November 15, 2011

大淵寛・高橋重郷編 『少子化の人口学』 要約

岩澤美帆 (2004)「男女関係の変容と少子化」,大淵寛・高橋重郷編 『少子化の人口学』 原書房 pp.111-132

1. 出生力を規定する男女関係
出生力が経済事情や文化など様々な社会的状況の影響を受けることは間違いないが、そのような外部要因は出生力を寄り直接的に規定する要因(近接要因)を通じてのみ出生力に影響を与えると考えられている。
Downing and Yaukey 1979 出生は親密な男女による何らかの安定的な関係、特に婚姻関係においてのみ一般に社会から容認される→配偶関係は近接要因
1960— 世界的に結婚行動を巡って大きな変化が生じるように
男女関係の変化が出生力にどのような影響を与えうるのかについて婚外子の動向と離婚の関係に焦点を当て、欧米の先行研究に触れながら日本の現状を説明

2. 先進国に共通する結婚離れ
1960年代以降先進国共通に見られる婚姻離れ
婚姻率の低下と同じくして多くの国で離婚が増加
→離婚が一般化しているという認識は結婚への投資を引き下げ、ゆえに結婚が続く見通し自体を低めるという効果をもたらす(Bumpass 1990)
Thornton 1989 結婚は社会生活上必ずしも不可欠なものではなく任意の行動として認識されている

3. 非婚社会における様々な男女関係
(1)婚姻率の低下を相殺する同棲率の増加
初婚率・再婚率の低下、離婚率の増加→独身者の増加、独身期間の長期化
but 実際は先進国の多くで同棲が増加→非婚社会のイメージは変容
同棲の背景:晩婚化、離婚の増加と同じく、個人主義の浸透、世俗化、女性の労働力参加、婚前交渉への抵抗感の薄れ。
同棲の(社会学的?)意味づけ

1. 積極的同棲
1.1. 同棲は独身の派生形態説
1.2. 同棲は婚姻の派生形態説
2. 消極的同棲
事実婚説
Smock and Manning 1997 男性パートナーの経済的地位が低いほど同棲から婚姻関係への移行が少ない。
(2)日本における同棲の実態=ほとんどの人は同棲を一時的な状態と考えており、いずれは現在または他の相手との結婚を望む。
(3)非同居カップルとLAT関係
婚姻率の低下している地域の全てで同棲が婚姻に置き換わっているわけではない。(南欧や東欧、日本では同棲が少ない)
非同居カップル=LAT Living apart together

4. 少子化との係わり
日本においては、晩婚化及び非婚化が1970年代半ば以降の出生率低下の7割を説明(岩澤2002)
but 他の先進国では1970年代以降婚外出生が増加しており、結婚行動と出生率関係は従来の枠組みで捉えられない。
婚外出生が望ましいライフパターンとは考えられているわけではない。
婚外子の増加は婚姻のメリットが消失したからとも言える。
日本では婚姻率の低下とともに非同居型カップルが増加、そして若い年齢層では非同居型カップルのもとで多くが妊娠している。統計的に見ても、大部分が婚姻外の関係のもとで出産
・離婚及び再婚の影響(省略)
※日本に置いては、出生が婚姻関係においてのみ社会から是認される傾向が強い、そのような社会では晩婚化や離婚などによる婚姻持続期間の短縮は出生率にマイナスの影響を与えるだろう。

要約
高橋重郷 (2004) 「結婚・家族形成の変容と少子化」,大淵寛・高橋重郷編 『少子化の人口学』 原書房 pp.133-162

1. 結婚・家族形成の変容とその人口学的特徴
落合1994 少子化現象は安定していた人口置換水準の出生率がその水準を割り込み、低下を続ける現象であるが、それはちょうど戦後の家族が安定していた時期からその後の変容へと続く現象に対応している。少子化現象は結婚・家族形成の変容に伴う人口減少であるみることができる。
・女性の年齢別未婚率は1955年から1970年代までは安定的に推移
・20代前半で7割、20代後半で2割が未婚、95%以上の人が結婚する皆婚社会
・しかし、1970年代半ばの以降20代の未婚率が上昇
・特に20歳代後半の未婚率は1980年代半ばに三割を超え、1985年から1990年の5年間に10ポイントの上昇を見せ4割に。
・その後も上昇が続き、2000年には20代後半の5割が未婚
・こうした家族形成の変化は1960年代以降の出生コーホートで明らかに夫婦出生率の低下が見られる。

2. 結婚・家族形成変化の説明仮説
(1) 阿藤1997 女性の社会経済適地の変化による価値変動仮説
(2) 山田1999 宮本2000 パラサイトシングル仮説
(3) 金子1994 需要供給仮説 岩澤1999 結婚概念の変化仮説

3. 経済構造の変化と女性の社会経済的地位の変化
・産業別男女別就業者割合
・女性の働き方と配偶状態別に見た有業率
・女性人口の有業率
・女性の働き方と配偶状態別にみた有業率
→高度経済成長期以降、女性を取り巻く経済環境は大きく変化し、多くの女性が労働力市場に参入し、特に20歳代から30歳代の未婚者の正規雇用労働力化が進行すると共に、35歳以上の既婚女性が労働力市場に多く参入。

4. 結婚・家族形成の時期、時代区分
レキシス図法による期間合計出生率とコーホート合計出生率

5. 女性の就業行動の変化と結婚形成の変化
・出生コーホートでみた1960年代コーホート以降の急速な未婚率上昇は、これらの出生世代が、1980年代に青年期に達し、第三次産業部門における高い雇用労働力需要によって雇用労働力化したことにより、相対的に高い賃金水準が実現し、比較的豊かな生活水準が獲得されたとみることができる。
・男女賃金比

6. 女性の就業行動の変化と家族形成の変化
・第一子出産前職種別就業率
・雇用形態別に見田男女の所得階層別就業者数

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