February 13, 2018

「〜〜に就く人が減っている」ことを人口学的に考える

今回は、未婚率の上昇を人口学的に考える際に用いる視点を、職業に応用して考えてみます。

私は、この4-5年くらい、配偶者選択の研究を中心にしていたのですが、日本に限らず未婚化の議論をする際には、単に(1)結婚のタイミングが遅れている(だけな)のか、それとも、(2)結婚を経験する人が減っているのかを峻別する必要があるというのは、比較的常識です。

前者は、晩婚化(marital delay)とされ、後者は非婚化(marital decline)と便宜的にいいます。仮に、晩婚化が起こっていたとしても、極端な例で言えば48歳まで未婚でも、(生涯未婚率の定義に用いられる)49歳時点で全員が結婚しているような社会は「晩婚」社会ではありますが「非婚」社会ではありません。

「未婚化」を議論する際には、それがどれくらい晩婚化によって説明され、どれくらい非婚化によって説明されるかを峻別することが大切になります。それは、とくに晩婚化と非婚化に関連する要因(correlates)が異なる場合に、より重要になります。

例えば、アメリカでは高学歴女性の「未婚化」が指摘されましたが、それは主として「晩婚化」であるとされます。すなわち、高学歴女性は結婚年齢が遅れることはあっても、結局結婚するのです。これに対して、日本では高学歴女性は結婚タイミングも遅く、最終的な結婚確率も低い傾向にあるとされます。

こういう視点が、階層研究の報告をきくと、意外と共有されていないことに、最近気がつきました。具体的には、近年の日本では「管理職」に就く人の数が減少しているらしいのですが、それが「管理職に就く年齢が遅れている」のか、あるいは「そもそも管理職(に就く人)が減っている」のか、両者が混同されながら議論が進められていることを感じました。

あるいは、近年の日本では「自営業」に就く人が減っているのですが、これも同様にクロスセクショナルなレベルでみた、(見かけ上の)自営業に就く「率」の減少は、「自営業に就く年齢が遅れている」ことと「そもそも自営業に就く人が少なくなっている」ことに分解できます。

自営業に関しては、自営業全体が減少する中で、専門職に就く自営の割合が増えているようですが、専門自営の人は、その他の自営よりも、開業するための資金や知識が必要であると考えられるので、遅い年齢に自営を始める人も一定数いそうです。そのため、自営業が減少していることの一部は、そもそも自営業が少なくなっていることに加え、自営業に就く人の構成比が変化した結果、自営業を始める年齢が遅くなっていることも、寄与している可能性があるのです。

こうした内容は、高度な分析の一歩手前の事実確認のレベルになりますが、非常に基礎的な事実として、トレンドを説明する際には共有されるべき点であるように思います。

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