May 2, 2015

QS World Ranking 2015における東大の躍進のワケについて考える。

世界大学ランキングでTimesと並びポピュラーなQSの2015年ランキングで、Sociology分野の24位にわが東京大学が入ってしまいました。

「しまった」というのは、まずいという訳ではなく、単にランキングを私がフォローして以来、東大はSociology分野においてずっとランク外だったからです(調べてみると科目別ランキングは2011年からということで、そこまで歴史は深くないことが分かります、今回は36分野のランキングについて集計しているようです)。

細かい算定方法については分からないことが多いですが、今回知りたいのは、なぜランク外が急にTop 25に躍進(というと価値観含みですが)したのか、です。通常こうしたランキングの飛躍的な上昇は、今までは最低限の基準を満たしていないために、ランキングに載る研究機関から除外されていた可能性があります。今回は、その仮説に絞って、少し調べてみました。


まず、QS では基準を満たしたInstitution Consideredでないと、ランキングに載る機関として認知されません。加えて、各分野の規模に沿って公表する機関数を、分野ごとに定めています。例えば、医学(medicine)であれば400位までは載せる一方、社会学では上位200位までしか載せません。

基準を満たすためのThresholdについては、以下のように書かれています。


  • Exceed the minimum required score for the academic and/or employer reputation indicators 
  • Exceed the five-year threshold for number of papers published in the given discipline 
  • Offer undergraduate or taught postgraduate programs in the given discipline

Reputationについての基準は分かりませんでしたが、最低出版論文数は以下のように定義できます。QSでは、アーカイブとしてScopusを使用しており、ここに登録されている雑誌に投降された論文数から引用数等も測っていくようです。これも分野別に定められており、社会学では5年間のpaper thresholdが30と定められています(上記リンクより、Research Metricsを参照)。

要するに、東大に所属している研究者が、Sociologyに分類される論文を5年間で30以上書かなければ、ランキングに載る資格を付与されない訳です。Scopusの定義によれば、Sociologyには3312 Sociology and Political Science, 3318 Gender Studies, 3319 Life-span and Life course studiesの三つが含まれるようです(これも上記リンク参照、ちなみに、political scienceと出てきて驚きましたが、Politicsの分類には3320 political science and international relationsが適用されるようです)。

日本の大学でSociology Ranking 2015としてカウントされたのは、7大学とかなり少ない。世界全体でInstitutions consideredとされたのは558大学となっており、当たり前ですがその中の大半はアメリカ(131大学)やイギリス(70大学) が占める訳です。私たちの感覚としては、社会学を研究している機関は7以上あるだろうというのが率直な感想かなと思います。私は日本で社会学を学ぶことの出来る大学がどれだけあるのかは分かりませんが、一つの基準として社会調査士参加校の推移を見てみましょう。設立から10年経ち、おおよそ参加校数=日本で社会調査が体系的に学べるところと考えてよいと思います。田畑(2013)によれば、参加校数は2010年代で190前後で推移していることが分かります。もちろん、全ての大学が研究志向と言った訳ではないでしょう。しかし、それにしても7大学というのは少なすぎかもしれません。恐らく、ほとんどの大学が論文数の基準によって除外されているのではないかと推測しています。

2015年で、日本の大学で200位以内にランクインしているのは以下の5大学です。
24 東京大学
51-100 京都大学
101-150 大阪大学
101-150 東北大学
101-150 早稲田大学

ここで注意したいことは、2013, 2014年では、日本の大学は一つもないということです。そのため、東大だけが躍進したというよりも、日本の大学全体がランキングに載るようになったのです。このように考えると、日本の大学に限らず、非英語圏の国の大学もランクインするようになったのではないかと考えられれます。ということで、Sociology Ranking上位200に入った中国と韓国の大学を経年で見ていきましょう。

2015年
32 SNU 
33 Peking 
51-100 Fudan 
51-100 Korea 
51-100 Tsinghua 
51-100 Yonsei 
101-150 SKKU  

2014年
49 Peking 

2013年
51-100 Peking
51-100 Yonsei

明らかに2015年になって日中韓の大学が躍進しています。三か国合計で2(2013)→1→12大学です。最初は東大がThresholdを満たしたから、急にランク外からきたのかもしれないと思いましたが、恐らく非英語圏の大学が不利を被らない基準が新たに設けられたのかもしれないです。俗流的には、「国際的に競争力のある」社会学系の大学は日本で5前後、ということになるかもしれませんが、前年とのギャップを見るに、この手のランキングは基準の設定如何で随分と変動するものであり,鵜呑みには出来ないなと改めて思いました。


補足
社会学は他のSocial Science分野に比べて、スコアの内訳(Academic Reputation, Employer Reputation, Citation, H index)のうちAcademic Reputation(同業者からの評価)が7割と高い。Academic Reputationにどういう人が回答しているかまでは分からないが、twitterでQSは一昨年くらいから東アジアでのマーケティングに重点をおいており、東アジアにある大学の関係者の回答割合を増やしているという指摘を頂いた。このように、例えば東アジアの大学の人により多く依頼すれば、自然と当該地域の大学のランキングも上昇するだろう。今後東アジアの大学が上位に入り込んでくるかもしれない。







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