November 29, 2013

多元主義的社会階層としてのウェーバー階級理論


2013年11月にChan and Goldthorpeの一連のプロジェクトを読みながら、ウェーバーの階級理論をごく簡単にまとめてみました。やたらアクセス数がよいので、恐らく、大学で社会階層論を学ばれている学生なんかがレポートのネタ捜しの結果、行き着いたのかもしれません。階層と階級の区分とか、ややこしいですよね。黎明期から近年まで、階層と階級の区分は社会的資源の分布を連続的に捉えるのか、質的な差異を強調するのか、また(特に日本では)マルクス主義は階級を使用する、といったような棲み分けがされていましたが、最近では両者を互換的に用いる人が大半です。


以下、役に立つ変わりませんが、ご活用ください。


  マックス・ウェーバーの階級理論の特徴はその多元的主義価値観にあるといっても過言ではない。ウェーバーの理論を継承した階層研究者は、はじめに労働市場と雇用関係によって形成される社会的な権力(power)と生活機会(life chance)に注目する。ウェーバー及び彼の理論の継承者は、こうして経済的に条件づけられ社会階層が威信や組織における権力を生み出すと考えた。結果としてウェーバー理論では階級(class)・地位(status)・党派(party)、以上の三つの側面から不平等が生じる過程を捉えている。注意すべきは、この三つの要素は相互に関係し合いながら独立に生じると考えられている点にある。例えば、複数の地位集団(status groups)は必ずしも社会階級(social classes)の秩序に依存する訳ではない。こうした視点は、資本家・労働者といった階級があらゆる不平等を形成する源泉と考えたマルクス主義的階級論とは対照的である(Pakulski 2005)。

  ウェーバーの枠組みを発展させた最大の功労者であるJohn H. Goldthorpeは以下のような社会階級の分け方を提示している。まず、労働市場における雇用関係から使用者(employer)と労働者(employee)、そして自営業者(self-employed workers)の3つの階級を想定することができる。このような雇用関係の地位に加えて、職業の種類を考慮に入れた結果、管理職、専門職、小規模経営者(農業者を含む)、自営業、技術職、技能職、被技能職に分類され、さらに管理・専門職に地位の上下を加えた9階級区分が成立する。さらに社会的地位に関しては、Laumann(1966, 1973)に従って、職業を単位とする地位順序を作成している(Chan and Goldthorpe 2004)。

  こうした不平等を生み出す要素が多元的だとする見方は、現在でもなお経験的研究に応用されている。近年注目が集まっている文化消費を例にして考えてみよう。階級が客観的な経済機会を意味しているのに対して、ウェーバーは地位が集団間を境界づける間主観的な差異(distinction)として機能していると考えた(Chan and Goldthorpe 2007a)。これに従って、Goldthorpeはライフスタイルや文化消費を地位と結びつけて議論している。彼はTak Wing Chanとの共同研究で、音楽、映像美術、新聞などの文化消費が階級ではなく地位と結びついていることを明らかにした(Tak Wing Chan and John H. Goldthorpe 2005, 2006, 2007b, 2007c)。

  もっとも、ウェーバーに忠実に従おうとすると、階級と地位の対比が問題となる。ウェーバー (1946)の古典的な定義では、経済的な資本から成立する階級(Class)以外に、所属する集団の利害に基づいた地位(Status)が社会階層を形成する要因とされてきた。この考えに基づくと、階級は経済的な資源であり、集団間の差異は程度的なものであるとされるが、地位は集団に対応するものであり、集団間の差異が威信的な文化によって強調されることになる。

[文献]

Chan, T. W., and J. H. Goldthorpe. 2004. “Is There a Status Order in Contemporary British Society?: Evidence From the Occupational Structure of Friendship.” European Sociological Review 20(5):383–401.
Chan, T. W., and J. H. Goldthorpe. 2005. “The Social Stratification of Theatre, Dance and Cinema Attendance.” Cultural Trends 14(3):193–212.
Chan, T. W., and J. H. Goldthorpe. 2006. “Social Stratification and Cultural Consumption: Music in England.” European Sociological Review 23(1):1–19.
Chan, T. W., and J. H. Goldthorpe. 2007a. “Class and Status: the Conceptual Distinction and Its Empirical Relevance.” American sociological review 72(4):512–32.
Chan, T. W., and J. H. Goldthorpe. 2007b. “Social Status and Newspaper Readership.” American journal of sociology 112(4):1095–1134.
Chan, T. W., and J. H. Goldthorpe. 2007c. “Social Stratification and Cultural Consumption: the Visual Arts in England.” Poetics 35(2-3):168–90.

Pakulski, J. 2005. “Foundations of a Post-Class Analysis.” , 152–79 in Approaches to class analysis, edited by Erik Olin Wright. Cambridge: Cambridge University Press.
Weber, Max. 1946 “Class, Status, Party” in Max Weber: Essays in Sociology. Oxford University Press. tlanslated by H. H. Gerth and C. Wright Mills. 180-195. (reprinted in Grusky D. Ed. 1994. Social Stratification. Westview. 113-121.)


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