のネットワークの効果はどれほどかという問い、さらに既存の属性や考えなどとの相互作用を測ることも提案されている。
3章 Questions of specific concerns with the proposed itemsに入ると、具体的にどのような方法でネットワークを集めるかが紹介されている。最初に、3.1節で インタビュー時間について検討された後、3.2節では、どのようにして人物を特定するかを議論している。まずGSS以前に行われた調査における人数の分布から、名前を挙げる人数を3人に限定することが時間的制限を踏まえた理想的な基準として提案される。また、name generatorを一つにするか複数にするかという問題が議論される。問いを複数設定した方が多くのネットワークについて詳細に聞ける一方で時間的コストがかかるのは想像に難くないが、Burtによれば複数の問いを設定することのデメリットとして、あまりにも細かなネットワークを聞くことはGSSのような総合的な社会調査の目的に沿わないこと、特定のネットワークを聞いてしまうと、他の調査との比較ができないこと、さらに対象者にとっても重要とは必ずしも言えない場合が出てくることが述べられる。以上より、明確な基準を示しつつも詳細については対象者が定義できるようなsingle generatorの有効性が説かれる。具体的には、重要な問題について議論するという質問が親密な関係にある他者を明らかにする問い採用される。実際にこの質問を実施してみると、挙げられた人物の数も一定数おり、社会関係も友人や仕事仲間など多様であること、ここであがった人々が実際に親密だと考えられていること、また年齢や性別などもばらけることからその質問の妥当性が説かれている。最後には、3.3節でどのようにして人物間の関係を特定するか、3.4節でどのinterpreter itemsを選ぶか、3.5節で対象者-人物間の関係のデータをどのように得るか、3.6節で どのようにデータを配布するかが述べられる。
Otte, E., and R. Rousseau. 2002. “Social Network Analysis: a Powerful Strategy, Also for the Information Sciences.” Journal of Information Science 28(6):441–53.
この論文では、SNAの発展に触れながら、論文データベースを用いてSNAの発展に寄与した研究者同士のネットワーク分析をしている。また、情報科学とSNAとの関連についても論じており、最後には情報科学においてどのSNAの研究者が多く論文を執筆しているかが述べられる。SNAの基本的な説明をしている前半は省略する。4章から、CSA Sociological Abstractsなどの論文データベースを用いて、1963年から2000年までに執筆されたSocial Network Analysisをテーマとする論文の推移を紹介している。期間中の論文総数は1601であり、1980年代から持続的な論文数の増加が確認できる。筆者はこの要因にWellmanが主導して設立したINSNAや雑誌Social Networksの創刊が背景にあると分析する。また、関連分野にまたがる研究も年を追うごとに増加していることが分かった。5章では、論文の共著者リストをデータに研究者のネットワーク分析を行っている。1601の論文の中で、三度以上執筆者に名を連ねている133人をco-authorship graphにかけたところ、57人のコンポーネントとその他数人から鳴る小さなコンポーネントに分かれたため、前者に限定して議論を進めている。この53人の中で最も投稿数が多いのは上記のWellmanで、彼はdegree centrality (9)もいちばん高い結果になっている。しかし、意外にもclosenessとbetweenessはDoreianという研究者がいちばん高いスコアを示している。続いて、筆者は情報科学の論文データベースの中に先のデータベースで6本以上SNAについて投稿している研究者の論文がいくつあるかを明らかにしている。47人の著者の論文のうち、12本がこの情報科学のデータベースに登録されていることが分かった。その論文の執筆者を見ると先ほどあがったDoreianが最も投稿数が多い(8)ことが分かった。
Edwards, G., and N. Crossley. 2009. “Measures and Meanings: Exploring the Ego-Net of Helen Kirkpatrick Watts, Militant Suffragette.” Methodological Innovations Online 4(1).
この論文では20世紀初頭の婦人参政権運動家(Suffragette)であるHelen Kirkpatrick Wattsのego networkを彼女の手紙やスピーチのアーカイブ記録から明らかにすることを通じて、社会運動論における社会ネットワークの重要性とともに、量的アプローチと質的アプローチを同時に行うことで方法論への貢献も目指している。具体的には、ネットワーク分析の量的アプローチで二値として処理されてしまうような人間関係に対して、質的な資料を通じて、そこにどのような相互作用があったのかを分析することができたり、ハリソン・ホワイトが主張するようなネットワークや相互作用において重要なアイデンティティーがどのように形成されたのかを分析できるという。
方法論的な部分に焦点を当てると以下のようなことが論じられている。手紙の質的分析を通じて、手紙はHelenではなく彼女の親に向けて書かれているものが多いことが分かった。これを裏付けるために、手紙のやり取りをグラフ化したネットワーク分析をすると、確かに両親の中心性が高いことが分かる。他にも、質的な分析からは、彼女の運動家としてキャリアにとって家族や彼女が所属した組織WSPUといった密度の濃い様々な社会圏(Social Circles)が影響を与えることが分かる。このような分析からは彼女に影響を与えた個人の存在にも気づくが、これは質的な分析だけでは分からない以下のような問いを導くという。すなわち、こうした他者がネットワークの中でdistinctiveな位置にいるのか、ネットワークは結束しているのか、様々な社会圏はそれぞれに独立しているのか重なっているのか、彼らの属性はネットワークにおけるdistinctiveな社会圏と言えるのか、それとも一つの社会圏におけるいくつかのカテゴリに過ぎないのかといった問題である。筆者はdensityやblock modelingといったネットワーク分析の指標を用いることでこの問いに答えることができると主張する。
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