October 9, 2018

10月8日(分野横断研究とゲートキーピング)

日曜はひたすらカタンをして時間が溶けていったので、月曜から再稼働。といっても、予定を月曜の終わりに考えている時点で終わってるのですが。まあ、土曜までに終わらせるので良いのです。

今週はオランダからsociogenomicsの先生が来てDemSemで報告してくれるのだけど、その人とのランチに登録し(人口学研究所のtraineeは学期中2回まで演者とランチする権利がある)、かつ今回はその人が院生とのインフォーマルなセッションを設けてくれたので、都合3回会うことになる。今日はその1回目のセッション。

まず、事前にGenome factorを読んでおいてよかったなと思った。SNPとかpolygenic scoreとか初見だと意味がわからないと思う。彼のバックグラウンドは計量経済学で、オランダでソリッドな計量分析の手法を身につけたあと、社会科学が関心を持つinheritabilityを明らかにするために、ゲノムに注目しない手はないのではないかと考えてこの分野に飛び込んだらしい。遺伝と聞いてbiological determinismを連想する人もいるかもしれないけど、彼の所属するsociogenomicsのコンソーシアムでは、遺伝子は基本的に環境によって発現したりしなかったりするので、あくまで間接的な影響しかないと表明しているらしい。そういう声明を出してはいけるけど、一部にblack sheepみたいな人はいるよう。

私を含め、院生が気になっていたことに対する返答で勉強になったのは、トレーニングと就職。前者については、彼は基本的に分業体制の中で統計的な検証を担当しているらしく、ラボなどで勉強した経験はなさそうだった。OxfordのFelixさんと話した時には、彼はオーストラリアのラボに2年間ポスドクでいたらしいと聞いて驚いたけど、人によるだろう。

就職については、(社会科学の)研究者の多くが就職しようとする大学においては、学部があり、その学部は既存のディシプリンに対応しており、その分野による評価方法をとっているので、若い時にどれだけ分野横断的な研究をすればいいかについては、いつも悩むといっていた。例えば、彼が所属する大学では、テニュアのための業績評価は単著を優先するらしく、共著者が増えるほど減点する仕組みらしい。それはそれで極端だと思ったが、ゲノムの研究は共著者100人越えとかは普通なので、ほとんど業績としてカウントされないよう。これ以外にも、分野横断的なジャーナルに出しても、経済学部で評価されるわけではないといっていた。

新しい領域にチャレンジすることは、当たった時にリターンも大きいが、就職の際にリスクもある。そのリスクの一部は、就職する学部がゲートキーピングの機能を担っているからなのかなと思った。ファカルティでは研究だけではなく教育もする必要があり、その教育の多くは分野の古典やその派生になるので、分野横断的な研究と合わせて、そうした古典的な分野も研究できたり教えられたりする必要がある、という示唆を得た。現実的に、何か新しいフィールドに首をつっこむのはポスドク期で、PhDはしっかりその分野の勉強に勤しんだ方がよさそう。逆に言えば、PhDをやっていた時の専門とあまり違わないのであれば、ポスドクのメリットも少し薄れる気もする。

個人的には社会階層論を含め、社会学が関心を持つ領域(特に個人や集団レベルの社会的な行為)に対してsociogenomicsが持つポテンシャルは大きいなと思う。もちろん、説明できる分散が格段に増えるわけではないけれど、先のinheritabilityにおいては、コントロール変数、あるいは環境とのインタラクションを見ることで、これまでわからなかった問いの一部は解決できるだろう(IVとして使うこともできるしアイデアはexplicitでわかりやすいらしいが、実際に分析する際には色々と困難があるらしい)。彼からは、まだ明らかになっていない問題があって、それに対してなんらかの形で回答を与えてくれるかもしれないものが手をつけずに眠っているのに、なぜそれを手に取らないんだという、研究者としての素直というか、正直なモチベーションを感じた。懐疑的な目を向けることもわからなくはないけど、その多くはゲノムが怪しいのではなくゲノムを研究している人の一部が怪しいことを言っているだけなので、分けて考えるべきだろう。

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