January 31, 2014

難しくて理解に苦しむソシャネ論文(30/107)


Parks-Yancy, R. 2006. “The Effects of Social Group Membership and Social Capital Resources on Careers.” Journal of Black Studies 36(4):515–45.

 この論文では、ソーシャルキャピタル及び人種とジェンダーが仕事の収入と昇進に与える影響を検討している。分析枠組みとしてはLin (2001)を踏襲するかたちで、有益な情報を提供してくれる人を持たないなどの意味でのcapital deficitと例え上司との同じ関係を持っていたとしても、職業上の利益の還元が異なる場合のreturn deficitの二つをsocial capitalが職業上の不平等を引き起こす要因として考える。先行研究の検討から、女性に比べて男性が、黒人に比べて白人の方が二つのdeficitを受けない有利な立場にいると仮定した筆者は、人種とジェンダー間において、social capitalへのアクセスとreturnに違いがあるかをパネル調査を用いて検討する。returnには賃金と昇進の二つを操作的に定義している。分析の結果、アクセスについては、白人と比べた時の黒人のdeficitが明らかとなり、男性と白人は職業上の利益を長期的に得ていることが分かった。

McDonald, S., and G. H. Elder. 2006. “When Does Social Capital Matter? Non-Searching for Jobs Across the Life Course.” Social Forces 85(1):521–49.

 この論文では、social capitalと職業達成の関係を検討してきた既存の研究が公的な機関を通じて職業を探したり、友人を伝って職を得たりというような方法をとらずに職を得ている場合を見逃していること、およびライフコースの観点を考慮していなかったことを批判し、探さずに仕事を得たnon-searching for jobをinformalな職業達成と見なして、彼らのsocial capitalと地位達成の関係について考察している。non-searchersがなぜ重要かと言えば、彼らはパーソナルな及び職業上のネットワークから求めずとも職業の情報を得て就職・転職する傾向にあり(invisible hand of social capital)、先行研究から彼らの方が仕事を探して就職した人々よりもよい職業に就くことが明らかにされているからである。彼らは既存の研究では自らネットワークの紐帯を行使して仕事を見つけた訳ではないため、調査から排除されていたが、上記を踏まえると、それを除外することはSCと地位達成の関係にバイアスをかけてしまう。また、そうしたinformalな就職について検討した研究においては、SCがライフコースに応じて異なる影響を与えることを考慮してこなかったという。その上で、この論文では、non-searcherにおけるSCと就職の関係を個人のライフコースを考慮に入れて検討している(ただし、仕事を探していない人は調査設計上、ネットワークの質問がされていないため、ここではネットワークは直前の職業に代替されている。その理由は直前の職業的地位はネットワーク資源と相関関係にあるとされているが、この点に関しては妥当性に疑問が残る。さらに、キャリア初期においては職業上の地位とネットワーク資源を反映しないため父親の職業を投入する点に関しても納得はできない)。

 informal job matchingの効果はキャリア初期と中期に分けて検討されている。分析の結果、キャリア初期においてはSC(というか直前及び父の職業)は現職を得る方法に対して効果を持たないが、中期においてはSC(というか直前及び父の職業)を持つ人ほど仕事を探さずに就職する傾向にあり、得た職業の地位は仕事を探した人のそれよりも高いものであることが分かった。また、中期においては、就業年数に従って男性においてはformalな方法での就職とnon-searchingとの間で賃金に対する交互作用が確認される(年数を減るにつれて後者の方が賃金が高くなる傾向にある)が女性においてはそれが確認されないことが分かった。これは、組織内部において女性よりも男性の方がネットワークの中心性が高いという既存の研究結果を踏まえると、non-searchingが女性労働者の「ガラスの天井効果」に関係していることを示唆している。

Lin, N. 1999. “Social Networks and Status Attainment.” Annual Review of Sociology 467–87.

 ナン・リンによるsocial resource theory(ネットワーク資本と社会経済的地位達成の関係に関する理論)の発展のレビューと将来の展望。

 まず、この理論が発展する前にグラノベッター及びsmall world theoryによって以下の三つの命題が提示された。すなわち(a)ネットワークからアクセスできる資源は地位達成などの手段的行動に影響を与える、(b)社会的資源は個人のネットワーク上の位置の影響を受ける、(c)社会的資源は強い紐帯よりも弱い紐帯の影響を受ける。その後、コールマンやブルデューといった理論家によって提唱されたsocial capitalの理論とsocial resource theoryが合流し、その後、social capitalへのアクセスの差にはどのような要因が考えられるか、およびそれ自体が個人の地位達成にどう影響するか(これにnon-searchersの研究も含まれるだろうか)という観点、またそのような資源を実際に利用して仕事を見つけるというthe mobilization of social capitalという二つのプロセスに関心が持たれ、経験的な研究が進んでいった。研究成果の紹介は割愛するして将来の展望について。まず、personalな(informalな)コンタクトを通じて職を得た場合と公的機関を通じて職を得た場合のものの間に特徴的な差異が見られないことや、こうしたinformalなチャネルが教育年数の少ない人であったりスキルレベルの低い人だったりといった相対的に不利な人々に主に使用されてきたということが指摘されてはいるが、有利な立場にいる人がそうしたコンタクトを必要としないかについて及び不利な立場にいる人の資源の用い方については今後の検討が待たれること、その他には紐帯の強さがどの地位達成に関係するか、ポジションジェネレーターの改善、SCの不平等な分布についての検討などが今度の課題であると述べられる。

 蛇足的な感想になるが、この理論の限界としては、ナン・リン自身が認めているように、ネットワークと言ってもdensityやcentralityといったネットワークの特徴を踏まえた議論をしていない点だろう。個人と周りの関係性から出発していても、ネットワークを資源として捉える時点で、やはりこの理論は既存の社会調査にマッチした個人主義的なものだと思う。


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