February 7, 2019

初めての病院

アメリカは医療費が高い、という言明はよく聞くかもしれないが、実際には保険に入っているかどうかによって医療費が全然変わってくる。国民皆保険の日本からすれば、保険は入っていて当然かもしれないが、民間の医療保険が中心のアメリカでは、病院によって提携している保険とそうでない場合があるので、ある保険に入っていれば、どこでも医療を受けられるわけではない。

大学院生は、学生として見なされる場合と、TA/RAとして働いていると見なされる場合とで入れる保険は異なる。前者の場合は大学保険局が用意しているSHIPという保険に入る必要がある(といっても、留学生は20万ほど1年で払う必要がある)。私も、お金払いたくないという気持ちはあったが、もしものことがあると破産するので入った(奨学金は医療保険はカバーしてくれないものなので自腹)。

というわけで、入ったはいいものの、保険を適用したからといって医療費がとてつもなく安くなるわけでもないので、できればお世話になりたくないと思っていた、が、今日初めて病院の世話になった。朝、授業が始まる1時間前のバスに乗って、余裕を持って登校しようとしていたが、路面の凍結で滑る、滑る。一度滑って後に立ち上がろうとしてまた滑り、前のめりになっていたため顔から転んでしまった。メガネが割れ、額から血が出てしまい、いよいよマディソンの地で死ぬ運命だったかとこれまでの人生がよぎろうとしていた瞬間、近くにいた初老のおっちゃんに声をかけられた。要するに、縫えば治るから病院に行こうという。なるほど、割れたメガネの破片がまぶたに刺さっていたのだった。おっちゃんがすぐそばの店のオーナーらしく、そこでティッシュなどを貸してもらった。店にいた女性が指導教員にメールし、SHIPが適用される病院に行く必要がある旨を伝えたら、大学病院のクリニックを紹介してくれた。おっちゃんがすぐそこだからと車で連れてってくれた。本当、あのおっちゃんがいなければ、血だらけのまま道で倒れていたかもしれない。

おっちゃんとは病院の入り口で別れ、まぶたが血だらけのままクリニックへ。切ってみて初めて分かるが、まぶたからの出血は止まらないのだ。urgent careに通され、よくわからないが同意のためのサインを2回する。学生保険のカードを見せる(財布に入れて持ち歩いていてよかった)。パスポートはいらなかった。最初にナースの人がきて、傷口の部分などを拭いてくれた後、多分グルー(のり?)で大丈夫だよと言われて、縫わなくてもいいのかなと思ったが、10分後に来た医師の人は縫合する気満々だった。なんとかのワクチン取ったことあると聞いて、聞き返してもなんのワクチンかわからない、ググってみると、破傷風だった。破傷風ワクチン、そんな記憶もなかったのでとりあえず打ってもらった。日本だと混合三種というやつで小学生の頃に日本では打つらしいが、10年で効果は切れるらしい。結果的に、破傷風のワクチンも打っておいてよかった。

麻酔を打って外側を7針縫った。不幸中の幸いか、傷口部分は右の眉毛の部分とおおよそ被っていたので、遠目には傷があるようには見えない。縫合前はぱっくり開いていたまぶたも綺麗に接合されていた。といっても、出血が完全には止まることはないので、それこそグルーのようなものを塗られて終わった。支払いは?と尋ねたが、請求書はあとで保険会社が計算して自宅に届くらしい。怖い。いくら学生保険がカバーしてくれる病院といったって、ここはアメリカである。日本よりも1桁多い医療費を覚悟して病院を出た。

その後も雨が強く非常に気分は悪かったが、なんとか大学へ。自宅で休んでもよかったのだが、午後の授業まではキャンセルしたくなかったのと(午前の人口学はメールした上で欠席した)、家に一人でいるよりも、オフィルのみんなのもとに行った方が、安心する気がしたので行くことにした。事前に一人の友人には目を切ったので授業を休むと伝えていたので、話は通じていた。意外とかっこいい傷になるかもよみたいに冗談を言ってくれて、少し元気になった。改めて、オフィスにいるみんなが大好きでたまらなくなった。

授業を取ったあと、やはり気分的に疲れはあったので、すぐ帰ることにした。特に吐き気や熱もなく、多分異常はないので、月曜日に縫合を解きにまた病院に行く必要があるのがネックだが、ひとまず最低限のロスですんだ気がする。改めて、不幸中の幸いは、すぐ近くに気づいてくれる人がいたこと、メガネの破片が刺さったのが目ではなくまぶたで、まゆと被っていたこと、すぐに他の人に連絡できるように携帯を持っていたこと、学生保険のカードも持っていたことなど、特に最初の二つは本当にラッキーだったと思う。

今回の経験を通じて、もし事故や怪我をした場合にどのような対応をすればいいのか、なんとなくわかったので、二度とこのような経験はしたくないのはもちろんだが、もしその時が来たり、周りの人が似たような状況に陥った時には迅速に行動できるようにしたい。そのための、予行訓練だったと思えば、決して安くはないが、今回の請求はその授業料だったと思うことにする。それでも、後日10万とか請求されたらメンタルは折れるだろう。ここはアメリカである。

No comments:

Post a Comment