Burtless, G., & Jencks, C. (2003). American inequality and its consequences. Henry J. Aaron, James M. Lindsay, and Pietro Nivola, eds., Agenda for the Nation, Washington: The Brookings Institution. 61-108.
アメリカの不平等は近年拡大しており、アメリカ国民の2/3はアメリカにおける収入の不平等は大きすぎると回答しているが、収入の不平等を削減する政策に関しては支持が集まらない。1940年以前には租税データを用いた分析になるが、アメリカの不平等は1950年代まで高いまま推移していたが、20世紀後半になって急速に減少した。しかし、70年代から徐々に上昇し、80年代に入って急に上昇した。不平等の推移はすべての所得階層で均一ではなく、どちらかというと上層と注意層の間の格差が拡大している。収入上位層の身長がアメリカの不平等の拡大を大きく説明しているが、分析結果はデータによっても異なる。例えば国勢調査では回答者が収入から資産文を引いて回答している可能性があり、素直に解釈することはできない。その国勢調査データを用いて1973年前後の二つの時期に分けて実質収入の上昇率を観察すると、73年以降は所得上位層での伸びが大きいことがわかる。
ただし、これまでの分析では、アメリカの世帯人員が減少していることを看過してきた。単身高齢者と若年単身者の未婚化傾向がこれを説明している。また、国勢調査では1979年以前まで租税前の収入を用いていた。そのため、給与税や収入以外の資産を考慮することができていなかった。これらを考慮するために、1979年以降の改善されたデータを用い、等価所得で分布を確認すると、この分析でも不平等が拡大していることが示唆される。これ以外にも、医療保険などを考慮する指標化も可能である。
それでは、なぜアメリカの不平等は拡大したのか?パーセンタイルごとの収入の不平等を男女別に見てみると、男性では下層で実質賃金が減少し、他の層との格差が拡大している。一方、男性に比べ女性は賃金の伸びが大きい。したがって、女性では下層で維持、中位層でやや上昇、上位層でかなり上昇している。このように賃金の不平等は拡大傾向にあるが、これだけを不平等の拡大要因とするのは早急である。47年から69年のように賃金格差が拡大しても世帯収入の不平等が減少している時期があるからだ。しかし、70年代になると賃金格差の拡大に伴い家族の不平等も拡大しつつある。学歴間・職業スキル間で格差は拡大しているものの、より重要なのは同一学歴・職業間で格差が拡大している点である。仕事に特有のスキルが重視されるようになったと考える経済学者もいれば、労働組合の衰退など労働市場の変容を訴える者もいる。
賃金格差の拡大に対しては二つの説が唱えられている。技術変化とグローバリゼーションである。多くの経済学者は新しい生産技術の導入に伴い雇用者の労働への需要が変化したと考えている。高スキルを持った労働者がますます重宝されるようになってきている。
経済学者ではない巷の議論で人気なのがグローバリゼーションの効果である。例えば、登場国との自由貿易の推進により、中産階級にた製造業者の地位が危うくなっているとする。国際貿易の研究に触れたことのある経済学者であればこの説には懐疑的であることが多い。
賃金格差の拡大とともに女性の労働市場への進出が生じている。男性の労働参加率は減少しており、男性における実質賃金は減少しているが、女性の賃金の上昇か労働時間の延長を通じて世帯の収入(生活水準)はキープされている。賃金の上昇が乏しい男性の妻が働くのはわかるが、高い所得を持つ男性の妻の労働参加も増加していることが興味深い。家族構成の変化も家族間の分配に影響を与えている。特に、ひとり親の増加は不平等に影響を与えているとされる。単にひとり親であることは二人親よりも収入が低いだけではなく、稼得労働者が職を失った時などのリスクに対処できるかも異なる。女性の労働市場への進出によってひとり親と二人親の間の格差は縮まると考えられるが、ひとり親の増加自体は不平等に寄与するとされる。政府の税制改革や福祉政策も不平等に影響する。全体として、全体として税金が引き下げられたあと、子供のいる低所得世帯向けの分配政策が実施され下層の世帯の実質的な税負担は減少した。しかし、その一方でミーンズテストや福祉政策の削減が行われ、結果としては相殺されている。また、移民が不平等に影響すると主張する研究も存在する。
不平等が経済成長並びに機会の平等に与える影響についてはどうだろうか?
経済成長の個展と知られるのはクズネッツカーブだが、クズネッツの理論では現代の不平等と経済成長を説明できない、すなわちOECD諸国のうちアメリカはルクセンブルクを除いて最も豊かな国であるが、不平等は最も大きいからだ。むしろ不平等とGDPは生の関係があり、クズネッツの説とは逆である(機能主義的な説明)。しかし、アメリカを抜くと平等と経済成長が比例する(?)。また、クズネッツ曲線は近年の不平等のトレンドも説明できない。経済学者の中には、雇用保険は格差を縮めるが労働者の勤労意欲を失わせるため不平等には寄与しないという主張も見られる。実際、社会保障への支出が大きな国では労働参加率は低い。第3の説は不平等が市民の人的、金銭的、身体的なションを減少、紛争を増加させることで政治制度へ悪影響を与え、結果として経済成長に負の影響があるとするものだ。median voterは格差が大きな社会では成長政策よりも再分配政策を支持する可能性が高い。機会の平等に関しては一見すると、親世代の不平等が拡大すると社会移動が難しくなると考えられるが実際には議論のあるところである。Mayerの分析によれば、高収入の家庭の子供はそうでない子どもに比べて成功している傾向にあるが、本当に収入が直接的な因果効果を持っているかは留保する必要があるとする。また、Mayerによれば収入よりも教育投資にかける学事態の重要性を主張する。国際比較の結果、アメリカの社会移動はイギリスや他の先進諸国と同じ程度には高いことが明らかになっており、これはアメリカ人のアメリカをland of opportunityと考える傾向とは矛盾している。収入の不平等化という「変化」が機械に影響を与えたかを見るのはまだ時間がかかるが、教育幾何についてはすでに検討できる。収入を4パーセンタイルに分けたときに、最も収入の高い層の子供の大学進学率は不平等の拡大期にあって上昇しているが、その一方で下層の子供の進学率は上昇していないことがわかる。この背景には、格差の拡大とともに高等教育の価値が上昇し、その結果として大学の授業料が上昇しているとする仮説もあれば、アスピレーションの階層差に言及するものもある。その他、寿命や政治的な影響の議論、最後に正義論との関連も言及される。
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