Grotti, Raffaele, and Stefani Scherer. 2016. “Does Gender Equality Increase Economic Inequality? Evidence From Five Countries.” Research in Social Stratification and Mobility: 1–36.
google alertがやたら送られているので何かと思ってらRSSMにかなり関連のある研究が更新されていた。
Accepted manuscriptなので、今後微修正加わるかもしれませんが、最近流行り?の要因分解を用いていることもあり、読んでみる。
様々な点で夫婦の同質性が高まっているというのは幾つかの文献ですでに指摘されており(Esping Andersen 2009など)、夫婦の同質性の変化と不平等生成には何らかの関連があるのではないかという問題提起がされている(Schwartz 2010など)。現代では多くの大人は賃労働に従事しているため、(経済的な)財の多寡はまず労働市場を通じて割り当てられるが、実際に所有された財は世帯で共有されると仮定すると、個人に配分された収入が世帯間でどのように分布しているかを検討することが不平等研究には求められる。
ただし、夫婦の収入の類似性の高まりが不平等を招くかについては経験的な知見が一貫しておらず、未踏の課題である(というのが私の認識)。本論文の問題意識としては、これまでの夫婦の収入の相関を見る研究では(おそらく女性の)労働参加と所得の類似性を混ぜて測定するか、あるいは(無業を無視することで)共稼ぎに分析を絞っていた懸念が表明されている。本論文では、両者は異なるメカニズムで生じるとされている。本論文の主張はこの点を踏まえるとクリアになる、すなわち「夫婦の収入の類似性の高まりは不平等に影響せず、女性の雇用は不平等を減少させる。」
先行研究のレビューを終えた上で、筆者は制度の多様性によって不平等の度合いも異なってくるという(最近の階層論のトレンドである)視点を提出する。その上で、Esping-Andersenのレジームにしたがって国際比較を行う(この点、筆者も限界として認めているが、労働市場、家族、国家などの異なる制度の影響がごっちゃになるというデメリットがある)。
分析にはLISを用いており、比較対象として選んでいるのはデンマーク、イタリア、ドイツ、イギリス、アメリカである。分析には無業と有業、有業の中で収入のパーセンタイルで5区分の合計6区分の夫婦によるクロス表、したがって36タイプの世帯に分割した上でTheil係数で分解を行っている。このあたりはBreenらの研究とほぼ同様の手順だと見た。いずれ、夫婦の学歴や就労状態による世帯類型を行ったうえで要因分解の手法によって、不平等の趨勢の変化を見るというのはやってみたいと思う。単身世帯を除いた上で(夫婦に着目しているので)、25歳から54歳に分析を絞っているのだが、この年齢で夫婦ともに無職の層というのは一体どれくらいいるのかは気になった。ただ、Breennのように単身世帯を分析を加えることはできるだろう(Absentのカテゴリを加えれば良い)。
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