April 19, 2017

不平等に対する多世代的な見方

ほとんど写経してました。感想としては、durable inequalityの話が出てきたりで(奴隷制度は撤廃後もその後の制度を通じて持続的な効果を持つ)、Tillyの話とも近いのではないかと思った。要するに、祖父母あるいはそれ以上の世代の効果が独立してあるというのは、何かしらの制度や資本の所有による差別を正当化するロジックが必要になる。多世代間の関連はそうした要因によって程度が異なるだろうという話があったのは面白かった。その意味では、社会階層の第四世代の議論とも整合的なのではないかと思う。


Mare, R. D. 2011. “A Multigenerational View of Inequality.” Demography 48(1):1–23.
会長講演のため若干大風呂敷を広げた話なのでもろもろ注意。

問題意識:人口学における世代の問題について、我々はより離れた血縁(kin)の影響、そして親子関係が一般的に人口の伝達に与える役割について過小評価してきたのではないか。 具体的には、
・親子より離れた世代の効果
核家族内における過程の多世代的な効果
教育や資源の伝達、心理的な影響以外の再生産(出生、死亡、結婚、移民)
家系(lineage)などを分析単位として含められる新しいデータと指標

既存研究により、三世代以上の効果については懐疑的な目が向けられてきたが、それでも多世代の効果は十分考慮するべきである。
(ただし)ある世代の次の世代への効果は、単に推定された親の子どもへの影響ほどシンプルなものではない。すなわち、多世代の効果を検討する際、単に世代間の相関を乗じるべきではない。それらは再生産と組み合わさって生じるためである。世代間の地位の関連に対する我々の視点の意義は、ある個人の集団間の影響の相互関係が出生や死亡、結婚や地理的な移動と組み合わさっているという点にある。

家族の個人にとってアウトカムに対する影響を検討するときには、その家族の形成過程(因果関係)にも焦点を当てるべきである。(内生性の話?

世代間の効果と不平等は世代間移動を通じて密接に関連しているが、従来の社会移動に関する研究や人口学的な研究は二世代に限定されてきた。

Hodgeの主張を踏まえれば、家族の階層性は一時的なものであることが示唆される。祖父母の効果は、二世代アプローチに従えば、父母の影響を媒介した間接的なものとなる。一方で、多世代アプローチに従えば、祖父母の効果は直接的なものとされる。つまり、どちらが真実に近いかは経験的な検証の問題。

世代間の継承性はマルコフ的あるいは非マルコフ的な世界の見方のいずれかと整合的であると考えられる。ただし実際には、両者を峻別することは難しい(例として、地位を完全に継承している場合)。あるいは、地位の継承の程度は階層間によって異なる可能性がある。

Mechanisms of multigenerational influence
仮に非マルコフ的な継承が見られる場合、そのラグ効果はどこから来るのか?
1)制度と持続的な富の世代間継承(富が次の世代の人的資本に継承されたり、一世代の人的資本や職業が金銭的な資本に変換されれば資本による有利さは持続する)
2)人的資本や職業、所得の世代間の相関(資本自体の継承)学歴や職業に比べると収入のフローは消滅しやすい(変化しやすい)と考えられるが、実際には世代間の収入の相関は学歴や職業のそれと同じ程度。
3)富や居住の分断、あるいはエリート校におけるlegacy systemはアッパークラスにおける多世代効果の制度的メカニズムとなる。もっとも、富裕ではない家族においても世代間の移転の例は見られる。
4)血縁のニーズ、利用可能性:親の死亡や離婚、別居に伴って祖父母の縁を頼る場合がある。血縁のニーズと利用可能性の効果には階層間でその質に格差があり、これは近年になって拡大傾向にある。変化する生活様式や子どもにとって利用可能な血縁は世代間移動の研究に対して重要な示唆を与える。すなわち、社会移動の程度は家族的背景を形成する血縁をどこまで含めるかによるからだ。したがって、必ずしも社会移動を親子の二者に限定する必然性もない。
5)社会的孤立と困難の持続:アメリカ的な文脈では奴隷制度は撤廃された後でもその後の世代に持続的な不利を与えている。
6)有利さ(不利さ)の蓄積:過去の成果が将来的な生産性のシグナルとなる。これも世代間に拡張することができる。
7)新マルコフ的な出生:三世代以上の出生力の継承もみられる。
8)遺伝的要因

Demography and socioeconomic reproduction
多くの人口学的な研究は(チンギス・ハンに比べれば)観察可能な人を対象とした比較的短いスパンの世代間のプロセスに関心を持ってきた。しかし、社会移動研究はこの問題を親と子どもの(学歴や収入といった)特性を「条件付ける」ことで除いてきた。この研究伝統は「誰が成り上がるのか」といった狭い問いには適しているが、ある世代の社会経済的な分布が次の世代の分布にどのような影響を与えるかという人口学的な問いを検討するには不十分である(女性の学歴と差別的出生力の組み合わせの人口学的な帰結について論じたMare and Maralani 2006)の例。

Multigenerational studies of social mobility
社会移動の多世代分析については、以下のような拡張が試みられるべき。
差別的出生力とそれぞれの世代の生存によって世代間の効果が適切に重み付けされる。
より良いデータによって補完されること→生存・記憶によるバイアスがある回顧調査(retrospective)よりもパネル調査(前向き調査, prospective)が望ましい。
三世代以上に拡張すること。Campbell and Leeの研究など。
祖父母・家系の効果の同定に注意を払うこと(観察されない異質性に対処するため離れた家系の効果を検討する際には親以外の変数にも注目する)
世代間過程に関する二つ目のタイプの研究は、世代間移動がマルコフ仮定に沿っているかを検討する。

最後に、世代間移動がマルコフ過程にそうのか、それともより複雑な過程なのかを検討する必要がある。

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