国勢調査は平成17年(2005年)から平成22年(2010年)にかけて、「分類不能の職業」が1%ちょっとから5%台にグッと上がるのが不思議だったのだが、不詳割合が増加しているのは学歴や5年前居住地でも同様で、背景としては、おそらくプライバシーを配慮して調査員の確認をやめたことが関係している。
関連する文献として、
小池司朗・山内昌和「2010年の国勢調査における「不詳」の発生状況:5年前の居住地を中心に」『人口問題研究』70(3), 325-338.
http://websv.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19981809.pdf
遡れば、2000年から2005年にかけて、それまで調査員が尋ねる形式だったものをやめて、対象者による記入方式に変更した。それでも、2005年の不詳割合は少なかったのは、回収時に調査員が確認していたためである。
不詳割合は特に学歴と5年前の居住地で目立つ。学歴は2000年調査で3.5%の不詳割合だったのが、2010年には12.1%まで増加している。5年前の居住地は、2000年時点では0%だったのが、2010年には6.5%になっている。そして、不詳の発生は東京や大阪などの流入が起こりやすい地域で生じており、ランダムには発生していない。
調査法の議論に、ベターはあってもベストはない。調査員の確認を省いたのは、確認によってプライバシーを侵害されると考える対象者の拒否を防ぐためだろう。この方策がどれだけ効果を持ったのか計りかねるが、昨今の個人情報への関心からみると、対応自体は間違っていない。しかしながら、国勢調査は人口センサスとして1級の価値を持つ機関統計であり、不詳の発生はその質を損ねるものでもある。今後、どのような方法で回収率を向上させた上で、不詳割合を低くするのかがますます重要になるだろう。
No comments:
Post a Comment