August 8, 2021

社会ゲノミクスサマースクール

 今日から20日まで社会ゲノミクス(sociogenomics)のサマースクールに参加するため、バーモント州にあるStoweというところに来ています。社会ゲノミクスというのは、名前の通り社会科学とゲノミクスの融合分野なのですが、基本的にはゲノムデータを用いて社会科学的な問いに答えていく新しい領域という理解でいいだろうと思います(残念ながら?社会科学的な視点を用いてゲノムの研究をすることはあまり求められていません)。

このサマースクールは、Russell Sage Foundationという財団がサポートしています(なので、参加費などはありません、ホテル代から飛行機代まで、全てカバーされています、その代わり選抜があります)。アメリカは、アイビーリーグなどの私立大学の予算規模が日本の大学の比較にならないところがありますが、この手の(よくわからない)財団が惜しみなく研究に投資をしてくれるのも、日本にはないアメリカのアカデミアの特徴だと思います(日本の財団でも研究助成や奨学金はありますが、サマースクール支援の類いは聞いたことがありません)。このサマースクールのeligibilityはアメリカの大学に通う人に限らないのですが、やはりプリンストンの先生の推薦があって選抜に通ったところもあると思うので、既に属している豊かな研究環境から、また恩恵を受けていることをありがたく思わねばなりません。

講師陣は、この分野をリードしている先生方ばかりで、非常に豪華です(博論コミティにいる先生も講師として来ており、1年半ぶりに再会しました、感動)。受講生の方はパンデミックの影響でビザが降りなかった人がいるようで(ヨーロッパ方面だと思います)、今回 in personで参加するのは従来の6-7割程度まで減っているようです。そのかわり(おかげで?)ホテルの部屋はみな個室をもらえています。この年になると、そろそろホテルの部屋のシェアも辛くなってくるので、ありがたい限り。。

Stoweはスキーリゾートで、おそらく雰囲気としては夏の軽井沢に近い気がします(白状すると軽井沢には行ったことがないので、自分の記憶で例えるとすれば、乗鞍に近い印象)。ちなみに、空港からのシャトルバスで一緒だったアメリカの参加者の人も、バーモントには来たことがなく「ここはほぼカナダ」だと言っていました。アメリカ人が「ほぼカナダ」という時には、若干ブラックユーモアが入っている気がします(「ほぼカナダ(苦笑)」のニュアンス)。ちなみに、バーモントの人口はアメリカの州で49位、つまり全米50州の下から2番目で、ホテルまでのシャトルに乗っている間も、ほとんど人影を見ませんでした。オフシーズンなのでしょう。

パンデミックが始まってから、研究業界では学会やこうしたin personの集まりは潰えてしまったのですが、いよいよ日常が戻りつつあります。人と握手するなんていつぶり!と今日は挙動不審になってしまいました(自分から人と握手する勇気は、まだ自分にはありません、今日は「え、握手するの?笑」みたいな反応になってしまいました)。コロナ禍で失われてしまった初めて会う人とのコミュニケーションを、文字通り体から思い出す1日で、非常に新鮮でした。

とは言っても、個人的にはデルタ株の流行を前に、本当にin person meetingを再開していいのか?と疑問に思わなくもありません。明日から始まる講義の最中はマスクをつけることがマストですが、食事中は当たり前のようにノーマスクなので(この辺り、黙食を推奨する日本的な価値観が入る余地は全くなく、皆さん潔いです)、正直マスクをしている効果はあまりない気がします。全員ワクチンを打ち終えているわけですが、ブレークスルー感染のリスクも分からないところがあり、無事12日間の日程を消化できるか、期待半分、不安半分というところです。とは言いつつ、アメリカでは国内旅行はほぼコロナ前の水準に戻りつつあり、小規模なin person meetingも再開しているでしょうから、変に負い目を感じる必要もないのかもしれません。

日本から帰って来て、アメリカでマスクをしていない人の多さに驚いているのですが、1ヶ月半の一時帰国の間に、不要不急の行動は自分だけではなく人様にも迷惑をかけるので慎むべきだ(マスクをするのも同様の理由)、という日本的な価値観が刷り込まれているのかもしれません。日本的価値観というより、これは公衆衛生的な正義だと思いますが、アカデミアで大切とされるネットワーキングがこの正義に打ち勝とうとしている、そのせめぎ合いを見させられているところかもしれません。

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