April 26, 2018

PAA2018 Day 0(National Longitudinal Survey)

初めての参加となるアメリカ人口学会(Population Association of America)の年次大会、学振の研究奨励費の交付日よりはやく出発する可能性もあったので、できるだけ切り詰めた出張になる。

25日は午前5時に起床、6時半に高速バスに乗り、8時半に成田空港に到着。10時30分に離陸。約12時間のフライトの末、ダラスに到着。乗り換えて、デンバーに到着したのは25日の午後12時。

空港から出ている鉄道とバスを乗り継ぎ、会場のSheraton Denver Downtownに到着。時間に余裕があったので、registrationを済ませてから、会場近辺を散策。

午後3時から、NLSのセッション(Using the National Longitudinal Studies for Your Research)に参加。まだ学会自体は始まっていないので、この日にまでにあったセッションは、データの紹介や手法に関するワークショップが中心である。

NLS(National Longitudinal Survey)はオハイオ州立大学(OSU)が52年前の1966年から始めた一連のパネル調査のことを指す。有名なのはNLSY79あたりだろうが、その前にNLS Original Cohortsと呼ばれる、1966年から始まった調査が最初のパネルとなる。Original Cohortsは1966年に45-59歳だった男性を追跡したもの(Old Men)、同じく1966年に14-24歳だった男性を追跡したもの(Young Men)、最後に1967年に30-44歳だった女性を追跡したもの(Mature and Young Women)の三つに分かれ、いずれも黒人サンプルを多めに調査しており、1981年まで調査が続けらている。

有名なNLSY79(National Longitudinal Survey of Youth 1979)は文字通り、1979年に若年層(14-22歳)だった男女を対象に、1994年までは1年ごと、それ以降は2年ごとに継続して調査している。NLYS97(National Longitudinal Survey of Youth 1997)は1996年12月末日時点で12-16歳だった若年層を対象に現在も行われている調査で、現在まで1年ごとに追跡されている。

最後に、NLSY79については、1986年から女性サンプルを対象に彼女たちの子どもについての情報を2年おきに尋ねている(NLSY79 Children and Young Adults)。子どもが一定の年齢に達してからは、子ども自身に調査をしており、親子比較が可能な設計にもなっている。

まとめると、NLSと総称される調査にもNLS Original Cohorts(Old Men and Young Men), NLS Original Cohorts(Mature Women and Young Women)NLSY79, NLSY97、NLSY79 Children and Young Adultsの5つがあり、正直、名前とサンプルの特徴を覚えるだけでもお腹いっぱいになる内容であることに違いはない。

セッションでは、実際にこれら5つの調査のコーホートに該当する著名人(例えば、NLS Original Cohortsではネルソン・マンデラ(1918年生まれ)、マーガレット・サッチャー(1925年生まれ)、NLSY79ではバラク(1961年)&ミシェル(1964年)夫妻、NLYS97ではビーナス&セリーナ姉妹(1980年生まれ)やマーク・ザッカーバーグ(1984年生まれ)を紹介しながら、それぞれのサンプルの特徴や、質問事項についての紹介があった。パネル調査の特徴を生かし、同じ質問を継続して聞いていることに加えて、NLSの異なるサンプルを使えば、例えば24歳から26歳の若年層について、異なる三つの時代(1984年、2004年(Youth Adultを使用))、2006年)を比較することもできる。

各調査時点で聞かれた1度きりの質問でも非常にユニークなものがある。例えば、NLYS79までは防衛省のサポートを受けて実施されてきたこともあり、NLYS79のサンプルについては、Armed Services Vocational Aptitude Battery(ASVAB)とよばれる、防衛省が実際に志願者に課している語彙力や科学的な思考を測定したスコアが用意されており、こうした若年期の知能スコアが壮年期、ひいては老年期における行動などに与える影響を検討することができるようになっている。

また、NLSは地理データとのリンクも可能で、例えば15歳時点の居住地の空気汚染の情報を埋め込むこともできるようだ。

約2時間のセッションでは、色々な分析ができることがわかったが、もちろんたった2時間で調査の仔細まで掴むことはできない。実際に分析をするときには、NLS Investigatorというページが用意されており、ここの検索機能を使えばどのような変数がどの調査で尋ねられてきたかを調べられる。コードブック作成なども連動しており、最終的には必要な変数だけを取り出してクロス表やデータセットを作ることもできるようだ。

調査項目が多くなりすぎて、途中からpdfベースのコードブックを用意するのをやめたという話には驚くとともに、調査が蓄積されることに伴ってデータベースとして整理する必要性を痛感した。また、調査代表者(PI)はすでに何度も交代しており、最初の調査時になぜこのようなことを尋ねたのかを、調査者本人に尋ねることはできなくなっている。将来的にはNLS自体が歴史的な資料として対象化されることもあるかもしれないと思った。

デンバーの青い空(標高1600mだとか)

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