October 1, 2023

就活の途中経過

 9月初めから公募資料を順次提出していって、9月は合計で述べ53校に出願しました。内訳で言うと、アシプロのポジションが50で、ポスドクは3つです(ポスドクの公募は11-12月に本格化します)。地理的に見ると、アメリカがほとんどですが、イギリスと香港の大学にそれぞれ2つ、あとはカナダ、シンガポール、オーストラリアの大学にそれぞれ1つ出しています。

10月以降も締め切りはあるのですが、10月締切の大学についても、おおよそめぼしいところには出願してしまったので、これからはポスドク向けの公募資料の準備に入ることになります。おそらく残り15くらいは出せそうなので、これから出るのも含めて70くらいの大学に出願することになると思います。指導教員に聞いたら、彼の時もそれくらい出していたようです。僕の周りで本格的に就活をしている人に聞いても、大体60から80くらいのレンジに収まるので、ちょうど真ん中くらいかなと思います。公募書類と並行して、ジョブトークの用意をする必要があります。

就活をしてみて、思ったことが二つあります。一つが、自分が出せる公募が意外と少ないという点です。大学院の初めに噂で聞いてたのは、家族は学部の授業でよく教えられるので需要がある、したがって家族社会学を専門にしていると働き口には困らない、という話でした。そういう話を鵜呑みにして自分はのほほんと好きな研究ばかりしていたのですが、蓋を開けてみると家族社会学者を雇いたいと公募資料に明示的に挙げている大学はかなり少なかったです。

逆に公募でよく見かけるトピックはどれかというと、犯罪学、人種、健康になります。アメリカの社会学メジャートピックはこれかと言うくらい、感覚的には出てくる公募の5分の2くらいがこのどれかに当てはまる気がします。もし自分が「収監が人種の健康格差に与える影響」みたいな研究をしていたら、出せる公募は倍近くになったんじゃないか、そんな風に思いさえします。

よく研究者のタイプを従属変数型独立変数型で分ける考えがあります。従属変数型というのは、従属変数Yを説明することに関心がある人で、例えば「世代間の格差が維持されるのはなぜか」、「少子化が起こっているのはなぜか」、そんなアウトカムベースの研究を進める人たちを指します。これに対して、独立変数型の研究者は、特定の原因Xが複数のアウトカムYに与える影響に注目する研究者で、例えば収監が人種格差に与える影響は、健康もあるし、所得もあるし、家族関係もあります。もちろん、二つの性格どちらも満たす研究者もいて、例えば住宅からの強制立退(eviction)や人種による居住分離は、原因も重要ですし、その帰結も重要です。

何が言いたいかというと、自分はどちらかというと従属変数型の研究者で、例えば同類婚のトレンドが国ごとに違うのはなぜか、あるいは日本で難関大学に進む女性が少ないのはなぜか、そういう研究をしてきたのですが、そうすると従属変数にフィットしない公募には出せないし、就活を見据えてそうやすやすと関心を置くアウトカムをあれこれ変えることもできないのです。

ところが、独立変数型の研究者であれば、Yを複数設定できます。収監の例で言えば、犯罪学はもちろん、人種の所得格差であれば人種に関する研究者の公募にも出せ、健康格差であれば健康の酵母にも出せます。従属変数型の研究者に比べて、独立変数型の研究者はアウトカムを増やすことへのハードルが低いので、就活では従属変数型の研究者よりも出せる公募の数が多くなる気がしました。

もう一つが、アメリカの大学の公募の多さに改めて驚かされました。他の国と違うのは、小規模な私立大学がたくさんある点で、こういった大学は名門リベラルアーツカレッジの場合もあれば、地元の学生がいくような本当に小さな大学もあります。それに加えて、アイビーリーグやカリフォルニア大学システムのような研究大学、それとティーチングメインの州立大学の3種類があり、研究大学であれば研究に集中できそうなのですが、他の大学だとどうしてもティーチングが多めになる感じがします。

この点、地理的には離れますが、香港やシンガポールの大学は、アメリカの研究大学よりも少ない授業負担で、待遇もそれ以上に良い場合が多いので、アメリカから離れると言う、その一点を除けば、魅力的な選択肢なのかもしれません。特に、アシプロの最初の時期をそうした大学で過ごすというのは、戦略としてはありなのかもしれないなと思い始めました。現実問題として、香港やシンガポールの研究大学とアメリカのティーチングメインの大学を比べると、前者の方が研究はしやすいだろうと思います(ということを、ASAで香港の大学のリクルーターの先生に言われてグラっときました)。

少なくとも社会学では、アジアの大学は、アメリカの大学に人がとられることを見越しているからか、あるいは単にアメリカの大学よりも応募が少ないからなのか、早めに動いてきます。香港やシンガポールの大学はアメリカの研究大学とおおよそ同じスケジュールで公募を締め切っているのですが、先んじてこれらの大学からコンタクトがありました。早速、明日1件オンラインの面接があり、結果次第で10月中にジョブトークが現地であるようです。他の大学のジョブトークにも呼んでもらえそうで、ひとまずアプリケーションは呼んでもらえてることに安心しました。

順調に言った時の不安を今からする必要はないのですが、過去の例ではあまりにも順調に行きすぎると、アメリカの大学の結果が出る前に決断をする必要もあるようで、難しい状況に直面する可能性もあります。

No comments:

Post a Comment