Bearman, P. S., J. Moody, and K. Stovel. 2004. “Chains of Affection: the Structure of Adolescent Romantic and Sexual Networks.” American journal of sociology 110(1):44–91.
この論文では、アメリカの中規模の高校に通学する生徒に18ヶ月に渡ってインタビュー調査を通じて、彼らのsexual networkを観察した。問いは、病気を広める性的なネットワークの構造がどのように生じるかという点にある。既存のSexual Transmitted Disease (STD)についての研究はエゴ・ネットワークやスノウボールサンプリングからのアプローチであり、これはローカルなネットワークの構造とその特徴を明らかにしてきたが、病気を広めるグローバルなネットワークの特徴については検討できないままであった。
最も単純な疫学的なモデルは、ランダムなネットワークを想定することだが、これは現実的ではない。そのため、STDには感染経路を理論化する三つのモデルが提唱されてきた。一つがCore Infection Networkである。これは文字通りネットワークの中心にいる人たちの性交渉によって病気が伝染していくというモデルである。中心と周縁が形成されるのは、セレクションの効果が働くためだ。しかし、このモデルは多くの文脈では当てはまらないことが分かっている。例えば、長距離バスの運転手がsex workersと性交渉をすることで感染が広まる場合、彼らは互いにつながっていない。このようなネットワークの密度が高くない場合の感染経路についてはinversed core infection networkというモデルが提唱されている。これはsex workerと買収客のように、役割が明確に分かれて、同じ役割のもの同士の間のネットワークがないことを想定している点で前者とは大きく異なっている。最後に、二つの全くつながりを持たないネットワークが、ブリッジ役となる人を通じてつながることで感染経路が広がるというBridge between disjoint populationのモデルがある。
しかし、この論文で観察されたネットワークは上記のいずれにも当てはまらないものだった。彼らはこれが樹脈の要に見えることからSpanning Treeと名付けている。このネットワークはノード同士の距離が他のどのモデルよりも長いと考えられる。redundancyとdensityも少ない。
この論文では、既存のモデルにおけるCoreの発想を批判している。観察されたデータには中心性の高いサークルはなかったからだ。その理由として、筆者らは少なくともこの高校においてはsecond partnershipを持つことが避けられるという社会規範があることを指摘する。これとホモフィリーの性質を組み合わせることでシミュレーションをした結果、観察されたネットワークに近いものが生み出された。パートナーを持つことが地位に関わる青年期の社会において、境界づけられた高校の中で彼らは互いに男女関係を監視している。大人の世界には見られないこの社会構造がネットワークを特徴付けていると結論づける。
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