October 13, 2020

社会階層研究の第5世代?

たまには社会学をやってる仕草を見せたいと思います。

社会階層論(と家族社会学)の科目で進級試験を受けるので、最近は階層論とはなんぞやと考えていました。最初に所感を述べるので、本当に雑駁ですが口述試験では以下のようなことを話そうかと考えています。

社会学で格差や不平等を扱う社会階層論は2000年代中盤時点で第4世代まで形成されているという議論があります(Hout and DiPrete 2006; Treiman and Ganzeboom 2000)。第1-3世代は社会移動とその国際比較が中心、第4世代は制度によって格差や移動がどう異なるかの検討があり、そろそろ第5世代を作りたくなってくる頃です。

実は第5世代は何か、みたいな議論は全く起こっていないのですが、私だったら、不平等の源泉の定義を拡大したことに求めます。

社会階層論では、典型的には父職(origin)や学歴(educaction)が自分の達成(destination)に至るまでの、不平等の源泉とされてきました(自分で獲得した学歴がなぜ不平等なのかという話は疑問に思われるかもしれませんが、ある学歴を達成する際に無視できない出身階層の格差がある場合,および学歴によるリターンが異なる場合、教育は出身階層の効果を媒介すると考えます)。いわゆるOEDトライアングルの話です。

集団間の格差に関心を持つアメリカ的な階層論はジェンダー、人種、移民など源泉となる地位を拡大してきました(Gruskyのリーダーを参照)。経済格差が拡大するにつれ職業とは異なる所得(Mayer 1997)や富(Killewald et al. 2017)、スキル(SBTC)、組合の有無(Western and Rosenfeld 2011)が格差を形成するメカニズムについても研究が増えています。経済格差と社会移動の関連でいえば、グレートギャッツビー(Corak 2013)の話が社会学でも熱いテーマの一つです(でした?)。

これらがある世代(コホート)の格差の分布を形成するとして、次の問いはなぜそれが次の世代に継承されるのかです。世代間の移動を考える際に、子どもの幼少期の環境が重要だとわかってきました(近隣、親の離別)(Chetty and Henderen 2018; McLanahan and Percheski 2008)、これはアウトカムに曝露されるタイミングの重要性を示唆します(親子世代ともに)。個人の人生の中でどう格差が蓄積していくのかというテーマと合わせて、時間的な側面は非常に重要です(DiPrete and Eirich 2006)。

継承という点では、遺伝の影響も見過ごしてはいけません(Conley and Fletcher 2017)。親からの遺伝は子の教育年数と少なくない関連を見せています(Lee et al. 2018)。重要なのは古い遺伝決定論を展開しているのではなく、階層研究は行動遺伝学の知見も交え遺伝が環境とどう相互作用するのか(Conley and Fletcher 2017)、遺伝しない親の遺伝子がどう格差を形成するか(Kong et al. 2018)を検討しています。

第4世代までの階層論は、究極的には格差の源泉を職業に狭めることで理論的、方法論的なアップデートを図ってきました(Treiman and Ganzeboom 2000)。第5世代はこの遺産を生かしつつ、格差の源泉の定義を拡大し、経済学、公共政策、公衆衛生、行動遺伝学の研究者とコラボしながらメカニズムを明らかにしようとしている、と自分は思います。定義を拡大すること、他の分野の研究者とコラボすることで、アイデンティティを見失ってしまうかもしれませんが、実際にはコラボが盛んになる中で、階層論の中で培ってきた理論的・方法論的な基礎はより重要性を増しているものと思われます(e.g., Ridgeway 2014)。

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