今年の抱負を、と考えていたらいつの間にか今年の1/24終わってました。抱負というか目標ですが
1. 仕事を得る
選んだのは自分なので文句は言えませんが、ポスドクの任期が切れる来年には露頭に迷う可能性がリアルにあるので、時折そのことが頭によぎると、怖くなります。基本的にアメリカで就活をして、香港ほか英語圏を見ていくことになると思いますが、日本帰国を視野に入れるかが一つの問題で、先日日本に一時帰国をして、もう少し外から日本を見ていたい気になりました。
(冗談みたいに聞こえますが真剣に考えている話として)アメリカでアカデミアの仕事が取れなかったら、豆腐レストランを始めたいと考えています。豆腐はサラダにも使えるし、メインでもいいし、デザートにもなるし、下手したら麺にもなるので、万能です。ベジタリアン、ビーガンの人でも食べられるので、都市部の高学歴層には絶対ウケると思っています。味のいい豆腐を作るのがボトルネックだと思うのですが、それさえクリアできれば寿司、ラーメンに続く日本食第3の波を起こせる気がします、豆腐です、豆腐。結局アメリカといってもどこでもいいというわけではなく、東海岸あるいは中西部の都市、はっきり言えばボストンに住み続けたいので、そこに特化するのであれば豆腐レストランもアリじゃない?と真面目に考えています。豆腐作りを甘く見るな、というオチかもしれませんが。
2. 第二次人口転換の枠組みで東アジアの少子化を捉え直す
ここ最近は、もっぱら「日本の結婚」から「東アジアの少子化」に軸足を移しています。東アジアの少子化でもニッチなマーケットですが、人口学の大きな理論にチャレンジしようと思った時に、日本に当てはまることは東アジアにも当てはまるので、自分の研究の中では大風呂敷を広げることにしました。東アジアの少子化は、大きく分けて労働市場の変化と性別分業の二つが有力な説明だったのですが、どちらもstructuralな説明だということに昨年の後半くらいに気づきました。これに対して第二次人口転換は価値観変動に焦点を置いた説明で、東アジアの少子化を考える上ではフィットが悪いというのが定説なのですが、私の研究アジェンダでは、東アジアの少子化を理解する上で、価値観の役割を改めて俎上に上げることを目的にしています。このアジェンダに連なる論文がいくつかあり、そのうち一つはトップジャーナル向けです。関連して、少子化政策関連のサーベイ実験プロジェクトをいくつか走らせています。
夏以降には、「親密性」の概念に着目して、日英比較のインタビュー調査を始める予定です。ざっくりいうと、日本では友人のパートナーを知らなくても何も問題はないけど、欧米では友人のパートナーを知るのがノルム、そういった親密性をめぐる文化差があります。さらに都市部では日本や東アジアはシングルに対して非常に寛容なので、「一人で生きる」ことへのハードルが低いわけです。したがって、個人主義的な価値観が広まると、カップル文化が強い欧米ではパートナーはいるけど子どもを持たない人が増えるわけですが、カップル文化が強くない日本や東アジアでは、パートナーを持たないシングルが増えることで少子化になると考えています。この話はすでに山田昌弘先生が新書でエビデンスを出さずに長いこと議論されていましたので、私たちのプロジェクトはエビデンスを与える作業と言って差し支えないと思います。この「親密性をめぐる考えの日欧(米)比較」は、酒飲みトークとしては秀逸ですごく盛り上がるので、アカデミアの職が取れなかった豆腐レストランでこの話をすることにします。
もともとの関心だった「日本の結婚」の部分は、格差に焦点を置いて中公新書から「日本の家族格差」というタイトルで今年の出版を目指しています(5章構成で現在4章まで書きました)。
並行して同類婚の分析も細々続けていて、香港の同僚と進めているペーパーはトップジャーナルを狙っています。関連して日本の子育てにおける格差についても、この2年研究会をオンラインで組織していて、成果本を勁草書房から今年の後半に出す予定です。
3. 高校生の進路選択とジェンダーに関する本の出版契約を取り付ける
この数年、進学校の高校生にインタビューをしていました。関心があるのは男女の進路選択がなぜ、どのように分かれるのかです。共同研究の成果は今夏に大月書店から編著本で出る予定です。個人の研究としては、アメリカの大学出版会から出版契約をもらえたらいいなと思っています。インタビューの分析から、男女の進路選択の違いが、よくわかりました。従来だと、女性の方が浪人しない、親のバイアスがある、女性は偏差値より手に職、みたいな説明がなされてきて、それらは個別に重要な説明ですが、実際に進路を選択するかたりを見ていると、男性の進路選択は「偏差値が高ければ高いほどいい、自分で決めていいと思っている」モデルで、女性の進路選択は「偏差値も大事だけど、やりたいこと、将来の仕事、大学の魅力、家から通えるか、全て大切、そして周りにその選択を納得してもらいたい」モデルだと思います。男性の場合は「行くべき大学」の基準が均質的で、均質的なので男子はみな似たようなロジックで偏差値の高い大学を希望しがちですが、女子の場合は「いくべき大学」の基準が複層的で、単一の基準がないので、その選択が正当なものであることを周りから認めてもらうプロセスが加わります。だから親は介入しやすくなるし、女子の友達からきいの目で見られるような選択はしたくないように見えます。
そうして高校生に話を聞くうちに、入試制度の話に首を突っ込むことになり、現在は入試制度とジェンダーの関係、あるいは入試制度それ自体により注目した研究をを走らせています。雑誌の世界に関連する話を書いたあと、岩波新書の編集者の方から連絡をもらって、入試制度と公平性に関する新書を書くことになり、それも来年以降に始めたいと思っています。
並行して、手に職希望で表されるような女性に典型的な進路選択の要因と帰結、男女の専攻や職域の分離の趨勢、あるいはそもそも職業希望ってどういう意味?みたいな論文を共著で進めています。
4. アメリカにおけるアジア系の社会人口学的分析を進める
ひょんなことからこの領域に足を踏み入れてしまったのですが、アジア系はアメリカでは非常に教育達成が高く、政治的なセンシティブさをはらみながらモデルマイノリティと呼ばれたりしています。私の関心は、その背景にある家族の安定性で、要するにアジア系の人はその他の人種エスニシティの人に比べて離婚しないのです。現在進めているプロジェクトは、それがなぜかを明らかにしたいと考えています。ポテンシャルには、これもトップジャーナルを狙えるものが一つあります。今年はその論文を投稿するのと、あとはもう少し移民のコンテクストでアメリカのアジア系を理解したいと考えていて、具体的にはアジアにいるアジア系とアメリカにいるアジア系の家族形成パターンを比較したいと思っています。
結局いろいろ進めているのですが、トップジャーナルを狙えそうな論文が3本あり、それを優先的に進めつつ共著の論文や日本語の新書と編著本2冊の執筆、あとは職探しをする予定です。