March 29, 2018

(専門)社会調査士の資格取得にまつわるQ&A

以前TAとして教えた授業の学生さんが、「大学院進学を考えているのだが、調査実習を履修する必要はあるのか」と尋ねてこられたので、少し書いておきます。

社会学系の学部や研究室で学んでいると、「社会調査」が必修だったり、「社会調査実習」を履修することが推奨される場合が多いです。

社会学では、理論的な研究と同様、社会の実態を把握するための「社会調査」という分野が重要視されています。そして、大学で開講される近年の「社会調査」にまつわる科目は、多くの場合「社会調査士」という資格を取得するための要件として課されることが増えてきました。

この「社会調査士」を取ることと、社会学関係の大学院に進学することや研究職につくことの間の関係は独立です。ただし、現状、社会学関係の教職につかれる方の多くが社会調査士の資格を持っています。

そのため、社会調査を履修しないと院進できないのか、であったり、社会調査士の資格を持っていないと教職に就けないのかという点が混同されながら、研究者志望の学生が社会調査系の科目をなんとなく履修している現状があるかもしれません。

多少なりともその「なんとなく」を解消できればよいと考え、この記事では社会調査系科目と、大学院の進学、及び大学での研究職の関係について書いています。

というわけで、この記事では、そもそも社会調査の意義とは何なのか、あるいは民間就職にとっていかほど必要なものか、あるいは社会調査士制度自体の評価などは、範囲外となりますので、あらかじめご了承ください。社会調査士の資格取得にまつわるQ&Aのようなものとして読んでください。

社会調査士・専門社会調査士の概要と取得要件(具体的にどのような科目を履修すればよいのか)などの基本的な情報については、社会調査協会のページをご参照ください。

・社会調査(実習)を履修してないと大学院に進学できないの?
→できます。ただし、社会調査系の科目を履修されている場合、院試に受かる可能性は高くなると思います。

社会学系の大学院の院試では、社会調査にまつわる問題が出されるからです。それは、例えばある変数の分散やクロス表のカイ2乗値を求めろ、という問題かもしれませんし、ある調査を企画する際に、どのようなサンプリングをするべきか、といった問題かもしれません。

こういった問題は、社会調査系の授業を履修したり実習に参加していれば、比較的容易に回答できると思います。ただし、院試はあくまで試験ですから、社会調査の授業を受けたことがなくとも、自習でカバーすることも十分に可能だろうと思います。

・社会調査士をもっていないと研究職に就けないのか?
→そんなことはありません。ただ、持っていた方が便利です。なぜかというと、社会調査系の科目を教える際には、院レベルの授業を履修することで取ることのできる専門社会調査士資格を持つことを求める場合があるからです。

具体的にいうと、JREC-INなどの教員公募をみると、資格要件に「一般社団法人社会調査協会による専門社会調査士の資格を取得している者」などの記述が書かれている場合があります。あるいは、非常勤講師の公募についても、教える科目が社会調査系の場合、常勤教員の公募と同様、専門社会調査士の資格を持っていることが要件として求められます。というわけで、資格を持っていると非常勤講師の職も見つけやすくなるとは思います。

・専門社会調査士を取りたいが、学部の時に社会調査士用の科目を取るのを忘れてしまった!
社会調査士資格は、専門社会調査士と一緒に取得すると申請料が割引されるため、専門社会調査士を取ろうとする人の多くは、二つを同時に申請する傾向にあります。
しかし、いざ専門社会調査士の申請をしようとすると、社会調査士資格取得のために必要な科目を取り忘れていた!というのは、比較的よく目にする事態です。

この対応策は二つあります。一つは学部の授業を履修する方法、もう一つは調査協会が開催する講習会に参加する方法です。

(1)学部の授業を履修する。
大学院生が学部の授業を履修して単位を取得することはできます。個々の運用は大学によって異なるかもしれませんが、弊学研究科・文学部では、大学院生でも学部開講科目を履修し、単位を修得することが可能です。ただし、この単位が修士あるいは博士の修了単位として認定されることはないので、注意が必要です。

(2)社会調査協会が開く講習会に参加する。
これはS科目と呼ばれ、社会調査士科目のA、B、Cに対応しているS1科目とD、Eに対応しているS2科目があります。何を隠そう、執筆者の私も学部の時にE/F科目を履修していませんでした。そのため、社会調査協会のS2科目を履修することで、学部の時にとり忘れたE科目を回収しました(E/F科目はどちらか一つを選択すればよい)。

なお、S科目講習会にはいくつかの注意点があります。まず、S科目講習会は専門社会調査士をとりたい院生・社会人のための講座なので、社会調査士のみの申請には使用できません。同様の理由で、学部生は応募することができません。最後に、S1、S2科目の講習会は隔年開講となっているため、タイミングが合わないと2年近く待つ必要があります。

学部の授業を履修する場合と比べた時のS科目の利点として、集中講義のような形で短期間に科目を履修できる点があげられます。その一方で、S科目のデメリットは講習会参加のために2-3万円の受講料が必要になる点です。調査士資格取得までの道のりは、少なからず課金ゲーの側面があります(個人的見解)。

参考URL:http://jasr.or.jp/task/seminar.html

・どうやって取得要件を満たしているか調べるの?
→調べましょう。ただ、若干めんどくさいので覚悟してください。社会調査士・専門社会調査士でページが別になっているので、該当する方に進み、「認定科目一覧を見る」を選択してください。

参考URL:社会調査士資格制度参加校(地域別)専門社会調査士資格制度参加校(地域別)


所定の手続きを経て、社会調査士・専門社会調査士になるともらえる手帳(実用性には乏しい)

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