社会学者の消極的な定義として「ウェーバーとデュルケムを祖とする人の集まり」というものがある。これ以外にも、少し揶揄的に「四類型を作る人の集まり」というものもある。ウェーバーしかり、パーソンズしかり、有名な社会学者というものは社会の現象を4つに分けたがるからだ。
というわけで、私もいっぱしの社会学徒よろしく、四類型を考えてみた。対象は「指導教員(のスタイル)」。
理系のラボとは異なり、一つの研究室や学部・学科の下に複数の教員がいることが普通の文系では、通常、指導教員をボスとする「ゼミ」が最小の単位となることが多い。そのため、同じ研究室に違うゼミの人が所属していることがままある。
こういった環境下で、院生室で同僚から他のゼミの話を聞いたり、研究会で知り合った院生にゼミの話を聞くと、指導方法は先生によって様々であることがわかってくる。指導スタイルは多様であると同時に、それらはいくつかの「型」に分けることもできるだろう。
以下では、ざっくり指導教員の四類型(scholar, reviewer, teacher, motivator)についてまとめているが、一人の教員が一つの型にはまるわけでもなければ、これらは対立するカテゴリでもないので、その点は大目にみていただきたい。
Scholar(学者)
「教授」のイメージに合うのは、このタイプの先生かもしれない。「研究者」にも色々な表現があるが、scholarからは真理を求めて学究にいそしむ、というニュアンスがある。このタイプの先生は、指導学生の報告を一つの作品としてみて、それをどちらかといえば相対主義的な視点で評価する傾向にあると考えている。scholarタイプの先生は、よくいえば学生個人の関心、やりたいことを尊重した上で、一研究者としてみて、その報告に対して思うところをコメントをしてくれる。別の表現で言えば、学生の報告における主張や前提からはある程度距離を置く、あるいは最初からあからさまな介入はしないともいえる。
Reviewer(査読者)
一方で、reviewerタイプの先生のイメージは投稿論文の「査読者」に近い。査読には何があるかというと、審査を経た上での「アクセプトとリジェクト」がある。このタイプの先生は指導学生の報告を批判的に検討した上で、その研究に何が足りないのかを指摘する。scholarタイプの先生と異なるのは、評価の際に、まさに査読者のように審査の基準をもってきて、その基準に照らし合わせた上で、学生の報告に対して積極的に介入する点だろう。
Teacher(教師)
これまでの二つのタイプの先生に比べて、teacherタイプの先生の特徴は「一緒にゼロから考える・最初から教える」というものだ。具体的には、ゼミで研究報告をすると、このタイプの先生は、学生がなぜその問いに至ったのか、どうすれば良い分析になるかを学生目線で一緒に考えてくれる。面倒見が良いと思われる傾向にあるため、もしかすると学生の評価は一番良いかもしれない。最も「先生」のイメージに合致するともいえる。大学院の研究では学生の自主的・独創的な思考力が求められる傾向にあるが、だからと言って最初から放牧でいいわけでもなく、このタイプの先生が求められるような環境もあるだろう。
Motivator(モチベーター)
うまい例えが見つからないが、スポーツでいえば「コーチ」に近いのがこのタイプの先生だろう。典型的にはフットボールのJürgen Kloppのようなイメージに近い。このタイプの先生の特徴は、学生をやる気にさせることに長けている点だ。学生をmotivateする方法は人それぞれだが、基本的にネガティブなことは言わず、研究のポテンシャルを最大限に評価する傾向にある。逆に言えば、批判的なことをいうのは避ける傾向にあるため、課題を見つけるのは学生自身と考えているかもしれない。
繰り返すように、これらの四つのカテゴリは排他的なものではないので、例えば最初はmotivator的でも論文のコメントはreviewer的な人もいるだろう。課題をはっきりと明示してくれるのは、reviewerタイプ、あるいはteacherタイプなので、両者は何が足りないかをわからせてくれるという点では面倒見がよいかもしれないが、「焼け野原から生まれた花は美しい」的な前者と、最初から一緒に考えようとする後者では、学生側の受け取り方は多少異なるかもしれない。scholarタイプの先生の場合、学生の考えを尊重する一方で、自分だったらこうするという点は明示しない(というよりは、こういう考えもあるよ、と提示するスタンス)こともあるので、学生側は指導教員が一体何を求めているのか、わからなくなるかもしれない。motivatorタイプの先生の場合も、褒められてると思ってのぼせているだけで、学生が論文を書けるようになるのかはわからない。いろんなタイプの先生がいるという仮定のもとで、自分にあった先生に指導をお願いし、ちょっと違うタイプの先生の指導も受けてみたいと思ったら、違うゼミに顔を出してみることも一つの手かもしれない。
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