June 20, 2021

東洋経済

のジェンダー特集を読んだ。現代思想や世界ではなく、比較的お堅い経済誌でこの手の話が特集されることは画期的。重要なテーマを満遍なくカバーしているけど、職域の男女分離を考える際、例えば同じ大卒でも、大学の選抜度や専攻が男女で異なり、それがなぜかまで考えることが必要かなと思った。

あと夫婦別姓の話で、両論併記で賛成派だけではなく、反対派の意見を取り上げて、高市早苗から子の氏や家族の絆といった話だけではなく、戸籍制度との兼ね合いについての発言を引用しているのは良かったと思う。

June 16, 2021

東大生の官僚離れは今に始まったことではない

 とある記事を周りの人がたくさん引用していました(私は朝日新聞デジタル契約してないので見れませんが)←友人に頼んでみせてもらいました。

「日本落ちるだけ」官僚選ばぬ東大生 めざす安定の形は

https://www.asahi.com/articles/ASP6G5TL1P67UTIL024.html

官僚と一口に言っても安定性を求めてる人もいれば、若い時から「大きな仕事」を任せてもらえることに魅力を感じる人など様々な気がします。長時間労働への忌避や官僚の社会的評価が不祥事によって下がることで前者が、あるいは政治主導の進展によって後者のタイプが流出してるのだろうと思います。特に財務なんかは後者の流出が多そうです。その点では、官僚の質は相対的に落ちてるかもしれません。

東大生の官僚離れは今に始まったことではありません(朝日記事では2015年から減少が始まったように書いていますが、実際にはそれ以前から東大生の官僚離れと見られる現象は生じています)。入試で文一の合格点が文二を下回る以前に、私が在学してた10年前近くには、すでに法学部の定員割れが起こっており、話題になっていました(=文科一類の人が法学部に進学しなくなった)。もうその頃にはすでに「大きな仕事」志向の人は財務・外務などと外コンを天秤にかけて後者を選び始めてた気がします。

大学時代の友人との会話から感じた個人的な印象に過ぎませんが、官僚とコンサルを比べるタイプの人にとって重要なのは、若い時から大きな仕事を自分の裁量でこなすことで、どれだけ自分が成長できるかにあったように感じます(少し穿った見方かもしれませんが、実際そういう旨の発言を聞いたことがあります)。

そういう志向性の人は昔から一定数いたはずで、彼らが官僚をキャリアとして選ばなくなったのには、政治主導や度重なる不祥事もあるでしょうが、個人的には外資系コンサルなど、競争的な民間企業が昔よりも台頭してることの方が大きいのかなと思います。朝日の記事で最初に引用されている方は、長時間労働への忌避を官僚を選ばなかった理由の一つに挙げておられますが、代わりに選んだ外資系コンサルが働きやすい職場かと言われると、結局のところ日本では、繁忙期に徹夜覚悟で働く必要があるのは官僚もコンサルも変わらない気がします。労働環境のブラックさに引きずられると、外コンが選ばれる他の理由を見逃してしまうのではないでしょうか。

財務省や外務省が典型ですが、若い時から「大きな仕事」−− それは人によって定義が違うでしょうが、国の何千億という予算を動かすであったり、各国の意思決定層と折衝したりとかでしょう−− をこなしたいと考えている人にとっては、年功序列・終身雇用の安定性よりも、各々が定義する自己投資に資する企業があれば、そちらに行くはずなのです。したがって、この記事で触れられているような安定性に価値を置くような人が官僚離れの代表であるような書き振りが必ずしも正しいとは言えないでしょう。同様のテーマを数年前に扱ったNHKの記事が取材したような、仕事を通じた個人の成長を考えて官僚ではなくコンサルを選ぶ人も一定数いるのではないかと思います(安定性だけを考えるのであれば、銀行や東京都、あるいは働きやすいメーカーなどの民間企業に行けばいいと考えると思うのですが)。

官僚を最後までやり遂げようとする人がいる一方で、官僚をキャリアの一つのステップとみなしている人は昔からいるはずです。そういう人が官僚をファーストキャリアとして選ばなくなったことも、東大生の官僚離れの一要因としてはあるでしょう。すでに若干触れましたが、このタイプの人の方が、安定性志向の人よりは優秀な人が多い気がしています。したがって、仮に国の屋台骨の衰退といった懸念を考える時に、より危惧すべきはこの層の流出だろうと思います。

東大に入るまでは、官僚になりたい人というのは公僕志向というか、国の役に立ちたいという気持ちが強い人が多いのかなと思っていた節があります。実際、そういう人は一定数いるのですが、同時にそういうマインドの人ばかりではないんだなと印象に残ったのを覚えています。もちろん「大きな仕事」志向の人と公僕タイプの人は両立します。例えば、財務省を数年勤めた後に退職して、地方自治や国政の道に進む人はこのタイプかもしれません。

まとめると、長時間労働を是正し、職場環境を整備し、給料をあげても、外コンに流れて行った人(流出をより危惧するべき層)は戻ってこない気がします(特に男性は)。クオリティコントロールとしての解決策の一つは(これもすでに起こっていることみたいですが)民間からの出向をもっと増やすことでしょう。外コンにいる人に、このプロジェクトに関わって欲しいので、2年間出向に来てくれませんか、そういうサイクルをもっと増やしていくのです。そのためには、年功序列のローテーション型の雇用から、ジョブ・デスクリプションを明確にした、いわゆるジョブ型雇用を進めることが望まれそうです。日本では評判の悪い、というか誤った理解が進むジョブ型雇用ですが、個人的には官僚のトップ層などはこうした雇用形態をどんどん進めていいのではないかと思います。

リアル帰国チャレンジ

いままでタイトな乗り換えに間に合うかであったり、出発までにパッキングが終わるかを冗談まじりに「帰国チャレンジ」と言ってきたのですが、どうやら今回はリアル帰国チャレンジが待っているようです。

というのも、(ご存知の方も多いと思いますが)2月から検疫法が改正され、日本に帰国する際に必要な手続きが増え、格段に入国が面倒臭くなったからです。書類の不備で到着後3時間で送還された人さえいます。こんな経験もこれからの人生であるか分からないので、帰国までの過程をまとめておきます。

6月16日

私は大学が所有するアパートに住んでいる事情で、週に2回のPCR検査が義務付けられています(通算50回ほど検査を受けました)。ワクチンを打ってからはこの週2回の義務が面倒に感じ始めていたのですが、プリンストン の検査方法は唾液(saliva)で、日本政府が求める方式に合致していました。さらに、検査当日にクリニックの担当者が証明書を発行してくれるという話を先に帰った学部生から聞いていたので、私もその例に従い、事前にアポを取った上で、前日(15日)に提出した検体の結果が分かり次第、メールしました。ものの数時間で政府指定の証明書に必要事項を入力してくれたものが送り返されてきました。

その後、厚労省の常軌を逸したページを見ながら入国に必要なアプリをインストールしたり質問票を記入します。見つけやすいように同じグループに入れておきました。

6月17日

プリンストンにいる日本人院生の人たちと久しぶりに再開して鍋パ。

6月18-19日

午前8時に起床、シャワーを浴びて9時に出発。JFKには11時半ごろ、予定通りの時刻に到着しました。映画会に一瞬参加して、搭乗券をもらいます(ウェブチェックインは済ませていたし、預け荷物もなかったのですが、搭乗券が必要と言われました)。その際、スタッフの人に「3日間の強制隔離、かわいそうですね」とよく分からない同情をされたのですが、NJから来ていることを述べ、やや反論気味に返答してしまいました。

搭乗ゲートに着き、ビールとピザを食べながら、映画「バッドジーニアス」を見ます。タイの受験スキャンダルをもとにした映画でスリリングな要素もあり面白かったです、脚本もよくできています。

搭乗後、映画の続きを見た後に、アメリカにおけるwomen in STEMのドキュメンタリーで話題になっているPicture a Scientistを見ました。人種の部分はアメリカ的なコンテクストがあるかもしれませんが、この手の番組は学部や大学院の最初の授業あるいは学会として見てもらう機会を作るべきかもしれません。Nancy Hopkinsさんの行動力には驚くばかりで、彼女を主人公にした映画が別途作られるべきなのではないかと思ったほどです。

その後しばらく寝て、起きた時には残り6時間ほどで成田に着く頃になっていました。次に見た映画は20th Century Women、ちょうど昨日の鍋パで、70年代フェミニズムの話をしていたのでタイムリーでした。最近気になっている映画製作・配給会社であるA24が配給しています。

続いてイカロスというネットフリックスオリジナルのドキュメンタリー。ロシアの組織的なドーピング不正に関するもので、オリンピックが近づいているいま、改めて見るべき映画かもしれません。この一年パンデミック絡みで有名になってしまったバッハやコーといったぼったくり男爵が出てくるのですが、この人たちの周りに存在している利害関係の闇を考え始めると、オリンピックを素直に楽しめることはできなさそうです。最後にBack to the Futureを見始めましたがが、つまらなくて主人公が1955年に戻ったあたりで終えました。

そうこうしているうちにアメリカ時間の日付が変わります。飛行機は日本時間午後4時半ごろに成田に到着しました。まず乗り換え客が先に降ろされ、その後に成田で降りる人(係員の無線では通称「成田オフ」と呼ばれていました)がまとめて係員に連れらていきます。

飛行機を出た後に、入国ゲートとは阪大側の道に案内され、まず2列になった椅子に座らせられ、30分ほど待機。この間に誓約書などの書類を記入していない人には書くよう指示が出されました。どうやら便ごとに入国者を動かしているようでした。検査もせず無為にも思える時間が続いたので、スタッフの人にこの時間は混み合うのか聞いてみると、アメリカからの飛行機はこの時間がピークで時間がかかりやすいとのこと。アメリカ以外にはカタールからの便も到着していました。

ようやく進むよう案内が聞いて、まず検査証明に不備がないかの確認をされます。その後、唾液による抗原検査が入り、過去14日間の渡航歴、およびアプリをインストールしているかの確認とその説明が入りました。検査以降は割とスムーズでしたが、インストールするアプリとその設定がまどろっこしく、携帯を契約した時のスタッフの長い説明を思い出しました。

すべてが終わり入国審査を終えたのは到着から3時間半ほど経った午後7時になっていました、無駄に長いプロセスでした。これでようやくシャバに出られます。

June 15, 2021

 留学生

日本の大学院にいた当時、留学生に関する話は人づてに聞くくらいだったが、地方の大学院では基本定員割れで、日本人よりも中国人を主とする留学生が多いことも珍しくないらしい。院から日本の留学生はまず研究生になるようで、研究生になりたいのだが指導教員になってくれないかという依頼も多いらしい。

日社から社会学を学べる大学・大学院の情報をホームページに掲載したいので所属先の大学のリンクなどを教えてくれないかという(これ自体はとても良い取組だと思う)依頼が会員への連絡としてきたけれど、これは海外の大学を想定しているのか、いないのかちょっと分からない。

英語ホームページに掲載したいという旨が書いてあるので、多分留学生などを念頭に置いてるだろうからお察しって感じなのかもしれないけど、別に国内の大学とも書いてない。

つまり文脈を読めば日本国内であることは明らかでしょうが、日社の会員が所属する大学が日本以外にあることも踏まえていないことは、自らのドメスティックさへの無自覚を表しているように見える。論文で初っ端から「我が国における」みたいにいっちゃうのと似ている。 

June 10, 2021

怠惰な日々

 ここ数日は一年で一番締め切りがなく、やる気も出ない日々、メールに返信する以外はずっと映画をみたり、小説を読んだりしている。昨日まで数日間、村田沙耶香の地球星人を英語で読んだ。ソシオパス気味の登場人物の行動によって社会の異常な部分が逆につまびらかにさせられるという筋立ては、今日見たナイトクローラーと似ているかもしれない。夜はいつか見ようと思っていたスコセッシのサイレンスを見た。小説の方は大学時代に読んで衝撃を覚えた記憶があるけど、映像にするとまた残酷さが際立つ。自分は信仰がないので評論家の解釈についてはよくわからない。

リラックスするために映画を見るというより、一人でいると人間や社会の生々しい部分が恋しくなってくるのか、最近見た作品はだいたい最後の方に登場人物が理不尽な死を遂げてる…

June 5, 2021

RC28感想

 6月2日から4日までフィンランドでRC28(国際社会学会の社会階層部会)が主催する学会があった。フィンランドは東海岸から7時間ほど進んでおり、2日の午前7時に報告したり、4日の午前5時くらいまで起きていたり、しかもその間に日本のセミナーに参加したり、数日間の間に三つのタイムゾーンの中にいて、少し体調を崩しかけた。

毎度ながら思うことだが、オンラインの学会は楽に参加できる。画面もずっとオフでいい。しかしなんだか学会に参加した気分にはならない。ウェビナーをずっと見続けただけである。新しい人と知り合う機会はほとんどない。早くin personの学会が戻ってきてほしい。

一つだけ感想を書くと、いつの間にかgeneのセッションが増えていて驚いた。数年前まではあっても1つくらいだったと思う、今回は3つ、12-3報告あった。もしかしたら、この間RAがに関心を持ち始めたので、多くなったように錯覚しているのかもしれない。

とはいえ、GWASを使った分析はHRS/Add Healthくらいで、ヨーロッパの参加者が多かったこともあり、報告の半分以上はオランダや北欧のレジスターデータ使ったtwinの分析が多かった印象。分析によっては双子の方が適切なこともあると思うが、将来的にはGWASを使った分析が主流になるだろう。メインセッションの講演でも今後genomeに関連するトピックは増える見込みがあるとする発言もあり、社会学の中でも、階層研究はこのテーマを積極的に受容していく印象をさらに強くした。