自分の大学メールアドレスのスパムフォルダーに入るメールは、大体2種類に分けられる。一つがデタラメの(中には本物もあるのかもしれないが)学会やジャーナル投稿のお知らせ。昔は札幌で開催されるよくわからない公衆衛生の学会のお知らせが来ていた。もう一つが、存在しない公募のお知らせ。中にはAcademic job postings at Socioloxyのように、タイトルでスパムであることを教えてくれるので、からかわれているのか、真面目に騙そうとしているのか、よくわからなくなる。この論文を元に本を出版しませんかというお誘いも、100%デタラメ。というか基本的に、この業界にいると知っている人からの紹介じゃないものは、極端に信用が薄いと思われる。
ただ稀に、違う大学の人から来る初めてのメールはスパムフォルダに入っていることがあるので、一応数日に一回はチェックする癖をつけている。ジョブマーケットに入ってからは、ジョブマ関連のメールが偶にスパムに来ることがあり、毎日チェックするようになった。
そういう意味では、今日のスパムフォルダは、さながら掃き溜めに鶴、スパムフォルダに嬉しいお知らせだった。自分の研究分野ではヨーロッパのハブである某大学、というか隠す必要もないので書くとナッフィールドカレッジのPrize Postdocのショートリストに入ったので、面接に呼びたい、というメールが届いていた。
出願したときに心のなかで声がかかるといいなとは思っていたが、実際に連絡が来ると嬉しい。条件は3年で、何もobligationはない。自分の好きな研究をすればいいだけ。給料はポスドク+イギリスなので低いが、オックスフォードに3年身を置けるのは、今後の研究を考える上でも、この上なく幸せなことだと思う。自分が憧れる大学は3つあり、一つがウィスコンシン、一つがミシガン、そして最後がオックスフォード。ウィスコンシンは一年いたし、ミシガンもサマースクールなどで多少の機関滞在していたことがあるので、あとはオックスフォードに滞在したいと常々思っていた。
研究面で言えば、ナッフィールドカレッジは社会階層研究の中心であるし、オックスフォードには日本研究所もある。最近は人口学研究所もできた。世界的にも稀な、自分のやりたい研究が全てできる場所だ。
そんな心躍るお知らせがスパムフォルダに入っていたのだから、皮肉である。ジョブマにいる人は、毎日スパムフォルダをチェックしなくてはいけない。
その後すぐ、こちらもスパムに入っていたが、某南部にあるD大学のポリシースクールからレターリクエストの連絡。selected applicantsと書いてあったので、long listに入っているのかもしれない。もっとも、今年はAPを3人も雇おうとしているので、普通よりはリストのサイズも大きいだろう。自分もその恩恵に預かれたのかもしれない。アメリカの大学から次の選考に進んだという連絡が来たのはこれが初めてだったので、こちらも嬉しかった。
ひとまずこれで連絡があったのは、香港(ジョブトーク)、シンガポール(ジョブトーク)、カナダ(ロングリスト)、イギリス(ポスドクショートリスト)、そしてアメリカ(ロングリスト?)の5つ。うまく地域的にもばらけた。アメリカの大学院に出願したあとの回顧で、アメリカのPhDを取っていると世界中で就活できるみたいなことを、実感もなく馬鹿の一つ覚えみたいに言っていたことがあるが、その効用をひしひしと感じている。