April 24, 2014

ホモガミー

Kalmijn, M. 2009. “Educational Inequality, Homogamy, and Status Exchange in Black‐White Intermarriage: a Comment on Rosenfeld1.” American journal of sociology 115(4):1252–63.

この論文では、米国における白人と黒人の結婚によるstatus-caste exchangeがみられないことを指摘したRosenfeldに対するリプライとなっている。Rosenfeldの分析では、simple modelとcomplex modelの双方でこの仮説が支持されないと指摘しているが、Kalmijnはこの点から再検討している。筆者は、白人においては、男性と女性では前者の方が高学歴のものが多いことを指摘する。次に、黒人男性と白人女性では後者、黒人女性と黒人男性では前者がそれぞれ学歴が高いことを指摘する。さらに、白人女性の方が黒人女性よりも学歴が高い傾向にある。すなわち、白人女性が黒人男性と結婚する時はexchangeが起こらない。また、intermarriageの方がnon intermarriageよりもmale dominanceが生じやすいというこの仮説の想定とも矛盾する。このように、シンプルなモデルから考えれば、交換理論は否定されることになるが、筆者はこの事例を持って人種間・男女間の教育の不平等を考慮しなければ交換理論が妥当かどうかを検討できないとする(つまり、教育の不平等がバイアスになっている可能性が高い)。このように論じた上で、Rosenfeldと同じように筆者は(よりサンプルサイズの大きい異なるデータをもって)ログリニアモデルによるcomplex modelの検討に入るが、Rosenfeldとはことなり、各学歴ごとの結婚パターンを観察する。先行研究から、珍しい組み合わせのパターンには交換理論が当てはまらないことが指摘されている。逆に言えば、よくあるパターンについては交換理論が当てはまることを持って筆者はこれを擁護する。社会的交換理論は一応合理的選択理論の一つなのだが、対立するホモガミーの議論に関しては合理的な説明が可能な場合とそうでない場合がある。どうにかいかせないだろうか。

Park, H., and J. Smits. 2005. “Educational Assortative Mating in South Korea: Trends 1930–1998.” Research in Social Stratification and Mobility 23:103–27.

この論文では韓国におけるホモガミーの議論を検討している。論文の主張としてはシンプルな分析ではホモガミーの傾向は非線形的になるが、ログリニア分析の結果、韓国では高学歴層でのホモガミーが増加しており、社会の分断線が増している。また、ホモガミーではなくても、こちらも高学歴層において自分と近い学歴の配偶者を選択する傾向が強まってきたことが指摘される、これらの傾向の理由としては男性が高学歴の女性を選好するようになったことがあげられている(分析結果として、カップルのうち男性の方が学歴が高いパターンがみられるという。)。高学歴男性は近い学歴の女性を妻とすることで子どもの教育に対する便益を想定しているという解釈が提示されている。ホモガミーの議論でややこしいのは、学歴が全く同じことを持って狭義のホモガミーとすれば、上記の後者の例は上昇婚としてヘテロガミーに扱われる一方、緩く定義すれば、高学歴層と例学歴層との間の分断が強まっているとみることが可能な点にあるだろうか。論文の主張は、ホモガミーも上昇婚も高学歴そうで生じていることを持って、分断線が強まっていることを主張する。
何が高学歴かは、同じ社会でも時代によって異なる。例えば、20年前であれば女性の短大卒は相対的にみて高学歴だったかもしれないが、現在は大卒と厳然たる違いがあると考えてもおかしくない。男女間で絶対数が違うため、シンプルな分析だけではホモガミーの主張はするべきではないが、それと私たちの今の感覚が昔と同じものではないという点は話が異なる。例えば、日本でかつては大卒男性と短大卒女性のカップルが多かったとして、それが大卒男女同士のカップルに変わったとする。これはホモガミーが強化されたと言えるだろうか。日本では大学ごとのランクを重要視する見方も根強い。何を高学歴かとする時に、教育課程というフォーマルな定義をするのもありだし、私たちの主観的な認識を用いることも妥当でないとは言えない気がする。ちなみに、韓国でも見合い文化はあるらしい。

Raymo, J. M., and M. Iwasawa. 2005. “Marriage Market Mismatches in Japan: an Alternative View of the Relationship Between Women's Education and Marriage.” American sociological review 70(5):801–22.

女性の高学歴化は広く産業社会に見られる現象であるが、これが男女の結婚に対して与える影響については二つの異なる知見が提出されている。まず、アメリカやその他の産業社会の多くでは、女性の学歴達成は結婚に対してポジティブな影響を持っている。一方で、日本では結婚率の減少は高学歴女性の間で大きい。この意味で、日本社会の事例はベッカーやパーソンズが主張した専門スキルの交換を重視した理論と整合的である。労働市場において価値の高い男性は家事労働スキルの高い女性と結婚するとすれば(Becker 1991)、配偶者の男性と同じだけの学歴を持ち経済的に独立した女性にとっては結婚で得られる利益が少ないため、結婚に対する誘因がなくなると考えられるからだ。しかし、多くの社会ではこの理論が想定したこととは逆のことが起きている。そこで、筆者らは日本に見られる現象を説明するために、もう一つの理論となる仮説を示す。この仮説では、女性の学歴が高くなる一方で、女性が男性の経済的な資源に依存して自分と同等以上の学歴の男性を求める状況が変わらなければ、高学歴男性の相対的な供給が減少すると考える。この仮説には、男女間の結婚パターンの非対称性(女性の学歴上昇婚)が、期待されている役割が男女によって異なる、つまり男性は稼得労働者として経済的資源を確保すると期待されていることを反映しているという前提があるが、これは男女の性分業に賛同する女性であればあるほど学歴上昇婚を志向しやすいことが指摘されなくてはいけないと思われる。そうであって初めて、女性の経済的な地位が高くなればなるほど、男性の供給が不足するという主張が可能になるのではないか。

Rosenfeld, M. J. 2005. “A Critique of Exchange Theory in Mate Selection1.” American journal of sociology 110(5):1284–1325.

Homogamyの理論に対立すると考えられるのが配偶者選択における社会的交換の理論(Social Exchange Theory in mate selection)である。配偶者選択を説明する社会的交換の理論では、ジェンダー以外の二つの側面を想定し、結婚を通じて一方を持つものと他方を持つものとの間に交換が成り立つと考える(Rosenfeld 2005)。この理論では、地位の高い男性が美貌を備える女性と結婚する(Elder 1969; Waller 1937; Goode 1951; Taylor and Glenn 1976)、労働市場において価値の高い男性は家事労働スキルの高い女性と結婚する(Becker 1991)といった具体例が報告されているが、最もポピュラーなものとしては、Davis (1941)とMerton(1941)から始まる、地位とカーストの交換(Status-caste exchange)が有名である。この議論では、人種的にアドバンテージがある白人で社会経済的な地位が低い人が黒人の地位が高い人と結婚する事例が報告されている。社会的交換の系譜では、これは非直接の交換関係による一般的交換ではなく、「人種」と「地位」の直接交換と考えられる。これを一般化すれば、A, Bという資源があった時に、Aという資源を持つがBを持たない人とBを持つがAを持たない人との間で結婚を通じた社会的な交換が成立するということになる。
Homogamyの議論は、この理論と対立するように見える。なぜならば、Homogamyの理論では、同じ人種であったり、同じ社会的地位を持つ人間との間で結婚が成り立つと考えるからだ。もちろん、両者が補いあうことも十分に考えられる。例えば、Homogamyが結婚を導く大きなメカニズムの一つである一方、社会的交換もマイナーなメカニズムになりえることは想定可能だ。しかし、Rosenfeld (2005)は、経験的な証拠からはHomogamyが支持され、Status-caste exchangeは原因にならないと主張する。彼の論拠は三つある。まず、人種間に不平等が存在するため、例え客観的に見て同一の地位のものが結婚したとしても、集団内において一方が高い地位、もう一方が低い地位にいるため、交換が成り立っているように見えるだけで、実際には地位のHomogamyが生じているに過ぎないからである。次に、男女の間の不平等に関しても同様のことが言える。以上二つから、一見すると交換に見えても、それは集団間の不平等によってそう見えているだけであり、実際にはHomogamyであることが述べられる。最後に、社会的交換の理論が想定するメカニズムは統計的に見て頑強ではないことが経験的な証拠から明らかであると主張される。
この論文は二つの理論の矛盾を指摘しつつ、経験的なレベルにまで落とし込んで比較している点で好感が持てる。加えて、この論文からHomogamyないしHomophilyといっても、何が個人同士の接近を引き起こしているのかについての慎重な検討が必要であることが分かる。

Smits, J. 2003. “Social Closure Among the Higher Educated: Trends in Educational Homogamy in 55 Countries.” Social Science Research 32(2):251–77.

この論文では、高い教育程度を持つ層のホモガミーの傾向に対する影響を国際比較の点から比較している。分析の結果、経済的に発展している国、プロテスタントの国、高学歴層が多い国ではホモガミーは少なく、開放的であることが分かった。また、トレンドの観点については、経済成長をしている新興国では開放的な結婚が進んでいる。ホモガミーは社会異動と並んで近代化が社会の開放性に与える影響を考える際の重要な指標の一つであり、国際比較が奨励されるのもこのためである。また、status homogamyの中でも教育が重視されるのは、近代社会の業績主義的な編成原理が教育によって秩序づけられていることが挙げられる。加えて、配偶者の学歴は本人に大して社会的な利益をもたらす。また、両親の学歴は次世代のそれにも影響する。以上の点から、教育は社会的な不平等の重要な構成要素と考えられるため、homogamyの国際比較の議論は実質的に教育に限定されている。

Smits, J., and H. Park. 2009. “Five Decades of Educational Assortative Mating in 10 East Asian Societies.” Social Forces 88(1):227–55.

この論文では、東アジア10カ国におけるHomogamyを50年間のスパンで検討している。教育システムにおいて教育課程ごとの障壁が大きかった国ではHomogamyは強力だったが、これらの国では50年代以降Homogamyが持続的に減少している。しかし、障壁が小さい国ではこの傾向は見られず、筆者らは教育水準が低い層でもHomogamyへの収斂が起こっていると主張する。女性の非雇用率が高い、また儒教の影響が少ない国ではHomogamyは小さくなっている。分析の結果は、開放性仮説と排他仮説の両方を支持している。すなわち、近代化の課程でHomogamyが減少していった一方、高等教育の拡大の結果、教育程度の低い層でのHomogamyが残っている。

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